
丹波市氷上町にある「NPO法人ふくろう」が運営する「丹波介護タクシー」は、車椅子を利用する人に向けた専門のタクシー事業所です。長年にわたり介護施設を運営してきた代表の北野隆三さんをはじめ、乗務員は介護の資格を有しています。通院や買い物といった日常の移動はもちろん、お花見や思い出の地を巡る外出まで、介護の知識と経験に基づく確かな技術でお出かけをサポートしています。
周りの反対を押し切って飛び込んだ介護の世界

「NPO法人ふくろう」を立ち上げ、「丹波介護タクシー」の代表を務める北野隆三さんは、長年まったく別の事業をいくつも経営してきました。法務局での登記から必要な書類の作成まで、専門家に頼らずすべて自身でこなしてきたバイタリティあふれる人物です。そんな北野さんに転機が訪れたのは57歳の時でした。自身の事業の将来を見据えるとともに、これから本格的な高齢化社会を迎えるにあたり、地域に介護の仕事が必要になると感じたそうです。
そこからの行動力には目を見張るものがあります。58歳で大学に通って専門的な知識と資格を身につけ、自ら行政の手続きに奔走し、2011年(平成23)にNPO法人を設立。翌年、通所介護施設を開業しました。北野さんが何よりも大切にしていたのは、利用者が気持ちよく一日を始められるようにすること。自身が送迎車のハンドルを握り、お迎えにあがる各家庭で「おはようございます」と明るく声をかけるのが日課だったそうです。

介護施設の仕事はとてもやりがいがあったそうですが、10年以上の時を経て、社会情勢の変化を受けて介護施設は閉じることになりました。しかし、北野さんは歩みを止めませんでした。「お年寄りの生活を少しでも快適にしたい」という思いは変わらず、高齢者の移動支援のノウハウを生かして介護タクシー事業に専念。地域の高齢者の足を支え続けています。
資格と経験が生み出す「安心」のサポート

丹波介護タクシーの特徴は、車椅子を利用される要介護2以上の方を対象とした専門性の高さにあります。乗務員は介護ヘルパーなどの資格を有し、介護施設での実務経験も積んだプロフェッショナルです。

たとえば、車内で利用者の方が少しせきこまれた時、風邪ではなく「今の季節なら、水分不足が原因かもしれない」と推測し、同乗するご家族に適切な水分補給を提案することができます。また、玄関に段差がある住宅でも、長年の経験で培った介助技術を駆使し、安全に車椅子をおろすことができます。こういった知識や技術は高齢者本人だけでなく家族にとっても大きな安心材料です。必要に応じて、車椅子、リクライニング車椅子、ストレッチャーの貸し出しにも対応しています。
家族が仕事などでどうしても通院に付き添えない場合でも、ベッドから車椅子への移乗サポートから安全な送迎まで、すべてを安心して任せることができる心強い存在として、地域医療と生活の橋渡し役を担っています。
思い出の地へ赴くお出かけリハビリ

介護タクシーの利用は、通院や日々の買い物といった生活に必須の移動だけにとどまりません。高齢者の「外に出たい!」という思いを叶えるのも、力を入れているサポートのひとつです。春は花見、秋は紅葉狩りへと、四季折々の風景を楽しめる外出は、単調になりがちな日々に彩りを与え、利用者の方に大きな喜びをもたらします。過去には、ご家族の同伴のもと、城崎温泉まで外湯めぐりに付き添った実績もあるそうです。

高齢の方を昔馴染みの場所に連れ出す「お出かけリハビリ」も、とても喜ばれているそうです。たとえば近距離でも、若い頃によく行った思い出の場所に行くと、当時の記憶がよみがえって、笑顔になられるとか。車窓から見える景色の変化や、外の空気に触れて五感を刺激されることが、よい気分転換となり、心身の健康につながっていくのかもしれません。

写真はイメージです
介助する家族も、「自分一人で車椅子での遠出に連れ出す自信がない」と、無意識のうちに諦めていることもあるでしょう。しかし、運転から介助までを任せられるプロフェッショナルが身近にいてくれたら、そのハードルはぐんと下がります。「丹波介護タクシー」は、ただの移動の足ではなく、家族の大切な時間を応援してくれる心強いパートナーでもあります。通院の負担軽減から、心弾む「お出かけリハビリ」まで、プロのサポートを借りることで広がる可能性を感じました。
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