和と洋の、本格的で種類豊富な丹波菓子。迷う楽しさを味わって

丹波菓子 Hiro正栄

由緒ある老舗の和菓子屋、煌びやかな洋菓子店、新鮮な果実を使用したフルーツパーラー……などなど、数ある菓子店の中でも、「Hiro正栄」ほど商品ラインナップの幅広い個人経営店はそうそう見つからないのではないでしょうか。餡子菓子からケーキまで、和洋の垣根を越えた陳列棚は、見ているだけでワクワクしてしまうのです。

歴史ある和菓子屋に4代目が運んできた洋菓子の風

丹波の黒豆を使用した季節商品「都」(1,080円・税込)

もともとは3代にわたり続いてきた和菓子屋。4代目となる進藤裕樹さんが、それまで勤めていた神戸の洋菓子店からUターンしてきたことを機に洋菓子が加わり、2017年(平成29)に「御菓子処 正栄堂」から「丹波菓子 Hiro正栄」としてリニューアルしました。店内は白と黒を基調としたシックな印象で、和にも洋にもぴったり。

お父様の作る上生菓子

店内のショーケース、上段の色鮮やかな上生菓子が目に飛び込んできます。続いて下段を見ると、わらび餅の横に並んでいるのはクリームたっぷりのシュークリーム!隣の棚にはドーナツにマドレーヌ。これこそが、Hiro正栄さんのラインナップの幅広さです。

キャリアに基づいた確かな味

4代目の進藤裕樹さん

 

裕樹さんは洋菓子職人として、大阪・神戸・東京などで30年ものキャリアを積んできました。一方、裕樹さんのお父様・敏郎さんは長年和菓子職人として店を切り盛りしてきました。そんな二人がタッグを組んで営む和洋菓子店ですから、和菓子、洋菓子ともに本物の味を楽しめるということです。

 

丹波の素材の良さをどう活かすかが勝負

丹波産の新鮮な卵

 

丹波産の食材の良さは寒暖差のある気候と、昔から大切に手入れされてきた土にあると語る裕樹さん。そのまま食べて美味しい食材をお菓子に使うことで、よりその魅力を引き出したいという思いで、舌の肥えた地元の人を納得させるプレッシャーすら感じながら、日々のお菓子作りに向き合っているのです。

 

ほどよいのどごしの「Hiroぷりん」(200円・税込)

「Hiroぷりん」は、丹波産の卵の鮮度を特に感じられる一品。丹波乳業株式会社の「ひかみ牛乳」も使用していて、とろとろし過ぎずつるんとしたのどごしの優しい味わいです。

また、添加物に頼らず上質な素材の持ち味を出しているのも特徴で、シフォンケーキ「玄」には、栄養価の高い玄米粉を使用しています。

 

「自分にしかできないこと」の追求が幅広い商品ラインナップに

大人のスイーツ「琉」(750円・税込)

 

「琉」は、丹波の酒蔵・山名酒造株式会社の「奥丹波」を使ったパウンドケーキ。焼き上がった直後の生地に奥丹波を混ぜたシロップを塗ると、アルコールが蒸発したあとにお酒の香りだけが残ります。仕上げに再び奥丹波をたっぷり回しかけて純米酒の旨みをしみこませた大人向けの和スイーツ。ブランデーケーキがあるなら日本酒でもケーキを作れるのではないかと考えた逸品です。

食べやすい形の「ながーいシュークリーム」(180円・税込)

丹波の素材を使用したお店は他にもたくさんある中で、「自分にしかできないことは?」と常に問いながら商品開発を行う裕樹さん。ここにしかないもの、それは磨き上げられた技術によって生み出される、和と洋の調和に他なりません。その良さを伝えたいという想いは、接客からも感じられます。

お客様に寄り添い、期待に応える店を目指して

シックな店内に華やかなショーケースが映える

ニーズを外さず掴むために、お客様の商品への反応をよく観察しているそう。お客様からの「手土産に何か…」といった相談には、相手の年齢やシチュエーションをしっかりと聞いた上で、パッケージや紙袋まで含めた提案をしてくれます。商品のネーミングにもそれぞれストーリーがあるので、訊ねてみるとより楽しめるはず。

 

親子で守り続ける伝統と開拓し続ける未来

あっという間に花を咲かせる魔法の手

買い物や散歩の途中でも、気づいたらお菓子のアイデアを考えているという裕樹さんの熱心さは父譲り。毎日数十個の上生菓子を作るお父様の敏郎さんは、木製の三角ベラで次々と菊の花やもみじといった美しい形を餡に刻みながら、その手を止めることなく「伝統を守りつつ、今の時代の流れを読むことが大切」と語ります。

頭の中はアイデアでいっぱい

上生菓子はひと月先の季節の草花を表現し、見た人が「ああ、もうそんな季節が来るな」と自然の移り変わりを楽しむためのもの。だから、時期によってつぼみから開花を表すかのように微妙に色合いを変えているそう。そういった工夫こそが和菓子屋の醍醐味であり、機械ではなく手作りだからできる技だと確信しています。

新作のチーズケーキ「澪」(1,200円・税込)

 

伝統技術を守りながらも「お客様にどうアピールできるか」を考え続けている敏郎さん。アイデアは無限にあるそうで、試作を繰り返す日々。そんな作業を楽しみながら現役を続ける敏郎さんのすぐ傍には、チーズケーキを作る裕樹さんの姿が。ドーム型のチーズケーキは「お客様に小さな驚きを」と考案したもの。

 

前進を続けるこの親子からますます目が離せませんね。次に登場する商品が今から楽しみです。

text:佐本陽子

 

<注意事項例>

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