農薬も肥料も使わない、自然農法で在来種のお米を育てる

丹波自然農園Kファーム

「丹波自然農園Kファーム」は、春日町の三尾山のふもとで自然農法のお米づくりをしています。自然農法とは、農薬や除草剤、肥料さえも使わずに作物を栽培する方法。食物が本来持つ自然の作用や微生物の力で、力強く粒立ったお米になると、Kファーム代表の近藤準一さんは話します。

自然栽培米のごはんをほおばる口福感

Kファームでは、在来種である「朝日」や「名倉穂(なぐらほ)」といったお米を中心に栽培しています。朝日は岡山県で多く栽培されていて、名倉穂は兵庫県の在来品種。今ではあまり栽培されていない希少品種なのだそう。コシヒカリと違ってどちらかというと硬質で、噛み応えのあるごはんに炊き上がります。「在来種のこれらのお米は、ひと粒ひと粒がしっかりしてるんです。和食洋食問わず、合わせるおかずを選ばないオールマイティなお米です」と、近藤さん。

炊く前に充分な時間をとって浸水させ、できれば土鍋で炊くのがおススメだとか!香りがよく、ひと粒ひと粒が立って、口に入れたときの「ほおばり感が心地いい」とのこと。ちなみに炊飯器で炊くときは、早炊きコースの使用は避けたほうがいいそうです。

うるち米のほか、「春日しのはら」という在来種のもち米もつくっていて、煮ても溶けず、のびが違うと、自家製の餅用に何十kgも定期的に注文する人もいるほどの人気商品。玄米餅にすると栄養もまるごといただけて、一層味わい深い美味しさ。

自然のチカラで育てる農法にのめり込む

近藤さんは丹波市に移住して農家を始めて、2020年で8年。大阪で輸入業などに携わった後引退し、家を建てるにあたって環境の良い場所を探していました。あちこち探した結果、都心から近く、かつ自然豊かな丹波の地を気に入り、農業をはじめることに。

丹波に来た当初は、農業に全然興味はなかったと言います。ある日たまたま読んだ自然農法の書籍で、目に見えない微生物の世界で成り立っている自然農法のおもしろさに興味を抱いたのです。そして、自然農法を実践する方と出会って師事し、ゆっくりと育つ在来種のお米を育てはじめたのでした。

「数字の計算ばっかりやる農業ではなく、広い生命世界につながったものをやろう」。そうして8年、その年の天候によって出来不出来はありますが、いまではリピーターも多くなりました。収穫は10月後半から11月にかけて行いますが、販売はネットでの予約注文のみで、最近は収穫前の時点ですでに売り切れてしまう人気ぶり(2020年度は販売終了)。

自然栽培米を育てる醍醐味とは

農薬も肥料も使わず、おいしいお米をつくるのは、簡単なことではありません。そのための情報収集や研究、勉強を欠かさず、労の日々を支えるものは何なのでしょうか。

「穂が出て背丈の揃ったそれを愛でるとき、そして、そよそよと風が吹いて穂が波打つさまは、本当に美しい」と、お米を育てる喜びを語ります。

そして、「人によっては、“近藤さんの自然農法で育てたお米はおかずがいらないと思うほど、おいしい”と言ってくれます」。そういった言葉も胸に、今日もひとり圃場に向かい、作物と、自然界と、向き合います。

今後は、「地元のつながりをもっと増やしたり、1年分は供給できるように生産量を増やしたい」、と話す近藤さんの自然農法への情熱は、まだまだ続くのです。

 

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