氷上町の安達板工(あんだちばんこう)は建築板金を専門に行う事業所です。建築板金とは、屋根や外壁、雨どいなど建築の外観部分の板金のことで、主に鋼板を使って、屋根などの形状に合わせて板金して施工までを担当します。創業者である安達憲男(あんだちのりお)さんの右腕となる、専務の悠暉(ゆうき)さんに建設板金の仕事と職人としてのおもしろさについて話を聞きました。
建築板金とは
板金とは「金属製の板材を加工する技術や、加工された金属の板そのものを指す」と、手元の資料にはあります。その種類として、一般的に見聞きするのは、自動車、製缶、機械、そして建築板金です。細かく分類するともっとたくさんありそうですが、安達板工はその中の建築板金を専門に扱う事業所です。工務店や個人から依頼を受けて、様々な現場に出向いて新築やリフォーム工事の該当部分を担当しています。施工地域は丹波市を中心に他府県にも及び、協力業者と一緒に施主の意向を形にする一翼を担っています。
昔はハンマーでたたいて曲げてという加工していましたが、最近では樹脂と樹脂の間に鉄を挟んであるものなど、既製品がほとんどで、材料専門店から仕入れて機械で加工することが多いそうです。
とはいえ手作業も必要です。専門の工具を使って切ったり曲げたりする技術は、練習と経験を重ねて体で覚えていきます。機械化、分業化が進んでも、やはりそこには職人の技術が求められます。
父のあとに付いて建築板金のおもしろさを知る
悠暉さんは三人兄弟の次男で、少年の頃から大学まで野球に熱中していました。中学生ぐらいから、お小遣い稼ぎに時折父の現場を手伝うこともありました。その時に職人の手で形ができていくモノづくりの面白さや、完成した時の達成感、「きれいになって嬉しい。ありがとう」と施主さんに感謝されることに喜びを感じたそうです。そんな経験もあって、なんとなく「自分が跡継ぎになるのかなぁ」と思っていたそうです。大学では3回生までに順調に単位を取っていたので、4回生から本格的に家業を手伝い始め、卒業後は本格的に板金職人の道へ進みます。
実際に仕事に就いてみると、自分で工夫できることの面白さに気付きました。現場が違えば施工内容も変わり、経験を積めば積むほどできることの幅が広がっていきます。古い家のリフォームはかなり複雑ですが、「ここはこんな形のほうがいいだろう」と、自分で考えるクリエイティブな部分が増え、やりがいも増していきました。
屋根の上での作業は危険を伴いますが、もちろん安全対策は万全。「夏は暑いですが、専用の靴や手袋をして作業しています。炎天下で野球をやっていたので、暑さには強いんです。屋根や雨どいという性質上、一番の天敵は雨もりですね。屋根材の重ね方、つなぎ方を一つ間違えてもおおごとです。幸い今まで一度も間違えたことはありませんが(笑)」と悠暉さん。
やる気のある元気な職人を育てたい
どんな仕事もミスや納期遅れは許されないものです。建築は工程が多岐にわたり、施主への引き渡し日も決まっているため、スケジュール通りに担当分を完了させないと、後工程に多大な迷惑をかけてしまいます。そのため、他社や他の職人さんとのチームワークも重要になってきます。「父の元から独立した職人や兄弟弟子から要請されたり、逆にこちらから助っ人を頼んだりすることもあります。同じ釜の飯を食った仲間同士、常に連絡を取り合って情報交換やバカ話をしたり仲はいいですね」と、日頃から同業者とのコミュニケーションを大切にしています。
施工は簡単なものだと1日で終わり、一般的な住宅の屋根なら2人で3日間で完了。新築1軒の屋根と壁で15日~1カ月くらいが平均的な工期です。依頼の多くは工務店からですが、個人宅でも雨どいを直してほしいとか、古い屋根をリフォームしたいという相談を受けて施工しています。
最初の1年は先輩に付いて覚えることばかりで、ハサミで鉄板をきれいに切れるようになるまでに3年かかると言われています。特殊なハサミなので技術がいるのですが、身に付けたら一生の財産になりますね。
「職人ですから、やればやるほど、頑張れば頑張るほど、やりがい度がアップしていきます。だから将来独立を目指す人も多いですし、実際独立してやっていける仕事です。私も入社してから暇だったことは無い気がします」という悠暉さん。どの業界でも暇になるといわれる2月でもコンスタントに仕事はあるので、もう少し人手がほしいとのこと。
長い目で見て、職人を育てたいとも考えているそうで、現在求人中。学歴は問わず、やる気がある人、手に職をつけたい人、自分の腕で切り開いていきたい人にはおすすめです。給料や休日は応相談なので、気になる人は直接電話をしてみてください。
業界の資格としては建築板金技能士というのがあります。学科と実技があり、制限時間内に、製図して板を切って、曲げたり丸めたりして形を作っていくものです。資格がなくてもある程度の仕事はできますが、自身の技術力を保証するものであり、資格取得のための勉強は現場でも役に立つに違いありません。仕事をしながらの資格取得も可能だし、なかなかおもしろそうな業界だと知りました。
<注意事項>
- 掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更、消費税率変更に伴う金額の改定などが発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。