自家栽培の野菜を使った御膳とチーズケーキを古民家で味わう

山里

青垣から福知山につながる県道109号沿いに、のぼりがはためく民家があります。ここは、築200年になる古民家を改装したカフェ「山里」です。その名のとおり、山のふもとの一軒家で、まわりにはのどかな風景が広がっています。塩見てるみさんと夫の修さんが営む、週末だけオープンするお店を訪ねました。

田の字型に部屋がある昔ながらの民家でほっこり

お店の中に入ると、田の字型に和室が配置された昔ながらの民家のつくりが見てとれます。この家で生まれ育ったてるみさんは5代目だそうです。
「昔は土のたたきで、おくどさんや五右衛門風呂がありました。太い梁は建てられた当時のもの、かつてあった囲炉裏のすすで真っ黒になっています。修理をしつつ今に至っています」と説明してくださいました。

持ち手がついた古い和ダンスも趣があります。てるみさんによると、蚕を飼っていた時期もあり、床下に土と石で作った大きな掘りごたつのような形状で「炉」と呼ばれる床下暖房があり、炭火を入れて灰をかぶせ、蚕のために部屋を暖めていたようです。蚕のエサにするための桑畑も広がっていたと聞くと、いかに蚕を大切にしていたか想像できますね。

あたたかい日差しが差し込む縁側は日本家屋ならではの空間。冬は薪ストーブのやわらかな温もりが家中に満ちています。玄関側は県道に面しているとはいえ、車の量はさほど多くないので静かなひとときがすごせます。「私が小学校低学年の時にトンネルができて福知山とつながったんですが、それ以前は本当にのどかな山村でしたよ」とてるみさん。

新鮮な野菜を使った家庭料理を味わう

修さんも丹波市生まれで、西宮市で長年仕事に就き、早期退職で丹波に戻ったそうです。空き家になっていたてるみさんの実家を改装して、2009年(平成21)に開店したものの、介護やコロナ禍での休業期間を経て2022年(令和4)の秋に再オープンしました。「土日だけなので趣味のようなものですが…」と謙遜されるものの、手作りの味を楽しみにリピーターが来ています。

「四季御膳」1,350円

いちおしメニューの「四季御膳」は2カ月に1度、がらっと内容が変わります。お米は自家栽培、野菜も主に自家農園で作ったものなので、その季節のとれたてのものが中心です。たとえば12月から1月のメニューは、サツマイモごはん、コーンスープ、煮込みハンバーグ、グリーンサラダ、野菜の酢漬け、ベイクドチーズケーキでした。

取材に訪れた3月は、ひな祭りにちなんで、蒸し寿司、すまし汁、天ぷら、味噌漬け、お浸し、そしてベイクドチーズケーキでした。

やさしい味の酢飯にたっぷりの錦糸卵、あたたかい蒸し寿司は、ほっとする味です。

天ぷらのサツマイモやシイタケも自家農園のもの。畑仕事は修さんが中心、料理は主にてるみさんです。「もう少ししたらヤーコンの味噌漬けが出来上がるんですよ」と、この日は残念でしたが、次に来た時には食べられるかなと思うと楽しみです。四季御膳は可能なら予約がおすすめです。

「山里オリジナルカレー」850円

カレールーにバナナやリンゴなどのすりおろしやハチミツを加えた、深みのある甘辛口カレーです。自家製野菜の素揚げとともに供されます。

スイーツのあるティータイムもすごせる

「ベイクドチーズケーキセット」700円

四季御膳に付いてくるチーズケーキは単品やセットでもOK。しっとりした生地でソフトな甘さとさわやかな酸味が特徴です。香り高いコーヒーまたは紅茶とともに、ゆったり気分でティータイムが楽しめます。夏はアイスコーヒーもあります。
※ベイクドチーズケーキはテイクアウト及び、予約販売可

「ぜんざい」600円

毎年地元で開催される「ぜんざいフェア」にも出されて好評なのが、自家製ぜんざいです。丹波栗、丹波大納言小豆ともに自家栽培したものなので、おいしさもひとしお。

「冷やしぜんざい」600円

6月ごろからメニューに登場するのが、丹波大納言小豆の「冷やしぜんざい」です。白玉団子を入れて、つるんとした食感を楽しめます。

お茶も自家栽培して手摘みしたもの、サクランボが実れば料理のあしらいに添えるなど、畑の実りと直結した味が楽しめるお店です。かつては豪雪地帯でしたが、近年は雪も少なく、今年はしっかり積もったのは1回だけ。そんな行きやすさもあって、リピーターの多くは阪神間や明石・姫路から来る人だそう。

縁側から見える中庭には蔵があります。これも昔のまま、「庭は何も手入れしていないんです」と言われますが、春にはシャガの花が咲き、夏には草花が色濃くなり、秋には柿の木に実がなる、自然の移り変わりを見ることができます。「この木は渋柿なので、収穫を終えたら軒下にたくさん吊るし柿を作って甘くなるのを待ちます」。そんなのどかな光景を見る機会は都会ではなかなかありません。

BGMに流れていたのは昭和のフォークソング、窓の外は明るい春の日差し、のんびりと休日ランチを楽しめるお店でした。

 

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