丹波の熟成栗とオリジナル栗スイーツ&丹波野菜で地元を盛り上げる

ヒロちゃん栗園DE八百屋さん

女性の力で丹波栗をもっと盛り上げたいと立ち上がった一人の女性がいます。自家栗園を切り盛りする山本浩子さんです。女性が中心となって栗の栽培と普及を促進する「丹波栗っこ会」という女性部会も設立し、2020年(令和2)9月には栗や丹波野菜などを販売する「八百屋」もオープン。そこには、丹波栗への深い愛がありました。

栗と真正面から向き合う“栗屋”だからこその栗スイーツ

「ヒロちゃん栗園DE八百屋さん」は、丹波栗を一年中食べられる店を作りたいと、2020年9月にオープン。生栗のほか、自家栗園で育てた丹波栗を収穫後、低温保存し、より旨みと甘みを引き出した「熟成栗」を扱います(栗販売は9月頃から12月頃まで)。栗の収穫シーズンが終わっても栗を楽しんでもらいたいと、オリジナルスイーツの製造・販売にも力を入れています。

現在の主力商品は3つ。まず、「マロングラッセ」1粒350円。自家栽培の熟成栗の味を最大限に生かそうと、試行錯誤して完成しました。

「商品化するにあたって、あちこちのマロングラッセを食べたんですが、どれも洋酒がきつくて、すごく甘いんですよね。丹波栗は、それ自体が美味しいので、風味を生かすために、砂糖も洋酒もぐっと抑えています」と、山本さん。

1年中買い求めることができるマロングラッセに費やす時間はなんと5日間。洋酒と砂糖を控えても絶妙な煮詰め加減で、“グラッセ“独特のしゃりしゃり感と風味が生きています。栗は好きだけどマロングラッセは苦手…という方をも虜にする丹波栗の新たな銘菓です。

マロングラッセにホワイトチョコをまとわせた「栗園のこびとたち」1粒380円は、チョコレートの分、少し甘めの仕上がりに。「チョコがけしたら帽子をかぶったこびとみたいでしょ」と、山本さんが笑顔でおすすめしてくれたのは、かわいいイラスト入りの箱詰め(1箱6粒入り2500円)。お土産にもぴったりです。

主力商品のもうひとつは、「栗入りフィナンシェ」1つ250円。神戸市北区の洋菓子店「ランプリール」監修の焼き菓子です。実は、「ランプリール」のオーナーパティシエは山本さんのお兄さん。フィナンシェに入れる渋皮煮は山本さんのレシピですが、フィナンシェに合うように何度もお兄さんに指導を仰ぎ、甘さやかたさを調整していったといいます。そして、それに合うようにフィナンシェ生地のレシピを依頼。こうして兄妹コラボの丹波栗フィナンシェが誕生しました。

バターの風味としっとりしたアーモンド香る生地に、栗をしっかり感じ取れる甘さ控えめの渋皮煮が中に練り込まれた、満足度の高いスイーツです。

フィナンシェの横にそっと置かれている「黒豆茶」500円。自家栽培の黒豆を店内にある薪ストーブで炒って、旨みを一層引き出すために、女性スタッフ総出で砕いています。遠赤外線の効果なのか、煮出すとじんわり甘くて香ばしい至極の一杯がいただけます。最初は、スタッフが自分たち用に飲んでいたのですが、あまりに美味しいのでお客さんに試飲してもらったら好評で、商品化することになったのだとか。自宅で飲み終えた黒豆茶の出がらしも、捨てないで。料理やスイーツづくりに活用することができます。

対話を大切にした昔ながらの八百屋スタイルを

自家農園の栗や黒豆以外にも、丹波市内のこだわり農家の野菜なども販売します。「小さい頃、友達の実家の八百屋さんで、販売のお手伝いをしたことがあり、お客さんと対話しながら販売する昔ながらの八百屋さんっていいなと思っていました。新聞紙を袋代わりにして野菜をくるっと包んで手渡したり。オープンしてまだ日が浅く、コロナのこともあって、今は袋詰め販売になっていますが、いつかはばら売りにして新聞紙で包んで…。実現させたいですね」と、山本さんは、対話する八百屋の醍醐味をこう続けます。

「農家さんの人柄や、こだわっていることなどをお伝えして、お客さんに理解してもらってお買い物をしてもらいたいんです。今って、必要なものだけをひと言も発することなく買い物できちゃう時代。対話がないと、広がらないと思うんです、料理のレパートリーも、人との関係性も」。

山本さんは、より美味しい栗を育てるために、栗とも対話をしているそうです。

「“たくさん成ってね~”とか、収穫時には“ありがとう”って。終わったら“御礼肥(おれいごえ)”として感謝の肥料を撒きながら“来年もよろしくね”と声をかけます。出来が悪いときは、“どうしたん、何があかんかったんやろ。ごめんね”って」。まさに、「こそだて=木育て」です。

収穫シーズンには、「栗むきますサービス」1kg 500円も行います。市内外からひっきりなしにお客さんが訪れ、「むいたこの栗、どうやって食べたらいいの?」「渋皮煮にするにはどの大きさがいい?」など、食べ方を尋ねられることも多々。「このサービスを行ったことで、お客さんが求めていることなどを私も知ることができました」と、栗の専門家としてお客さんとの新たな対話が生まれたといいます。

まだまだ広がる、丹波栗の可能性

山本さんは栗の女性生産者を増やすため、お店をオープンする前の2017年(平成29)に「丹波栗っこ会」を立ちあげています。

「丹波栗は、市外の人には人気が高いんですが、地元の人は身近すぎるせいなのか、あまり価値を感じていない人も多くて…。それに、年々生産量も減ってきていて、生産者も高齢化してきています。だから、女性も一緒になって、もっと自信を持って丹波栗を育てていこうよ、盛り上げていこうよ、と考えたんです」。

山本さん自身も栗剪定士の資格を取り、義父が残した栗の木を再生させ、栗を販売。そして、収穫後に適温で一定期間熟成させると、より美味しくなることを知り、「熟成栗」を手掛けています。

わが子のように育てた栗。「美味しさには自信があります。その美味しい栗をどう生かして、どんな商品にするか、たくさんの方に食べていただけるよう、どんどんトライしていきたいと思っています」と、今後はイートインスペースでも食べられるモンブランなどの商品を開発予定。

玉子かけごはん

焼き豚どん

親子どん

現在は、自家農園の米と丹波の芦田ポートリーの卵、丹波農家の野菜などをセットにした「玉子かけごはん」450円をいただくことができます。

また「焼き豚どん」950円、「親子どん」750円もイートイン可能。焼き豚どんは栗を食べて育った豚「栗きん豚(くりきんとん)」の肩ロースとバラを使ってヒロちゃんが焼き豚を作り、特製のたれを絡めていただきます。親子どんは、播州百日鶏と丹波産のタマネギ、芦田ポートリーの濃厚な味の卵とのコラボレーションが絶妙です。

一年を通じてソフトクリームを販売、そして秋には栗を使ったソフトクリームもデビューの予定。これからの展開が楽しみです。

※表示価格は全て税込

 

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