遠方からもわざわざ訪れる 本場ドイツで修業したマイスターのソーセージ・ハム

バイエリッシャーホーフ

「バイエリッシャーホーフ」は、ソーセージの本場ドイツで7年半修業し、フライッシャーマイスター(食肉技術・加工の国家資格)を得た清水稔之(としゆき)さんのドイツソーセージ・ハムの製造販売店。丹波近隣のみならず、神戸阪神間などからのお客さんも多く、レストランやパン店などからの注文も多数。冷凍肉は一切使わず、国産の新鮮な生肉のみを使い。香辛料、包装紙はドイツから輸入、作り方もちろんドイツ式。日本人の口に合うよう塩分を抑え、正統派なドイツソーセージを再現しています。

最短6年でドイツの国家資格マイスターを取得し、丹波で開業。

2000年(平成12)にオープンした同店。まるでドイツの洋館のような瀟洒な建物ですが、もともとここは、清水さんの祖父が立ち上げた精肉店の作業場がありました。高校生だったある日、テレビから流れてくるドイツのソーセージ職人を特集したドキュメンタリー番組に目を奪われました。
そこには、これまで日本で見たことのなかった華やかで種類豊富なハムやソーセージがずらり。豚一頭を無駄なく使って加工品をつくる「マイスター(職人)」という仕事に惹かれたのです。
実家が精肉店で、肉の存在が身近だったこともあり、高校卒業後はドイツに修業に行きたいと考えるようになりました。

茨城県にある食肉の専門学校で1年学び、丹波に戻ってからもドイツへの思いは募るばかり。両親も「最終的には日本に帰ってくること」を条件に送り出してくれました。清水さん二十歳の時に、ドイツのミュンヘンへ向かいます。渡独までにドイツ語の勉強は、ある程度してはいましたが、習得までには至らず、最初は言葉の壁に苦労しました。しかし職場は住み込みの精肉店。朝から晩までドイツ人の同僚と生活していくうちに自然に身に付いたそうです。

週4日仕事をし、週1日は職業訓練校で食肉加工技術を学びました。3年で「ゲゼレ」という資格に合格、その後、さらに3年の実務経験を経て「マイスター」を取得。何百種類もある食肉加工技術のみならず、家畜の飼育や解体に関する知識や理解も深め、経営者としての人格や指導力などをも備えた証の資格です。最速6年間の修業は終えましたが、さらなる経験を積むため、師匠の紹介でドイツ各地の名店でも学び、日本へ帰国し、現在の地で開業しました。

師匠の家族とひとつ屋根の下で暮らし、同僚も友人もみなドイツ人ばかり。「一人アパートで暮らしていたら分からないような、ドイツの生活というものを知ることができたのは、自分にとっての財産です」と、清水さん。
日本人と気質が似ていると言われることもあるドイツですが、「真面目という点ではそうかも。でも、嫌なことは嫌、怒るときは怒るとか、思ったことはストレートに話します。まわりくどく話したり、ねちねち尾を引いたりしないので、付き合いやすいですよ」と、回顧します。

師匠からも太鼓判!新鮮な国産肉を使い、ドイツのスパイス&レシピで。

さて、数あるソーセージのなかで、主力商品は豚肉100%の柔らかくてジューシーな白いソーセージ「ヴァイスヴルスト」。白く仕上げるために脂も白い部分だけ、柔らかい肉質のみを使用。皮は厚めなのでボイルしていただきます。日本では珍しいタイプですが、南ドイツ・ミュンヘンの精肉店では必ず置いてあるといっていいほどポピュラーなもの。このソーセージの味でその店の価値が分かるのだそうです。写真右は「アウグスブルガー」。牛肉も入ったスパイス多めの焼きタイプ。バーベキューにも。

最近はパテも人気で、写真右は「いちじくと黒トリュフのレバーパテ」。普段は3,4種類並んでいるそうですが、この日はすでに完売していました。真ん中は「ルッツクラカウアー」という、師匠ルッツさん直伝の黒胡椒入りのサラミで、お酒のアテにぴったりです。イラストがかわいらしい写真左のソーセージは、イタリアンパセリが入った「ゲルブヴルスト」。あっさりしていて食べ飽きない、お子さんにも食べやすいタイプ。

兵庫県産の豚ロースを使った生ハムや自家製ベーコンももちろん、本場ドイツ仕込み。「日本のものとはひと味違うと思います」と、自信をのぞかせます。

清水さんオススメの「フライッシュケーゼ」は、プレーンのソーセージ生地を鉄の型に入れてオーブンで焼き上げたもの。厚切りにスライスし、そのまま焼いて食べたり、パンに挟むなどして食されることが多いとか。清水さんは、ドイツ人がよくする食べ方、半熟の目玉焼きの黄身を絡ませて食べるのがお気に入り。
ミュンヘンの店では毎朝7時の開店と同時にお客さんでいっぱいになるそう。「朝ごはんに焼き立ての黒パンと一緒に食べたり、ランチにはパンに挟んで持っていったり。それが日常。僕自身がそういう提案をもっとしていけたらなと思っています」。

実家相伝の焼き豚の味も守りつつ、ドイツソーセージを広げていく。

同店の主力はもちろんドイツソーセージですが、祖父の時代から愛されていた焼き豚(肩ロース)も健在です。「地元の方がお買い求めくださることも多いですね」。精肉店はもうなくなりましたが、祖父、父と受け継いだバトンもしっかり大事にしています。

マイスターの称号を得たときの賞状とともに清水さん。数年前、師匠であるルッツさんが引退し、娘さんと一緒に丹波まで来てくれたそう。「味のチェックをされると思って緊張しましたけど、“これだったら間違いない”と言ってもらえて、ほっとしました」と、笑顔で話します。師匠のもとから卒業して20年以上経ちますが、今でも交流がある関係性も素敵です。

2001年(平成13)にはドイツで行われた食肉加工コンテストで銀賞を受賞し、名実ともにマイスターに。
「大量生産してつくり置きするのではなく、フレッシュな状態のものをお客様に食べていただきたい。そのために、原料の肉にもこだわりますし、師匠から受け継いだレシピ、味をこれからも守っていきたい」。
神戸や宝塚からのお客様も多く、「いつこちらにお店を出してくれるの?」という要望もあるため、「いつか小さくてもいいから、支店を出したいな」と、夢も語ってくれました。これからも、丹波の地から日本人に合うドイツの味を広げていきます。

 

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