
「丹波オーガニックキッチン アリギリス」は、店舗を持たないパン屋さんです。作っているのは、地元丹波の自然栽培米を使ったお米のパン(生米)や、人工的な品種改良がほとんど行われていない古代小麦のスペルト小麦を使ったパン。店主が一人で手作りしているので数量に限りはありますが、「色んな味を楽しんでもらいたい」と種類が多く、委託販売ではいつも完売です。人気の秘密を探ろうと、工房を訪ねてきました。
さまざまな経験を経て丹波へ

工房から庭を眺めて
大阪で広告関連のフードコーディネーターを長きに渡り活躍していた店主。転機が訪れ、声をかけられたお寺で、住職と共に茶房を立ち上げ・運営するという業務に約5年間携わります。その間、若い頃よりオーガニック生活を続けていた店主は、自身の病がきっかけで、もう一度食と向き合うために、多忙ななか2年間、食や栄養学の勉強を重ね、2018年(平成30)にオーガニックフードマイスターの資格を取得しました。
既に調理師免許を持っていた店主は、前々から自身で店を持ちたいという夢があり、オーガニックスパイスカレー店をオープンします。そこへコロナ禍が…新たな設備投資や営業時間制限など厳しい状況が続くなか、やむを得ず閉店という道を選択。
マスメディアの情報の波のなかに置かれ、都会でのマンション暮らしなど、自身の生活基盤を見つめなおし、環境が良くて地に足の着いた暮らしができる場所を夫婦で探しはじめます。あちらこちらを巡り、最後に出合ったのが丹波の現在の家でした。
ご主人も一目で気に入ったという家を2023年(令和5)に購入し、半年ほど大阪から通い自治会の行事にも参加しました。しっかりと根を下ろすことを決めたのが翌2024年(令和6)のことです。
心豊かな暮らしが次なる行動を起こす

縁あって、農薬や化学肥料を使わず微生物に土壌再生を助けてもらう「自然微生物農法」に取り組んでいる近くの農園で働き始めました。食に対する考え方やスタンスが同じ仲間との出会いは楽しく、職場はストレスフリーで、気持ちにもゆとりが芽生えます。

ピカピカに磨かれたパンの型
昔から趣味で天然酵母パンを作っていた店主は、西宮の自家製天然酵母パン店でレッスンを受けていたこともあり、いつか自分が焼いたパンを販売したいという想いが、この丹波に来て強くなります。そこで、まず自宅をリフォームして小さな工房を作り営業許可を取得。2025年(令和7)12月、「丹波オーガニックキッチン アリギリス」として、勤務先の農園が毎週出張販売をしているマルシェに委託販売という形でスタートさせました。

庭で育つハーブのローズマリー
「丹波オーガニックキッチン アリギリス」があるのは春日町。庭では、化学肥料や農薬を使わずに育てられた果樹やハーブ、野菜などが生き生きと成長しています。

左)自然栽培の玄米、右)オーガニック・スペルト小麦粉
製造しているオーガニックパンは、自然栽培の玄米を使ったお米(生米)のパンと古代小麦のスペルト小麦を使ったパンです。副材料を含む全ての材料はオーガニックのもの。自家製酒種酵母を使い2日間かけてじっくり低温発酵させた生地を焼き上げます。
ラインナップの一部をご紹介
玄米食パン

丹波産自然栽培玄米を使ったシンプルな配合のプレーン玄米食パン。1本約250gですが、ずっしりとした食パンは、ほのかなココナッツの香りが玄米の香ばしさとマッチ。
玄米ポテトフォカッチャ

庭で元気に育ったローズマリーの風味がアクセントになったフォカッチャ。フライパンでゆっくり温めるとふかふかになります。
玄米甘酒マフィン

水分はほぼ甘酒で一滴の水も使っていない玄米甘酒マフィン。砂糖不使用ですが、甘酒のやさしい甘味が広がるしっとりもっちりマフィンです。お客さんからのリクエストが一番多いそう。
生米サツマイモマフィン

丹波産自然栽培うるち玄米(ササニシキ)と丹波産自然栽培サツマイモ(紅はるか)を使った生米サツマイモマフィンです。素材の持つ甘味がやさしい。
玄米ココアクランベリーパン

生のお米から作った玄米ココアクランベリーパンは、ずっしり、なのに口に入れるとさっくりした口当たりで中はもっちりです。甘酸っぱいクランベリーが入っていてパンというよりスイーツ感覚でどうぞ。
スペルト小麦ベーグル

自家製酒種酵母で2日間かけてじっくり低温発酵させた生地から生まれたスペルト小麦ベーグルです。店主が大好きなベーグルを商品にしました。
玄米バナナココアケーキ

生地の約半分にオーガニックバナナが入った玄米バナナココアケーキも生のお米から作っています。今回は、お客様のリクエストで焼き上げました。リクエストには可能な限り対応してもらえるのも嬉しいですね。

その他のパンが気になる方は、インスタグラムをチェックしましょう。個別注文も受け付けているので、インスタグラムのDMで問い合わせてください。遠方の方にはクール便で送ることもできます。

「元町一番街水曜市」ジェイ農園ブースで販売
「直接手に取って買いたい」方は、神戸元町商店街で毎月第三水曜日に開催される「元町一番街 水曜市」に出店しているジェイ農園のブースを覗いてください。お気に入りのパンが見つかるかも。(1個350円~)
店名の「アリギリス」は、イソップ寓話のアリとキリギリスから拝借。ストーリーが、極端に良いときと、極端に悪いときの両方を経験した店主の人生に重なり名づけたそうですが、「丹波オーガニックキッチン」は、将来オーガニック料理も提供できるようにとの願いも込めています。過去の経験もこれからも大切にしている店主がつけた素敵な店名「丹波オーガニックキッチン アリギリス」。“体にやさしいものを届けたい”と願う笑顔に見送られ、お店を後にしました。
<注意事項>
- 掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更、消費税率変更に伴う金額の改定などが発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。
