「もう一つの家族に」利用者同士で認めあい、生き生きと過ごすデイサービス

有限会社いこい

丹波市氷上町にある民家型施設では日中、高齢の方々が和気あいあいと過ごしています。実はここ、生活リハビリを中心に行う通所介護施設(デイサービス)「いこい」です。「いつまでも住み慣れた自宅で過ごしたい」という高齢者たちの思い、そしてその家族にも寄り添う、施設の管理者、葦田純子さんに話を伺いました。

前列中央が葦田純子さん

暮らしの何気ない行動もリハビリに 自らの意志でできることから

食器洗い・拭きは利用者の仕事として置かれている

生活リハビリとは、日常生活で行う食事や着替え、排せつなどもリハビリと捉え、なるべく自分の力でできるようにしていくこと。「いこい」で過ごす利用者は、食事時には料理を盛り付けたり、配膳を手伝ったりしながら動いています。

要介護認定を受けた方であっても、自分ができることを自らの意志で行うのが「いこい」の基本。食器洗い、洗濯物を干す・たたむ、などといった家事を自発的に行えるような環境が整えられています。

 

存在を尊重し社会参加を促すために 安心できる居場所作りを徹底

食事風景

利用者の「暮らし」の中で大切なのは「ここにいても大丈夫」と安心できる居場所作りと、1人1人を頼りになる存在だと認め、受け入れることなのだと葦田さんは言います。

 

「配膳してくださって本当に助かります。居てくれてありがとう、頼りにしています」というスタッフからの温かいメッセージが伝わる環境の中、利用者自身からも「私に手伝えることあるかな?」と意欲ある言葉が出てきています。

 

「社会に参加し、必要とされていると思えば、長生きするモチベーションにもつながる。そこから自己実現を目指して『元気でいるために体操や脳トレをやりたい』という気持ちを引き出すことにつながります」

生活リハビリの様子

尊重し合う人間関係を利用者同士でも作り、同年代が支え合っていけば、デイサービスは「義務的に連れて行かれる場所」ではなく「また行きたい場所」という楽しみにつながります。

 

「利用者さんが生き生きして笑って家に帰ってきたら、その家族も嬉しいでしょう」と話す、葦田さんの家族への気遣いには、自身も要介護者の家族という経験がありました。

 

家族介護者だからこそ伝えられる寄り添いの言葉があるはず


葦田さんのお母さんがこのデイサービスの基となる訪問介護事業を起こしたのは2005年(平成17)。きっかけは、お父さんが要介護になったことでした。介護と仕事を両立するため、介護を仕事にするという発想に至ったのです。

当時は大阪の病院で看護師として働いていましたが、お母さんの相談にのっているうちに有意義なことだと感じ始め、1年ほど経って実家に戻ることを決意します。

「看護師という仕事は、どうしても『病気ありきのその人』というように、病気が前面に出てしまいがちですが、介護は要介護者の生活そのもの。別の難しさがあった」と振り返る葦田さん。お父さんの介護やお母さんの手伝いをしながら勉強して知識を深め、ケアマネージャーの資格も取りました。

「親の介護をしているからこそ経験者として見えることがある。もんもんとしている家族の悩みを身近に理解し、寄り添いの言葉をかけられれば。」という思いでケアマネージャーを務めてきた葦田さん。孤立し気分も沈みがちな高齢者の姿を見るうちに「生き生きとできる場所を作りたい」と考え、新しくデイサービス事業を立ち上げました。

 

「利用者さんもスタッフも家族」民家型デイサービスはアットホーム

自宅を改装して作られた民家型デイサービス

「自分がサービスを受ける立場になったら、こんな場所がいい」という視点で自宅を改装、「いこい」をオープンし、今年で3年目。食事は全て手作りで提供され、「利用者さんもスタッフも皆、家族」というアットホームで温かい空間となっています。

利用者は家族なので、自由に冷蔵庫を開けてお茶などを飲む

利用者と一緒に丹波の黒枝豆をもぐ作業を行ったり、カレーを一緒に作ったりすることも。これも生活リハビリの一環です。玉入れや風船バレーなど手作り運動会も催され、それらの活動内容はインスタグラムを使って家族の方々とも共有しています。


基本の来所時間は9時~17時頃ですが、介護者の仕事と介護両立を手助けするため、要望に応じて朝食付きの早朝サービス、夕飯までの延長サービスも行っています。「一人暮らしの方やご家族が仕事で帰りが遅いときなど、別のサービスを頼まなくてもいいように」との配慮から始めました。

入浴は利用者1人に対して女性スタッフ1人が付く完全個浴

「かけがえのない大切なもう一つの家族である『利用者様、職員様』の助けを借りながら、母と二人三脚で仕事と父の介護を両立し、母が作り上げた訪問介護事業(ヘルパー事業)とデイサービス事業を継続していきたい」と語る葦田さん。今後も自然体でスタッフと手を携えつつ、丹波の地域の高齢者に、毎日笑いが絶えないような場所を提供し続けたいと考えています。

 

自宅送迎あり、範囲は氷上町と青垣町で、1日の定員数は15名です。興味のある方は体験入所も可能ですが、介護保険制度利用のためにも地域のケアマネージャーにまずは相談してみてください。

<注意事項>

  • 新型コロナウイルス感染症拡大予防のため、施設内でのマスク着用、手指の消毒、ソーシャルディスタンス等に配慮しています。ご協力をお願いいたします。
  • 掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容が変更する場合もありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。