「認定農業法人 合同会社よしだ農園」の代表・吉田啓記さんは、丹波篠山市で丹波黒枝豆や丹波黒大豆の生産に従事する“認定就農者”でありながら、農業とは全く異なる会社も経営しています。自身の経験を生かしつつ、先輩農家さんにも指導を仰ぎ、新しい情報も柔軟に取り入れながら「丹波地域をもっと盛り上げたい」と、日々忙しく動き回る吉田さんに、お話を伺ってきました。
大好きな丹波産黒枝豆が農業へと導く
子どもの頃から「起業したい」という想いを秘めていた吉田さん。社会人となり、アパレルメーカーや、大手運輸会社に従事するという日々を送っていましたが、機が熟し、通信販売と物流事業の会社を立ち上げました。会社経営の傍ら、自然を求めて、しばしば丹波に遊びに来ていた吉田さんは、丹波産黒枝豆と出合い、その美味しさに魅せられます。
毎年実りの秋を楽しみにするほどの丹波産黒枝豆の大ファンになった吉田さん。農業の経験は全くなかったのですが、黒枝豆があまりにも好きすぎて、2019年(令和1)には、地元・丹波篠山市の農家さんの元で生育修業を始めます。
そして翌年、「こんなに美味しい丹波の黒枝豆を、もっと多くの人に知ってもらいたい!」と、思いつくやいなや、友人から仕入れた丹波産黒枝豆を、試しに自身の会社の通信販売サイトで紹介してみました…。すると、あっという間に完売したのです!
“認定就農者”へゼロからの挑戦
種まきから自らの手で
「安心・安全で自分が納得できる黒枝豆を作れば、もっとお客さんに喜んでもらえるのではないだろうか?」という想いが沸き上がりますが、農家とは縁のない家庭で生まれ育った吉田さん。農地を借りることからスタートでしたが、「お客さんに喜んでもらいたい」という想いが実り、翌2021年(令和3)に、約3反の畑を借りることができ、黒枝豆の生産を開始します。
縁あって知り合った株式会社赤井農産の先代社長さんはじめ地元の方々からのアドバイスも得て、秋には無事収穫することができました。そして、自社の通信販売サイト、現地での販売と卸販売で、今回も完売させたのです!
黒枝豆を育てた農地は、1年間休ませなければなりません。そのため、前年と同じ生産量を担保する場合は、倍の農地が必要となります。新たに農地を探さなければならないと考えていた時に、一連の様子を見守ってくれていた赤井農産の先代社長さんから他の農地を紹介してもらって、無事、農地を拡大させることができました。
認定就農者として認定
農地の規模が大きくなれば、経費なども多くかかります。優遇措置を受けられる新規認定農家として認めてもらうために厳しい審査会(面接)に望み、昨年、2024年(令和6)、“認定就農者”の認定を受けました。
社会貢献も視野に
現在は、「認定農業法人 合同会社よしだ農園」を設立し、株式会社赤井農産の社長さんに相談し、さまざまなアドバイスをもらいながら高品質な黒枝豆・黒大豆の生産販売者としての実力を身につけている日々です。
従来のやり方を学びつつも、新鮮な視点で「効率よく改善できることはないか」と工夫に努力を惜しみません。
昨年は、農薬散布をドローンで行うという試みにチャレンジしました。ドローン購入に多額の費用がかかったものの、従来の散布方法よりも、水・日数・人員共に大幅に少なくて済むことが実証できました。もともとドローン免許を持っていた吉田さんですが、ドローンは機種によって免許が異なるため、今回は他の方にドローンパイロットを依頼。その後、すぐに自身も免許を取得し、次年度は自らドローンを操作して農薬散布を行うべく、準備を着々と進めています。
黒枝豆や黒大豆が規格外になってしまったら…
昨年は約1町の畑で黒枝豆を育てました。手塩にかけて育てた黒枝豆や黒大豆も、見た目が悪く規格外になるものも…。味に遜色がないものはSDGsの観点から加工食品への転用を行います。旬の時期に収穫したおいしい黒枝豆を冷凍加工し、タイミングが合わず購入できなかったお客さんに届けたり、不揃いや見た目が良くない黒豆を味噌に加工したりといった具合です。
豊かな土壌の丹波篠山の地で、自然の恵みを感じながら、栽培から加工、更には収穫祭まで担っている吉田さんに、大変な労力を要しますねと水を向けると「いいものが出来て、お客さんから『おいしかった』と聞くと、頑張ろう!という気持ちになるんです。丹波地域をもっともっと盛り上げたいですね。」と、笑顔と共に返ってきました。
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