山南町の「清水商店」は、75年にわたって続いている菓子問屋です。戦後、物資が少なく“甘いおやつ”の流通がままならなかった頃に、当時の駄菓子の代表格、棒にささった「いもあめ」などを販売し、丹波各地の子どもたちを喜ばせてきました。子どもが駄菓子を好きなのは、昭和から平成、令和へと、いつの時代も同じです。そんな素敵な仕事を受け継いで丹波を駆け回る三代目・清水和孝さんにお話を伺いました。
戦後間もない時代を明るくした
清水商店は、第二次世界大戦後間もない1948年（昭和23）、先代と先々代の二人が商売を始めました。仕入れ先は、現在も人形やおもちゃ、駄菓子、花火などで有名な、大阪の松屋町筋商店街です。当時は、トラックで片道3時間ほどかけて仕入れに行ったそうです。今とは異なり、高速道路が繋がっているわけでもなく、舗装された道路もままならない状況での仕入れは大変な労力を要したことでしょう。
流行に敏感なお菓子
嬉しいことに、トラック一杯に仕入れた駄菓子は、あちらこちらから引っ張りだこですぐに売れたそうです。商品が品薄になったらすぐに仕入れに向かうという繰り返しがしばらく続きましたが、努力の甲斐あって仕入れ先から信頼を得、大阪から商品を配達してもらえるようになりました。
商品の仕入れに活躍したトラックは、先代の手によって荷台に棚が取り付けられ、丹波での卸先である小売店がすぐに品物を手に取れるようにしました。売れ筋商品を目につきやすいところに置くなど、工夫をこらして順調に売り上げを伸ばしていきました。
配達準備中の清水さん
1987年（昭和62）、結婚を機に清水さんが商売に加わりました。先代との二人三脚はその後、2022年（令和4）まで続きます。
駄菓子は大人も大好き！
大人買いしたくなる駄菓子がいっぱい！
時は流れ、令和になって“まちの駄菓子屋さん”を目にする機会がずいぶん減ってきましたが、駄菓子で大きくなった大人たちは、駄菓子をアテにお酒を楽しむのも好きです。
「子どもたちに人気の駄菓子は、案外アテになりそうなものが多いんです」と、清水さん。
三杯酢でイカ風味の「カットよっちゃん」、カツに似た「ビッグカツ」、チキンの香りにジンジャーやガーリックが加わった「ポテトフライ・フライドチキン味」、パリパリ食感がくせになる「蒲焼さん太郎」などなど、どれもビールやチューハイに合いそうです！
4枚入りだからとってもお得感があります
もちろん、大人気分を味わえるタバコのようなデザインのチョコレート「ココアシガレット」や、小さなカップの中身をスプーンのような小さな木べらですくって食べる「モロッコヨーグル」も子どもたちには根強い人気です。
こんなかわいい駄菓子は、はるか昔の子どもの頃を思い返させる、大人にとっても素敵なおやつなのです。
お菓子の先にいる人への配慮も忘れずに
各種メーカーのお菓子が並ぶ
1970年（昭和45）代に入ると、あちこちにスーパーマーケットが出店しはじめます。続いてコンビニエンスストア、大型量販店と続き、小売店が減少しました。また、少子高齢化に伴い“まちの駄菓子屋さん”も減少の一途をたどっています。そんな状況の変化に伴い、現在は、駄菓子だけではなく、各種メーカーのお菓子や、飲料水も取り扱い、丹波のほかに西脇方面にも販路を広げ、保育園や老人施設などにも届けて喜ばれています。
中でも、保育園では、アレルギーのある子どもが増えたことから、園の先生方はおやつ選びに細心の注意を払っています。だから、清水さんがサンプルとして届けるお菓子は、50～60種類にも及びます。原材料に気を配り、味が濃くないものを選ぶなど、少しでも子どもたちが楽しいおやつの時間を過ごせるように様々な商品を案内するのをいといません。
子どもに人気のゼリーは夏場冷凍して食べるのもおいしい
また、バスツアーやちょっとした集まりで求められる催事用の詰め合わせお菓子では、同種の商品が重ならないように、みんなが笑顔になるような内容を思い浮かべながら、希望予算に合わせて調整します。
卸なので、一度大袋を開けてしまうと、他の小売店への販売は厳しくなりますが、お客さんの要望に合わせて端数でも納品する日々。遠足の前には、お小遣いを握りしめて買いに来る子どもたちにも快く1個2個と販売しています。
食べるのが目的の駄菓子ですが、あれこれ悩んで選んだり、遊んだり、クジに当たったり、楽しいひと時を過ごしたという“心の栄養”を子どもたちに与えてくれます。目を輝かせてほおばった駄菓子の見た目、匂い、味は、その時々の情景と共に記憶のすみっこに刻まれます。そんな夢や思い出のお手伝いを担っている清水商店。素敵なお仕事だと感じました。
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