ITで丹波を元気に! 誰でも利用できる交流スペース

芦田集学校

青垣の芦田小学校がその役目を終えたのは2017年(平成29)3月のことでした。1874年(明治7)の開校から144年間、地域の歴史を刻んできた小学校に再び命をと、2020年(令和2)1月、ITをキーワードに地域交流をはかる施設「芦田集学校」(以下、集学校)として再スタート。これは、リングリー株式会社が全国で運営する「おかえり集学校プロジェクト」の第4校目、近畿では初です。同社は、中古パソコンの販売・修理・買取が主な業務で、ITと廃校をかけ合わせたIT交流施設を各地で展開しています。今やビジネスだけでなく、日常生活にも欠かせないITを一人ひとりが活用して、地域を活性化しようという取り組み、面白そうです。

パソコンやスマホの困りごとの無料相談

集学校のメインとなる部屋は、「ミノリバ」と命名されてスタッフが常駐。誰でも自由に来てパソコンやスマホのトラブルや使い方を相談することができます。スタッフが横について、わかりやすく使い方を教えてくれたり、不具合の原因を探り、必要に応じて部品や修理も手配してもらえます(部品や自社工場での修理は有料)。

「高齢の方がスマホを持って来られることも多いですよ。どんなパソコンを買えばいいのかわからない、という相談も多いです」と言うのはスタッフの畑田達和さん。その方の利用目的や生活環境を聞いて、最適でリーズナブルな提案をするそうです。パソコン購入に悩んでいる人には、企業などから大量に払い下げられた中古パソコンを、5万円くらいからという格安で購入できるのも魅力。しかも永久保証というサービス付きです。

ITの進歩で、住んでいる地域に関係なく、世界中の情報とつながれる時代になりました。遠くに出かけづらい高齢者ほど、ITを活用して楽しみを増やしてほしいですね。最近では、自治会のIT相談会にも参加して地域のIT化に尽力しています。

部屋の中央に置かれた大きなクマのぬいぐるみ「はぐクマ」くんは、実は子ども用パソコンケースなんです。お腹の部分にパソコンを入れて、抱っこして持ち運ぶもの。パソコン本体込みで6万2千円からというリーズナブルな価格で、それぞれの集学校に3色展開で数量限定という、ユニークな商品です。早いもの勝ちですよ。

また、家庭に眠っている古いパソコンや携帯電話、その他の電化製品を持ち込むこともできます。同社が中古のパソコンを扱っていることから、独自のルートで本体を再生したり、部品を再利用したり、SDGsに配慮したリユース企画です。冷蔵庫や扇風機などの家電も持ち込まれていました。

誰でも利用可能なフリースペース

「ミノリバ」はIT相談以外にも誰でも自由に使えるスペースです。Wi-Fi環境が整っているのはもちろん、プロジェクターやディスプレイとつないで画面共有しながら2~3人で打ち合わせをしてもOK。お水やコーヒーも自由に飲めて、時間制限もなし。本当にいいのですか?と思わず聞き返してしまったほどです。

円形の部屋、「今日室 EN(きょうしつ えん)」もフリールームとして利用できます。仕事でも遊びでも、飲食しながらおしゃべりでも、自由に使っていい部屋なんです。館内で使うならノートパソコンも無料で借りられると聞いて、またまたびっくり。

毎週木曜に開催されているのが、「地域とつながるBOX市」。10~18時に家庭でとれた野菜で余ってしまったものを持ち寄ります。BOX市の前日か当日に持参が原則で、持ってくるだけ、持ち帰るだけでも可。ゆるやかな物々交換のイメージです。そしてここで、ぜひスタッフや参加者とおしゃべりを楽しんでください。

過去と現在、どちらも大切な芦田の姿

「古今部屋(ここんべや)」と名付けられた部屋の片側には文集や写真など、旧芦田小学校の思い出の品が並んでいます。卒業生は必見ですね。

反対側には、施設の運営を行うリングローの事業やパソコンの中身がわかる図などを展示。過去と現在、そしてここから始まる未来を象徴するような部屋です。

小学校当時の姿を残した、「まなぶ室」では、小学生を対象にしたプログラミング教室を土・日曜に開催しています。これからの時代に必須のプログラミングですが、なかなか親が教えることはできないので、こういう教室はありがたいですね。

もう一つの「まなぶ室」は靴を脱ぐスペースやベビーベットもある部屋。壁に展示されているのは、芦田集学校のスタッフで現代アート作家でもあるxxxx氏の迫力満点の作品です。無料のデッサン教室も開催しているので、絵が好きな人は問い合わせてみましょう。

黒板には小学校最後の日に子どもたちが書いた落書きが残されていて、ほのぼの気分に。

2022年(令和4)12月18日には、4団体共催の芦田ふれあいランタンフェスティバルを開催。芦田集学校、芦田自治振興会、高校生が創る未来の懸け橋プロジェクト、ライブナウがタッグを組んだ盛大なイベントで、「年1回の集学校の感謝祭を一緒にやることになりました。地元の皆さんに校舎や体育館、グラウンドなどもどんどん使ってほしいんです。来年には、20歳になった卒業生たちがタイムカプセルを掘りにくるんです」と楽しそうな畑田さん。畑田さんらスタッフは、青垣の祭りや農作業などの地域行事に参加したり、行政に働きかけたり、ITを基盤に、人と人が交流を深められるようにアクティブに活動しています。

毎週日曜になると中学生が遊びにきてパソコンをさわったりYouTubeを見たり、スタッフとの交流を楽しんでいるそう。居心地の良い場所だったので、私も取材のあと、自分のパソコンを開いて、しばしここで仕事に集中させてもらいました。

 

<注意事項>

  • 新型コロナウイルス感染症拡大予防のため、校内でのマスク着用、手指の消毒、ソーシャルディスタンス等に配慮しています。ご協力をお願いいたします。
  • 掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更、消費税率変更に伴う金額の改定などが発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。