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快適に過ごせて長持ちさせられる住宅とは?

NPO法人 住まいの環境研究所

建築コンサルタント会社「住まいの権」を経営する上郡清政さんが、住宅の住みやすさについて長年蓄積してきた知見を生かして、「NPO法人 住まいの環境研究所」を立ち上げました。快適で長く住み続けられる住宅にするためには、まずは換気・温度・湿度・音の管理が大事と話す上郡さん。モデルルームでもあるご自宅を尋ねました。

「病気になりにくい家」をとことん追求

住まいの環境研究所 理事長の上郡清政さん

上郡さんは、長く健康でいるには人生の中でも多くの時間を過ごす建物こそが大事と、住まいや施設の建築におけるコンサルティングを行う人物。上郡さんの提唱する「相当大きな地震でも倒壊しない、100年・200年でも長持ちする家」を全国に広めるべく、さまざまな自治体に働きかけながら事業を進めています。

「日本の住宅は、夏は暑く冬寒い。隙間も多いうえ、あらゆるところから冷気や暖気が絶え間なく入り、快適性を保ちづらいです。また、湿度の高い日本では、土台や柱などが腐って崩壊しやすくなる。地震など大きな揺れで一気に倒れ、倒壊した家屋の下敷きになって命を落とすリスクもあります。冬なら寒暖差によるヒートショックも恐ろしいですよね。そんな建物をなるべくなくしたいと考えています」。

NPO法人健康住宅普及協会からの『健康住宅認定書』

もともと住宅業とは異なる事業を営み、50歳を過ぎてこの業界に本格参入した上郡さん。高気密・高断熱の住宅の工法について書かれた本と出会い、そして説明会に参加。「この工法にある仕掛けを付け加えると、床下から乾く家になる」との想いが参入のきっかけだそうです。採用されている『完全外断熱・二重通気工法』を、さらに進化させる工夫をしています。

「23歳の時、ヨーロッパをひとりで旅しました。パリではフランスパンがカビないことや、スペインでは洞窟の中で暮らす人がいることを知り、日本との湿度の違いにとっても驚いた経験があったんです。住宅業に携わるようになり、その時の経験が蘇りました。いい家づくりに悪影響を与える湿度は大敵。まずは腐らない家を作らなければと。さらに室温を一定に保ちやすく、外気温に影響されにくい家であることも重要だと考えました」。

夏でも湿気に悩まされず、冬は土鍋のようにあたたかい家

上郡さんの住まいは、自身が述べられているように、まさに『基礎から壁内まで家全体が乾く家づくり』を隅々まで反映したもの。「腐りにくいので、建築から100年以上経っても問題なく過ごせるはず」と自信たっぷりです。

そんな住まいの実力が数字で確かめられるようにと、モデルハウス兼自宅の完工以来、外気の最高最低温度、そして湿度。さらに家中のあらゆるところの数値を記録し続けられています。こちらの表は温度・湿度測定表で、天気なども毎朝記録されているもの。1月下旬のある日、外気温が氷点下であった時でも、居間温度は21℃台、1階床表面は19℃台と快適な温度をしっかりキープしています。

いつまでもカビない食パンと快適な数値を表示する温湿度計

こちらの写真は床下部分。一般的な住宅は床下に外気が入って来て室内を冷やしますが、上郡さんの住まいでは、冷たい外気が入ってこない対策が取られ、外気温が氷点下でも、床下は17℃台と実にあたたか。温湿度計の隣には2年前の食パンが置かれています。でも、一切カビていないことにも驚きます。

外壁と内壁の間に空気の層がある

なぜこのような快適な住まいが叶うのでしょう。その理由のひとつが、写真の構造。しっかりと断熱材を施した外壁と内壁の間に空気の層を設けているため、冷たい外気が家に直接当たらず、一定の室温が保たれるという仕組みです。さらにこの空気の層によって家中の温度と湿度の安定平均化が叶うそうで、もちろん暑い時期にも快適かつ、真夏でもエアコン1台で家中が快適な室温に。何台もエアコンをつける必要がないため、省エネにもなります。

外気温が低くとも床の温度は19℃台

そのうえで、地面の湿気に建物が影響を受けないよう床下の防水性を高め、シロアリの被害も受けにくい対策も用いられ、耐久性の高い住まいへと誘います。

押入れの中に布団を入れっぱなしにしてもカビは一切生えない

「家が寒いと体調を崩しやすく、湿度が高いとカビ・ダニが生えやすい。人を救い護れる家を作ろうと奮闘してきた成果が、この家に詰まっています。2002年(平成14)から住んでいますが、今でもまるで新築のような住み心地が維持できていると自負しています」。

上郡さんの住まいが大阪・関西万博の認定展示会場に!

温度や湿度、換気に音にこだわった上郡さんのモデルルーム兼自宅は、大阪・関西万博のコンテンツである、SDGsの取り組みを体験して学べる「ひょうごフィールドパビリオン」にも、“SDGsを実現可能にした次世代の家”として認定。パビリオンのひとつとして、日本全国はもちろん海外からも多くの見学者が訪れることが予想されます。

上郡さんの著作『病気にならない家6つのルール』ほか、取材記事もたくさん
住宅に関する特許も2つ習得されています

「日常を過ごす住まいを快適に整えることはもちろん、公共施設にもこの工法を取り入れれば、災害が起こった際は快適に過ごせる避難場所として活躍できます。公民館や野外活動センター、そしてカビたら困る美術館などにぜひ取り入れていただきたいと、いろんな自治体にもアプローチしているところなんですよ」。

寒くなく、暑すぎもせず、長年保って健康的になれる家。そんな理想の住まいを訪れてみませんか。事前に電話で連絡を入れた上で、ぜひ隅々まで見学してみてくださいね。

 

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