多くの人に取材をするなかで、持続可能な社会のためにできることは何だろうか…と、考えている人や企業の声を耳にする機会が増えています。人々の意識が高まり、ゴミの分別はあたりまえの習慣になっていますが、どんなふうに回収されているのだろう、と気になっていたところに、青垣の専門業者「六輔舎」さんとお話する機会を得ました。私たちが日常生活の中でできることが、もっとあるかもしれないと思いながら事務所に伺いました。
70年の歴史を刻んで
青垣の篠山街道沿いにある、かわいらしいイラストの看板を目じるしに、「六輔舎」のオフィスを訪ね、代表取締役の足立一雄さんにお話を伺いました。六輔舎は1954年(昭和29)に創業し、70年近く丹波を中心に廃棄物処理などを行っています。現在は兵庫県に加えて、京都府や大阪府の許可も受け、広範囲で産業廃棄物や一般ごみを回収しています。
オフィスに掲げられた古い写真は、1920年(大正9)に撮影されたものだそうです。「祖父の代までは醤油蔵だったので、その頃の写真です」と足立さん。幼い頃、醤油を造る大きな木樽があったのを覚えているそうです。醤油蔵を閉めたあと、新たに事業を起こしたのはお父さんでした。最初は、鉄と非鉄(銅、アルミ、真鍮など)の回収からスタート。資源の少ない日本では、昔から鉄や非鉄は貴重なものとして、古くなったものや小さな破片も回収され、溶かされて新たな金属に利用されていました。
また、紙、雑誌、新聞紙といった紙類も古くからリサイクルされていましたが、これに段ボールが加わったのは昭和30年代後半頃です。ちなみに、段ボールの中でA式という種類は、通称ミカン箱と呼ばれています。これは、和歌山のミカン農家が当時のスーパーダイエーに大量にミカンを送る際に用いて、スーパーの発展とともに広まったという説があるそう。ミカンのような重いものを入れても底が抜けない、ということもあるかもしれませんね。
ごみをなくす仕事
六輔舎が鉄や紙から産業廃棄物に事業を拡大したのは、平成になってからです。1991年(平成3)に法改正があり、産業廃棄物に関する法律が厳しくなりました。不適切な処理による環境汚染や不法投棄が社会問題となり、その解決を目指すものです。廃棄物を排出する事業者が廃棄物に関する情報をマニフェスト(産業廃棄物管理票)に記載し、廃棄物に添えて収集運搬業者や処理業者に渡し、適切な処理を行っていることを確認・証明しなくてはならないという制度です。
同社がいち早く参入したのは、取引先から業界の動向を聞くうちに、「これからは産業廃棄物の時代になる」と踏んでのことでした。取引先から信頼を得ていたからこその業界情報であり、お父さんの先見の明ともいえそうです。
そして1999年(平成11)、お父さんが亡くなったために、足立さんは急遽丹波に戻って跡を継ぐことになりました。丹波篠山の同業者のもとで修業をしてから本格的に丹波での仕事をスタートします。
「私たちがやっているのは、ごみを減らす仕事、もっと言うと、ごみをなくす仕事です」と足立さん。家庭や企業から出る、紙、鉄、ビン、プラスチック、木くずなどは、ごみではなく、再生できる資源です。この業界は分業が進んでいるので、回収された資源は素材ごとに細かく分別されて、それぞれの再生ルートに流されます。ゴミとして処分すれば廃棄物ですが、リサイクルすれば資源として有効活用できます。「ごみをなくす」という強い思いは、「人と自然との共生」という企業理念にも現れています。
地域社会のために続けていく
「地域に根ざして、地域のために仕事をする」、そんなふうに誇りを持って仕事をするスタッフの皆さんは、デニム素材の制服に身を包み、六輔舎のロゴが入ったトラックで回収に走り回っています。丹波市の一般ごみも扱っているので、このトラックを見かけることも多いですね。コロナ禍の危機的な状況の中でも休まずに走り続けていました。この時期はとくに、「ありがとう」と声をかけられることが多かったようです。
同社が扱っているのは、家庭や事業所から出される一般廃棄物として、燃えるごみ、資源ごみ、不燃物、大型ごみ。産業廃棄物として、廃プラスチック類・燃えがら・汚泥・動植物性残さ・廃油・廃酸・廃アルカリ・紙くず・木くず・繊維くず・ゴムくず・金属くず・ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず・がれき類です。
どれが産業廃棄物で、何がリサイクルできるのかわからない場合は、個別に相談することもできます。建築系から出る木くずは木質ペレットや堆肥の原料に、コンクリートは細かく砕かれてタイルに、新素材の端ぎれは燃料になるそうです。技術の進歩によって、リサイクルもどんどん進んでいるようです。
断捨離をしようと思っていたので、リサイクルできるものがないか調べてから処分しようと決めました。リサイクルは、持続可能な社会のためにも日頃から意識しておきたいものですね。
<注意事項>
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