災害現場を支え、防災に力を発揮する技術を世界へ

株式会社ヒロセ産業

近年増えている大きな災害。その災害復旧現場や防災の現場で目にするものに、テントやシートがあります。特殊な素材で作られた頑丈なもの、こういった製品を作っているのが青垣町のヒロセ産業です。世界中のいろんな場所で役立てられているその製品は、主に地元の人の手によって一つひとつ手作りされています。

多種類のテントとシートを丹波で製造

同社は創業から50年以上、テントやシートを作っています。小さなものなら軒下の日除け、トラックの荷物カバー、保冷容器、バレーボールのネットといった身近なもの。大きなものなら、道路ののり面、競技場のドーム、オイルフェンスなど、びっくりするほど多品種がここで作られています。

体育館のような広いスペースでチームごとに製品が作られていきます。てきぱきと手を動かすスタッフの皆さんは、ほぼ未経験からのスタートですが、工業用ミシンで極厚物を縫う技術も先輩に教わりながら実践。

「多品種を扱うため、スタッフの知識や技術はどんどん向上していきます」と廣瀬隆仁社長。

やりがいをたずねてみると、「次々に新しい技術を覚えられること、完成したときの達成感が魅力」と入社8年目の女性。子育て中のお母さんは有給休暇をとって子どもの学校行事に参加し、孫を預かる日だからと休む人もいて、とてもオープンな雰囲気。互いにカバーしあえるチームワークを感じます。ちなみに、新卒を含めて、一緒にものづくりをする仲間を求めているそうです。

需要が増えている大型テント

スタッフを率いる廣瀬社長

「近年、製造するテントやシートの種類は大幅に増えました」という廣瀬社長。その要因として素材の進歩とシートが活かせる場が増えたことがあげられます。競合する企業の数は少ないのですが、高度経済成長時代のように数量で勝負できる時代ではなく、高い品質管理が求められるようになりました。

廣瀬社長は「品質に満足できないものは絶対に外に出さない」と、細心の注意を払っています。「なぜこの作業が必要なのか、この先にどういう工程があるのか」スタッフがそれをわかった上でミスなく仕事をすることが重要だと伝え、自らも職人として腕を発揮しています。

社会が求めているものに技術で応えたい

突き上げのテント

間仕切りシート

意識して見渡してみると、毎日の暮らしの中でシートがいろんな場所に使われているのが目につきます。例えば野外の大きなテントや間仕切りシートなど、日差しや風雨をさけるためだったり、断熱効果のあるものだったり、目的は様々です。

オイルフェンス

ニュース映像でしか見る機会はありませんが、船の座礁などによる油漏れに使われるオイルフェンスも同社で作っています。また、見えないところで必要なものとして、土木で使われるものもあります。ダムや湖の底に敷く巨大なシート、埋め立て工事で海岸に使うシートなどがそれにあたります。

ここにセメントを詰めます

道路ののり面などに使われる頑丈なシート。袋状の中にセメントを詰めて設置し、土砂崩れを防ぎます。

防潮シート

注目されているのが、土のうの代わりになる防潮シート。これを設置すれば水を通しません。普段はコンパクトに折りたたんで収納でき、いざという時には、写真のように広げてファスナーで必要な長さ分つなげればいいだけ。土のうだと重くて高齢者が運びづらかったり、あとで処分に困ったりしますが、このタイプはその不便さをクリアしました。

プール育苗用のシート

ヒロセ産業はまた、農業技術の一つである「プール育苗」に使われるシートも作っています。プール育苗とは、ハウス内にビニールで簡易プールを作り、そこに育苗箱を置いて灌水状態で苗を育てるものです。

灌水作業は、4~7日に1回程度、水道の蛇口を開閉するのみ。また、最低気温が4℃以上の時季は朝晩のサイドビニール開閉作業も必要ありません。過乾燥の心配がないため、床土量が少なくてすみ、追肥作業も容易です。作業がラクになることに加えて、ムレ苗や籾枯れ細菌病の発生が極めて少なく、減農薬栽培などで広く普及しています。

また壁に取り付ける断熱効果のあるシートは、エアコンのききがよくなって電気代が大きく節約できたと、工場や倉庫で重宝されています。

「さらに改良し、様々な商品を開発したい」と意気込む廣瀬社長。丹波のものづくり企業として、どんどん実力を発揮しそうな企業です。

 

<注意事項>

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