“愛こそすべて”をテーマにゼロから農業をスタートし、直売所を中心に農薬化学肥料不使用の農作物を届ける「丹波わっしょい農園」。子どもたちが安心して食べられる野菜やお米にするために、日々土と格闘し、おいしくて栄養たっぷりの作物をつくり続けています。代表の中川清二さんに話を伺いました。
酒造りを通して「原材料から手掛けてみたい」
丹波わっしょい農園 代表・中川清二さんのイラスト
中川さんが丹波に移住したのは10年以上前のこと。東日本大震災に見舞われた日本と、そんな国を動かすシステムに疑問を感じ、インドや東南アジアに居を移していたときに、丹波とつながりのある方と出会ったのがきっかけです。
帰国してさっそく丹波に訪れてみた中川さん。高地ではなく、かといって平野でもない、まさに“里山”といった雰囲気の丹波に触れ、「山の高さがちょうどいいな」とすぐに気に入ったそう。
中川さんが気に入った“ちょうどいい”山々
旅の流れでそのまま丹波へ移住した中川さんは、旅仲間とともにシェアハウスの運営を開始。合間にホットドッグ店やインド雑貨店を始めるなど、自由な発想で生計を立てていました。そんな中でスタートした便利屋稼業の依頼のひとつに、丹波の酒蔵での日本酒造りがありました。
酒造り期間中は毎日米に触れる日々を6年間過ごす中で、「自分も原材料作りに携わってみたい」と考え始め、まずは「酒米作りを」と農業をスタートしたのが現在につながっています。
力強く育つ白ねぎ
「最初はおいしい酒米を作りたい、という一心だったのですが、徐々に農業自体に興味が移っていきました。農業は“生きる”ことにいちばん近い仕事。こんなに魅力的な仕事は他にないなって思ったんですよね」。
農薬化学肥料不使用にこだわったお米、トマト、黒豆など
太陽の光を存分に浴び、逞しく育つ
酒造りで杜氏から教わった「我々の仕事は菌の働きをサポートすることだ」という考え方を農業にも生かし、作物が持つ力を最大限に生かすやり方を実践。農薬など化学的な肥料をほとんど使わず(お米は除草剤のみ使用)、安心安全採れたての作物をすぐに提携店舗へと運びます。
手がける作物も年々増え、今ではうるち米が3.5ヘクタール、もち米が0.5ヘクタール、黒枝豆・黒豆が2ヘクタール、丹波大納言小豆が1ヘクタールのほか、さつまいもや白ねぎ、トマト、玉ねぎなど多種多様に栽培(酒米は現在は作っていません)。2024年(令和6)には丹波市の認定農業者にも認定されました。
人気の「あっぱれトマト」
出来上がった作物は、どれもうまみたっぷりだと大評判。毎年夏に収穫する「あっぱれトマト」は、甘みもたくわえて子どもたちにも大人気です。生育、収穫、出荷と、カビや虫がつかないようにきめ細やかに対処しながら売り場へと送り出します。
秋に収穫するさつまいもも、待ち望んでいる人が多い人気者。甘くてねっとりとした紅はるかをはじめ、滑らか食感のシルクスイートや濃いオレンジ色が特徴のハロウィンスイート、ホクホク食感のふくむらさきなど、作る品種もさまざまです。
メインの売り先は丹波市のJAやおばあちゃんの里などの直売所ですが、地元スーパーの地産地消コーナーにも一部卸しているので、丹波市民なら気軽に購入可能です。
子どもたちに食べさせたい農作物
稲刈り作業中の中川さん
「はじめてお米を作ったときにちょうど子どもが離乳食の時期で、自分で作ったお米を食べさせたんですよ。父として、こんなにうれしいことはないって感動しました。農業をする上で、こういう気持ちは絶対に忘れちゃいかんなと。自分の子どもに食べさせたいと思えるものを真面目に作っていく。今もその気持ちを大切に取り組んでいます」。
玉ねぎの収穫を手伝う子どもたち
もちろん、農薬を使わないことでさまざまな苦労があります。例えば、丹波市の名産でもある黒枝豆・黒豆はどうしてもキレイに育たずに、約半分は廃棄処分になってしまっていたそう。
「フードロスがもどかしく、自問自答することもありました。でも2023年(令和5)から、廃棄だったもののうち3/4はB級品として取り扱ってくれるスーパーも見つかったりして。一つひとつ解決策を探りながら進めていかなければならないと強く感じます」。
「子どもたちが安心して食べられる、おいしい野菜や米が作りたい」ただその一心で、農業と真摯に向き合い、精魂込めて農作物をつくる中川さん。妻でグラフィックデザイナーの早苗さん(ひゃくめデザイン/owocowac)が手がけるパッケージも印象的なので、直売所などでもとてもわかりやすいです。ぜひ一度手に取って、そのおいしさを味わってみてはいかがでしょう。
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