丹波のお店とお客さんをつなぐ架け橋 にじいろタブレット

キュートさにときめく和布雑貨とクイリング小物

手作り工房 大豆家

氷上町の達身寺に近い静かな場所にある手作り工房「大豆家(だいずけ)」を訪ねました。看板は出ていないので大きな兜屋根と板塀が目じるしです。築150年ほどの古民家に移住してきた植田由佳さんが、家族と犬14匹、猫2匹と一緒に暮らしています。その昔は蚕部屋だったという広い屋根裏部屋を工房兼資材置き場にして、主に着物地などを使って、小物類やヘアアクセサリー、ペットの首輪などを製作してネットで販売中。さらにお絵かきムービーの制作にも取り組み初めています。

愛称は「みかんちゃん」

植田さんのアーティストネームは「みかんちゃん」です。子どもの頃からみかんが大好きで、幼いながら高級みかんを一箱全部食べてしまって、親御さんたちに驚かれたことがあったとか。みかんカラーの洋服もかわいくて、とても印象に残りますね。

キャンプが趣味で、自然に近いところに住みたいと探している時に出会ったのが、氷上町の古民家でした。しばらく空き家になっていたため傷んだ部分が多く、全面的にリフォームして引っ越してきたのは2022年(令和4)のことでした。時を同じくして、趣味で始めた手作りにどんどんのめりこんで、通販で販売するようになり、本格的に工房もスタートさせました。

「大豆家という名前だから豆腐屋ですか?と聞かれるんです」と笑うみかんちゃんに屋号の由来を聞くと、愛犬の名前からとのこと。大豆、小豆、だんご、どらやき…、と愛犬や愛猫のネーミングは食べ物由来のようです。柴犬やチワワなど小型犬が多いとはいえ、多頭飼いは大変だと思いきや。なんと、裏庭にプライベートドッグランを作って、のびのびと走り回れるようにしています。

着物地の有効活用から始まった

作品は和布を使った雅なものからキュートなデザインまで幅広くそろっています。素材の良さが気になってたずねて見ると、京都で呉服関係の仕事をしていた親戚が店を閉じたために反物や着物がたくさん残ったそうです。

古いものを大切にしたいと考えるみかんちゃんにとって、処分するのはあまりにももったいない。ならばと自分で小物を作り始めました。

店にあった、縮緬(ちりめん)の布で、つまみ細工の小物を作ったのが最初。元々手先が器用で、てきぱきと段取りできるタイプだったために、独学でいろんな雑貨を作るようになり、縮緬のほかに紬や、扱いが難しい正絹も使うようになりました。

材料はたくさんあるので、イメージを相談すればオーダーメイドで作ってもらうこともできます。時期にもよりますが、小さいものなら2週間くらいでできるそう。

「やっぱり長く使ってほしいので」と、ものによっては、防水や艶出し加工を施して完成です。結婚祝い、出産祝いなどの問い合わせも増えているそうです。

クイリングアートにも注目!

みかんちゃんの作品で注目したいのが、まだ日本ではめずらしい「クイリング」の小物です。クイリングはヨーロッパの修道院が発祥で、紙の切れ端を細く切ってくるくると巻いて作る装飾品です。国内には専門店が少ないので、材料は海外から取り寄せることが多いそうですが、和洋どちらの雰囲気にも合う手芸で、とっても気になります。

しっかりと固めてあるので、遠くに送ることもできるし、まだ見慣れない手芸品なので、結婚祝い、出産祝い、節句のお祝いなどのプレゼントに喜ばれているそうです。

新たなチャレンジは「お絵かきムービー」

手作り作品のほかに、みかんちゃんのチャレンジは続き、次の夏にはお絵かきムービーの活動を本格化したいとのこと。お絵かきムービーというのは、ホワイトボードにストーリー仕立てでイラストを描いては消し、描いては消すというのを5回続けて完成させるというもの。

せっかく綺麗に描いたものをすぐ消すのはもったいないと思ってしまいますが、これを動画で残すのだそうです。「描いたものをすぐに消す、そのはかなさにも惹かれて。人それぞれの人生に物語があります。何かをするきっかけになった出来事だったり、誰かとの出会いが人生を変えたり、そういう物語をストーリーに仕立てて、絵と動画で誰かに伝えるというのがお絵かきムービーなんです」とみかんちゃん。個人的な思いを形にするもよし、プロダクト紹介としてビジネスに活用するもよし、新しい表現の方法として広まりそうです。

様々な顔を持つみかんちゃんですが、ライフワークとして保護猫のミルクボランティアをしています。生まれてすぐに捨てられたり、哺乳瓶でもミルクを飲めないくらい弱っている子に、チューブを使ってブドウ糖などを接種させるものです。実は以前に仕事をしていた動物看護師としての資格と経験を生かしたもので、なかなか素人にできることではありません。昼夜関係なく、1時間おきや2時間おきに様子を観て、その子が無事に生きられるように看病するそうです。

丹波に移住して、豊かな自然の中で創作活動に励み、保護猫のボランティアも続けているみかんちゃんの今後の活動が楽しみです。

 

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