明治30年創業の技術力で、文化財を緻密に修繕

株式会社 大前工務店

丹波市にて明治30年に創業し、120年以上宮大工としてさまざまな神社仏閣の修繕を手掛けてきた大前工務店。歴史ある建造物を後世に残すべく尽力してきた企業です。社寺建築の技術を生かした新築・リフォーム事業も行うなど、伝統と未来を見据えた運営で多くの人に信頼されています。

歴史ある建造物の思いを受け継ぎ、次代へ繋ぐ

大前和則社長

日本全国各地にて長年受け継がれ、育まれてきた神社仏閣。現在に至るまで地域の人のコミュニティの場であり、歴史的建造物としても大切に残されるべき存在です。大前工務店はそんな文化を未来へと繋ぐ企業のひとつ。1897年(明治30)創業の、4代目になる会社です。

大前工務店が新築を担ったお寺

社寺建築は、一般的な大工とは異なり、日本の伝統工法である「木組み」を用いて修繕や建築を行います。釘などの金物を一切使わない、もしくは使用箇所を最小限にとどめつつ木を加工して繋ぎ合わせることで、金物による木材の劣化を防ぎ、高い耐久性を実現。木材の組み合わせによって生まれたわずかな“遊び”が揺れをほどよく吸収し、耐震性にも優れた建物が出来上がります。

緻密な作業が求められる技について、大前工務店の4代目社長・大前和則さんは「これで極められた、ということはありません。ずっと勉強です」と話します。

「私たちが修繕を任される建物の中には、300年を超えるものもたくさんあります。これから先残していくためには、300年前に手掛けた宮大工さんの意志をしっかりと引き継いでいくことが大切です。建物に合った材料を見極めるのはもちろん、組手の技法も磨きながら次世代へと思いを託します」。

歴史ある建物に直に触れ、修繕できる魅力

伝統技法を用いる社寺建築は、専門知識や技術力が求められるうえ、木材をミリ単位で加工するシーンも多く、集中力も必要となります。それでも、日常的に文化財に触れられるのはとても魅力的だと大前さんは話します。

「一般の参拝客が入れない場所に入っていくことができたり、これから何十年とあり続けるものを手がけられたりと、社寺建築でしか感じられない喜びがあります。有名社寺の修繕に携わる機会もあり、やりがいに満ちた職業です」。

主に近畿地方、遠方では岐阜、広島、四国などの神社仏閣から依頼を受け、雨漏りの修繕や床の張り替え、基礎部分の建て替えなど作業は多岐にわたります。施工の確かさを見た別の宮司や住職から、「うちもぜひお願いしたい」と依頼されるケースもあり、「おかげさまで忙しくさせていただいています」と、その腕前は確か。

また、神社仏閣を豊かに彩る木彫装飾も請け負い、美しく魅力的な紋様を正確に彫り上げることができます。立体感やなめらかさなど、近くで見ても惚れ惚れするほどの仕上がりで、長年培ってきた技術力の凄みが垣間見えます。

技術力を生かしたリフォーム・新築も大好評

新築物件の3Dパース 外観

3Dパース 鳥瞰

神社仏閣の修繕事業とは別に、一般的な工法を用いたリフォーム・新築案件も多く手がける大前工務店。木組みで培われた技術力をベースに、正確で丁寧な施工によって美しい住宅が見事に仕上がっていきます。

「伝統技法はしっかり守りつつ、新しい技術は積極的に勉強して活用していきたいという思いがあります。リフォームや新築を手がける際には、3Dパースを作成して施主様にご確認いただくことも。どのようなご要望にもほぼ応えることができる柔軟性が、建築大工の強みです。こんなことできたらいいな、をご相談いただき、施主様と一緒に理想の住まいを作り上げていきたいです」。

木組み工法で建てられたエントランス

もちろん、木組みの技法を用いた住宅もオーダー可能。大前さんのご自宅も木組みで建てられ、引き戸や天井、床などあちこちに意匠性があります。

養護学校からオーダーされた特別な椅子

ほかにも、養護学校から「子どもたちの訓練のための椅子を作ってほしい」とのオーダーが入り、工夫を凝らして製作したことも。依頼された仕事に真摯に向き合い、最善のアイデアでものづくりをしています。

「社寺建築は覚えることも多く、自分には難しいのでは…との先入観で敬遠してしまう人もいます。けれど、一つひとつの技術をしっかりと教えていきますし、うちには神社仏閣以外にもさまざまな大工仕事があります。未来に残るやりがいのある職業なので、ぜひたくさんの人にこの業界に入ってきてもらいたいですね」。
数十年、数百年続く建物を手がける喜び。ぜひ多くの人に感じていただきたいと思います。

 

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