“最高の幸福感”をもたらしてくれるドイツパンのカフェ

丹波 穂のWonne(ヴォンネ)

Photo:貝原弘次

ドイツパンとドイツ菓子を中心としたカフェ「丹波 穂のWonne(ヴォンネ)」。食べやすいドイツパンなどのハード系が人気です。店名の「Wonne」は、ドイツ語で「最高の幸福感」という意味。お客さんにほんのひとときでもそんな時間を過ごしてもらいたいという思いで名付けました。そしていつしか、店主自身も丹波で安住の地を得ていたのでした。

経験も実力も備えたパンや洋菓子づくりひと筋の人生

Photo:貝原弘次

オーナーシェフの岩坪良彦さんは、大阪や神戸などで修業を積み、50年近くパンや洋菓子をつくり続けています。「若い頃はドイツやフランス、スイスなどでもパンや洋菓子を学んだなぁ」と、懐かしみます。帰国後、神戸の有名ドイツパン店で修業し、やがて大阪・北摂エリアで自分の店、ドイツパンと洋菓子の店を開業。3店舗経営し、30年近く忙しい日々を過ごしました。その後、先輩の紹介で入ったパン店に勤めましたが、人生の後半は田舎でのんびり暮らしながら、もう一度自分の店を持ちたいと、この地で新たな挑戦をすることに。

「料亭だったこの物件を見て、“面白いことができそうやな”と思ったんです」と、当時を振り返ります。

Photo:貝原弘次

友人たちからは、「そんな場所で、酸っぱくて硬いドイツパンなんか、ウケル?」と心配されたそうですが、岩坪さんはこの立地と物件の“面白さ”に賭けていました。自ら庭の手入れをしたり、松の剪定をしてもらったり、準備に3年ほどかけました。ドイツパンや洋菓子の店を、この純和風の家屋でやってみたら面白いんじゃないか。受け入れてもらえるんじゃないかと、満を持してオープンしました。

近所にあるドイツソーセージ店とのコラボランチも話題になり、あっという間に人気カフェに。各種メディアで取り上げられることも多く、今やリピーターも増え、大阪、神戸、阪神間だけではなく、全国からお客さんがやってくるようになりました。

「こんなにお客さんが来てくれるなんて、本当にありがたい。だから体力の続く限りはやっていきたいと思っています」と、岩坪さんは語ります。

ドイツパンの良さを残しつつ、食べやすさと豊富なメニュー展開も魅力

Photo:貝原弘次

サワーブレッドやライブレッドなど代表的なドイツパンのほか、天然酵母パンなどハード系がメインですが、どのドイツパンも食べてみると、酸っぱくて硬い印象はありません。むしろ、さくっと食べやすく、噛むほどにライ麦の酸味と風味がクセになります。バターやジャム、スプレッド、おかずやデリ…どんなものも受け止めてくれる、器の大きなパンです。

ハード系のほか、ベーコンエピや丹波黒豆パン、クロワッサン、あんバターフランスなど、総菜パンや菓子パンのラインナップも豊富。季節によって、旬や地元のものを使って、新作も登場します。「リピーターさんも飽きないようにね。休みの日に、そろそろ丹波栗が出る頃だな、何をつくろうかと考えたりしています」と、岩坪さん。

ケーキを中心にスイーツもたくさんあって、目移りします。ザッハトルテやドイツ風アップルパイ、レモン好きに大人気のツィトローネン(レモンロール)などのドイツケーキのほか、ショートケーキにプリン、ロールケーキ、各種焼き菓子も多彩。大阪・北摂時代から公私をともにする奥様が主にスイーツを担当しています。

パン・洋菓子職人としての集大成は、自然のなかで家族とのんびり

Photo:貝原弘次

おいしいパンランチがいただけるのも、同店が人気の理由の一つ。AからCまで3タイプあり、写真は一番豪華なCランチ(1,980円税込)。ソーセージやハムは、近くの手づくりドイツソーセージ店のものを使用。本場ドイツ・バイエルンで国家認定のマイスター称号を得た店主が手づくりしたものです。そのほか、クリームチーズやマスタード、ハーブ塩にいたるまで、ドイツ直輸入のものを使っています(状況によっては別のヨーロッパ産のものに変更することもあります)。

Photo:貝原弘次

Cランチにはドイツパンや天然酵母パンなどのハード系が6~8種類ほど付いています。ソーセージやハム、サラダなどとの相性は言わずもがな。日本庭園を眺めながら、おなかも心も満たされる、贅沢なひとときを過ごせます。

Photo:貝原弘次

常連のお客さんがふらっとお茶を飲みに立ち寄ったり、パン職人の仲間たちが集まったり、いつも人に囲まれている岩坪さん。「丹波に来て、いいことばかりですよ。長い間がんばってきてよかったなぁと思います」と、軽やかに笑います。「若い頃はイケイケどんどんで、どんな苦しいときも弱音をはかず続けてきました。でも、もう昔みたいに店舗を拡大したり、生産量を増やしたり、寝ずに仕事をしたりなどの無茶はしません。健康に気を付けながら、家族や仲間とゆっくりと過ごして、好きなパンや洋菓子をつくっていきたいですね」と語る、明るい笑顔が印象的でした。

 

<注意事項>

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