
創業から80年を超える「大和」は、旬の丹波の食材を使った料理が堪能できる料亭です。予約すれば少人数からグループでの宴会も可能。さらに、隣接する「味やまと」では、予約なしでも気軽に夕食を楽しめるとあって、地元の人だけでなく観光客にも人気です。千葉出身のご主人が丹波に移り住んで50年。外から来たからこそ気付いた丹波の自然の恵みと地産食材の魅力を存分に引き出した料理を提供しています。旅館は1日1組限定でゆったりと滞在できます。
地元の山と川の恵みを一皿に

「料亭旅館大和」では地元の食材を大切に、料理に使っています。

春の訪れを感じる3月末から6月初めにかけては、早朝5時半には山へ入り、ワラビやフキノトウ、コゴミ、タラの芽、ツクシなどの山菜を採るのが日課。川魚も自ら捕まえ、ゴリ(カジカ)やスッポンといった川の幸も大切に料理します。山菜や川魚は、とれる時期が短いだけに季節をはっきりと感じられます。

住民の高齢化によって、山菜を採取する人は減り、若い世代はあく抜きなどの手間を敬遠しがち。でも「大和」に来れば、丁寧に下処理が施され、素材の持ち味を最大限に生かした自然の恵みが味わえます。

ツクシはあっさり炊いてカツオ風味で。カンゾウは酢味噌和えに。フキノトウは天ぷらや蕗味噌にして春らしい苦みを楽しみます。ワラビはアク抜き後、水煮にして卵とじなどで提供されます。

イワシは酢で締めて
毎朝市場でせりに参加して、競り落とした魚介類は、日本海や瀬戸内から直送される新鮮なもの。お造りにするのはもちろんですが、さらに手をかけることもしばしば。イワシは三枚におろして、塩水で2時間、酢で30分、さらにザルに立てて2日間酢切りをして、しっとりと形良く仕上げます。こんなに手間をかけたイワシはぜひ食べてみたい!と、とっても気になりました。

ゴリの甘露煮
また、分水嶺から流れる石生の清らかな川で育った川魚も見逃せません。ゴリは甘辛く炊いた甘露煮や天ぷらに、スッポンは贅沢な鍋料理として登場します。

桜の季節には、ライトアップされた艶やかな景色が楽しめます。
四季を彩る丹波のごちそう

季節の移りかわりとともに、献立も変わっていきます。6月頃から登場するのは「鱧鍋」。鱧のアラからじっくりと旨みを引き出したダシに、白ネギや水菜、豆腐などのシンプルな具材を合わせます。瀬戸内沿岸では鱧鍋に玉ねぎを加えることが多いですが、甘くなりすぎるので、あえて使わないそうです。

丹波産の松茸
秋になると、丹波を代表する特産品の松茸が登場。10月から11月半ばにかけて出回る松茸は香り高く、「すき焼き」などに加えると格別の秋の味覚になります。

冬の味覚といえば、松葉ガニやセコガニ。そして、ぼたん(猪)料理。「ぼたん鍋」は、赤味噌と白味噌をブレンドしたダシにゴボウや聖護院大根を加えるのが大和流。この大根は、ステーキ風にして提供されることもあるそう。猪肉は煮込むほどにやわらかくなるので、お客さんの到着時間に合わせて美味しい状態で提供されます。

定番の「丹波牛すき焼きコース」は、丹波牛のメスのみを使用。地元だからこそ手に入る上質な肉を、砂糖と醤油でシンプルに味付けし、たっぷりの青ネギとともに味わいます。調理もおまかせできるので、鍋奉行をすることもなく、ゆっくりと味わうことができます。

そして忘れてはならないのが、「丹波栗きん豚(たんばくりきんとん)」。どんぐりに代えて丹波栗を飼料に使い、旨みと風味を高めたオリジナルブランド豚で、余田さんが開発に至る言い出しっぺ。「丹波栗きん豚」をメニューに取り入れた第1号店として、「トンカツ」(2,000円)、「しゃぶしゃぶ」や「すき焼き」(各4,500円)で提供しています。
カジュアルに利用したい「味やまと」

「話を伺って、これはもう食べずには帰れない」と、取材の7時間後に併設の「味やまと」を再訪。「大将におまかせ!」の夕食をお願いしました。

まずは、「山芋たたきの土佐酢和え」と「ゴリの甘露煮」。ゴリの上品な甘さに、お酒は地元・山名酒造の「奥丹波 木札」を合わせて。大阪や神戸ではなかなか出会えない希少なお酒は、山田錦の芳醇な甘みとスッと切れる後味のよさが好印象。和らぎ水は、蔵元の仕込み水という贅沢さです。

茄子のソーメン
続いてお造り、鱧の炙り、白バイ貝は酢味噌で。そして出されたのが「茄子のソーメン」。葛を打ってから湯がいて冷たく冷やした茄子の喉越しのよさと香ばしいダシの相性がとてもよくて、清涼感を感じる一皿でした。

「猪のスペアリブ」も登場。骨にかぶりつくと、あっさりした脂の甘みをほどよい塩味が引き立て、思わず骨までしゃぶってしまうほど。ワイルドな見た目ながら、年配の人にも人気だというのがわかります。「川エビとサツマイモの唐揚げ」は、針のように細く切ったサツマイモとエビの組み合わせが絶妙!

蕗味噌が食べたいと話したことを覚えていてくださって、添えられたひと匙も、深い味わいでした。

締めくくりは、前述のイワシを使った握り寿司で山椒味とワサビ味、そしてミョウガの握り。イワシの酢加減もちょうどよく、口いっぱいに旨みが広がります。最後のすまし汁は、鱧のアラで引いたダシ。体にすっと染み入るような、上品な一杯でした。

「味やまと」の店内
◆料理料金(税別)
・季節の会席料理 5,000円〜 ※予算に応じて対応可
・松茸フルコース 33,000円~
・ぼたん鍋 8,000円
・丹波牛すき焼きコース 8,000円~
・鱧鍋+会席 7,000円
・すっぽん鍋(天然) 5,000円
実際に味わってみて、京阪神からもわざわざ訪れる人が多いのも納得! 余田さんは、地元食材の豊かさを誰よりも理解し、大切にしている料理人かもしれません。
<注意事項>
- 掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更、消費税率変更に伴う金額の改定などが発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。
