JR福知山線柏原駅から国道176号を北へ10分ほど歩くと、「グリーンホテル 松風(まつかぜ)」(以下、松風)があります。1976年(昭和51)に開業してから約50年、ビジネスや観光、合宿などで訪れるお客さんに、くつろげる空間やサービスを提供しています。代表の足立武司さんを訪ねました。
始まりは些細な気付き
廊下には、地元・臼井邦昭氏の水彩画が
足立さんは、「松風」の二代目です。「松風」がオープンするまでは、初代のお父さんと共に、地元・丹波の料理屋やレストラン、料理旅館などに新鮮な魚介類や野菜を提供する仲卸を生業としていました。足立さん自身が、大阪・福島区にある大阪市中央卸売市場へ直接出向いて、新鮮なものや目新しいものを仕入れて、喜ばれていたそうです。しかし、近くに市場が出来たり流通の多様化が進み始めたりと、時代の変化を肌で感じるようになりました。お客さんが生産者や製造元から直接購入するようになると、仲卸業をこのまま続けられるのだろうかと悩み始めたそうです。
時代の風をキャッチ
1972年(昭和47)当時、食材を配達している中で、柏原には国や県の出先、大手企業の支社や工場が多くありながら、ビジネスマンが気軽に宿泊できる宿がないことに気付き、お父さんとともにビジネスホテル事業へ舵を切る決断をしました。
当時、首都圏ではビジネスホテルの開業が相次いでいましたが、「ビジネスホテルの需要があるかどうか…、仲卸をしていた経験も生かして宴会場も備えた宿泊施設にしては?」といった周囲の意見を受け入れ、大広間や大浴場もある「ビジネス旅館」として1976年(昭和51)に開業しました。
ツインルーム
ビジネス向けの宿は近隣の市町村にもない状況だったため、丹波方面に仕事で訪れるお客さんから喜ばれ、「丹波にも便利なビジネスホテルがある」と口コミで広がり、観光客の利用も増えて、半年もすると予約を断らなければならない状況に。地元のお客さんからは、「忘年会や歓送迎会ができる」と重宝がられ、宴会場も賑わいました。
映え写真が撮りたくなる公衆電話(実際に通話はできません)
ところが交通の便が良くなるにつれ、観光客は丹波を観光するも、宿泊はその先へという状況に変わり始めます。しかし、丹波や近隣地域の開発が進むと、ビジネスで訪れるお客さんの需要が高まり、開業から12年目に、ビジネス客に重きを置いた「ビジネスホテル」へと移行します。
柔軟な対応が人を呼ぶ
この日は丹波市のまちづくりを提案する大学生グループが宿泊
「松風」はビジネスホテルといえど“旅館”の良さも残しつつ柔軟に対応しています。広い和室の宴会場は、スポーツ関連の試合などで訪れた学生達の宿舎として人気。
30名収容の大広間
小学生が利用する場合は、子どもたちは大広間でみんなで頭を並べて休み、付き添いの父兄たちは、プライベートが守れるシングルルームで休むなどTPOに合わせた利用が可能です。
コインランドリーは2台設置
長期滞在のビジネスマンは、ホテル内に設置されたコインランドリーを利用できるので、持ち込む衣類も少なくて済みます。
ビジネスホテルで大浴場があるのは嬉しい!
手足を思う存分伸ばして浸かれる大浴場は、仕事で疲れた体を癒してくれます。
客室には空気清浄機も欠かせません
時代の流れに沿って、全客室での無料Wi-Fi接続や高画質・高音質ハイビジョンVODを無料視聴できるようにし、お客さんからも喜ばれています。
ピンチがチャンスに
TVリモコンには使い捨てカバー
コロナ禍を経て設備も変化しましたが、最も変わったのが、朝食のスタイルです。
以前の朝食は、1階ロビー奥のお食事処で自由に席を選んで食べるという一般的なスタイルでした。ところが、コロナ感染防止のため、マスクを外さなければならない朝食サービスを中止せざるを得なくなった際、何とか手立てはないものかと考え、客室で食べられるお弁当スタイルで提供することを思いつきました。
日替わりの「朝食ボックス」
利用方法はとっても簡単で、朝、お客さんがフロントで受け取るだけです。部屋に持ち帰ってゆっくり食べられるのはもちろんのこと、早く現場に入らなければならない人は、朝食用弁当として持っていくことができますし、他人の視線が気になっていた人も、客室で食べられると、「朝食ボックス」(無料)は大好評で、現在も継続しています。
お客さんに寄り添って
フロント
様々な業種のビジネス客は、勤務時間もバラバラです。夜遅くに機器メンテナンスなどで現場に向かわれる人や、夜中に仕事を終えてホテルに戻られる人、早朝に現地へ出発される人など、それらすべてに対応するため、フロント業務は一晩中休みなく稼働しています。フロント対応している足立さんは、「約半世紀続けてきて、今は生活の一部。ライフワークと考えています」。
時の流れを読み解きながら、常にお客さんへのサービスを第一に考えてきた「グリーンホテル松風」。今後の更なる変化が楽しみです。
宿泊は予約サイトからも可能ですが、連泊などで要望がある場合は直接電話するのをおすすめします。
<注意事項>
- 掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更、消費税率変更に伴う金額の改定などが発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。