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異業種からイチゴ農家へ。丹波に根を張り、おいしいイチゴを作る

河手いちご農園

柏原のイチゴ生産者、河手大輔さんは、新規就農をきっかけに丹波市へ移り住みました。市島町の「農(みのり)の学校」や「株式会社アグリサポートたんば」で知識や技術を学び、2022年(令和4)に独立。現在は3種類のイチゴを栽培し、今シーズンからは農園での直売も始めました。異業種から参入した河手さんの、イチゴづくりへの思いと今後の夢についてお話をうかがいました。

思い切った決断で丹波にやってきた

河手大輔さんは、もともと東京で大手企業に勤め、大型プリンターの開発に携わっていました。専門性の高い技術職にやりがいを感じながらも、35歳を迎えた頃、「このまま会社の中で働き続けるだけでいいのだろうか」と考えるようになったそうです。IT化が進み、需要が変化していく業界の将来を思う中で、「自分の力で何かやりたい」「新しいことに挑戦したい」という思いが強くなっていきました。

そんなときに、メディアで目にしたのが、後継者不足や担い手減少といった農業界の課題でした。ネガティブに捉えられがちな課題ですが、「やり方次第で、まだまだチャンスがあるはずだ」と感じたそうです。幼少期、祖父母の家で食べた自家菜園のトマトの味や、土に触れた体験が記憶の片隅に残っていたことも、背中を押しました。

そして農業を学ぶために入学したのが、丹波市の「農(みのり)の学校」でした。大阪出身の河手さんですが、丹波市のことはほとんど知らず、農の学校に入るために丹波に移り住みました。ここでは、一期生として、1年間、20種類以上の野菜栽培や農業経営を基礎から学びました。「農の学校も開校したばかりで、ゼロから立ち上げる経験を間近で学べたことが、独立時に大きな力になりました」と話します。経営面からも自分が生業として栽培するのはイチゴだと決めて、卒業後は「株式会社アグリサポートたんば」で2年間栽培研修を受けて、2022年に独立しました。

イチゴ専業農家として4年目の挑戦

河手さんは現在13アールのハウスで、およそ9,300株のイチゴを栽培しています。修業期間に学んだ環境制御技術を駆使したハウス内では、温度、湿度、二酸化炭素濃度、空気の流れなどを調整します。遮光カーテンで強い日差しを和らげ、灯油を燃やして二酸化炭素を供給し光合成を促す。データを見ながら管理しつつ、最終的には「自分が暑いと感じたら、イチゴも暑い」という感覚も大切にしているそうです。

収穫期は12月中旬から5月中旬まで。日の出前の気温が低い時間帯から収穫を始め、午前中にパック詰めと出荷を終えます。午後は摘果や古い葉を取り除く管理作業が続きます。実を間引き、数を減らすことで、一粒一粒に栄養をゆき渡らせる。手間のかかる作業ですが、おいしいイチゴのためには、欠かせない工程です。

栽培しているイチゴは3種類。「紅ほっぺ」は長年愛されてきた品種で、イチゴの王様のような存在です。一方、「スターナイト」と「ほしうらら」は比較的新しい品種。いろいろ試した中で、「自分が心からおいしいと思えるもの」を基準に選んだそうです。それぞれ、香りや甘みのバランスの良い品種です。

スイーツへの展開や観光農園へ夢は広がる

現在は直売所への委託販売や和菓子店への卸が中心ですが、「洋菓子にも、もっと使ってもらいたい」と話します。イチゴは貯蔵ができないため、需給調整が難しい一方で、イチゴフェアなどのイベントの盛況ぶりを見ても可能性は高いと感じています。

今季から始めた通販や農園での直売も販路拡大の一環です。「まだ手探りの部分は多いですが、作ることには自信があるからこそ、届け方をもっと磨いていきたい」と前向きに語ります。取材後、農園の直売所をのぞいてみると、レギュラーパック(道の駅等の小売価格に準ずる)の他に、規格外のサイズや品種をミックスしたお得なおつとめ品も!営業時間は10~15時で「いちご直売所」ののぼりが営業中の目じるしです。詳細はInstagramで確認してください。

将来的な夢の一つが、観光農園を開くこと。駅から近いという立地を生かし、車を持たない学生や若い世代にも来てもらえる場所を目指しています。ただし、休憩所やトイレ、雨天時の動線など、環境整備が必要なため、「一気にではなく、できることから少しずつ」と考えています。

河手さんのイチゴは、しっかりとした果肉に、さわやかな甘みとみずみずしさがありました。和菓子店で重宝されているのもわかる気がします。

丹波市内でも規模の大きいイチゴ農園を一から築き上げた背景には、「大変だけれど、やりがいがある」という言葉どおりの覚悟があるのでしょう。新規就農も丹波への移住も、勇気ある一歩を踏み出したからこそ実現したこと。河手いちご農園の挑戦は、丹波の地で実を結んでいきそうです。

 

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