「ブリティッシュモータース」は、英国車を含む欧州車の修理・メンテナンスに特化した会社です。2023年(令和5)、丹波市春日町に会社の拠点を移し、ツーリングなどのイベントや、全国の整備士を対象にした技術向上のための講習会を積極的に開催しています。
英国車、欧州車のメンテナンスに特化して顧客は全国から
「ブリティッシュモータース」の創業は1983年(昭和58)。英国の高級車・ジャガーの正規ディーラーに勤務していた現社長の父である創業社長の澤田孝治さんが、大阪で開業しました。その後、大阪の工場が手狭になったので、2014年(平成26)に神戸の魚崎浜に移転し工場を拡張。2023年に丹波市春日町に移ってきました。
2代目で現社長の澤田拓治さんは、自動車関係の会社に勤務した後、アメリカに語学留学、1992年(平成4)に帰国し、ブリティッシュモータースに入社しました。
澤田さんが毎日見ている里山の風景
澤田さんは、東峰、西峰、主峰の3つの頂からなる丹波を代表する里山「三尾山」など、山に囲まれた春日町国領の風景に一目ぼれ。丹波市春日町から丹波篠山市栗柄を結ぶ県道69号春日栗柄線(かすがくりがらせん)には、イギリスの田園地帯を走っているような爽快感があるといいます。「“この地を車で走りたいという人が絶対たくさんいるはず”と、最初にこの景色を見ながらドライブしたときに確信したんです」と移転のきっかけとなった2022年(令和4)当時を振り返ります。
年2回開催するツーリング会
全国から丹波にクラシックカーが集結
もちろん英国車の修理・メンテナンス・車検の需要はたくさんあり、全国のお客さんから依頼を受けていますが、丹波にはお客さんに喜んでもらえる環境があるので、サービスの一環として、オリジナルのルートマップを作ってツーリング会を実施することにしました。
ツーリング会は、2023年に移転してから春と秋のベストシーズンを選び開催し、イギリスをはじめヨーロッパのクラシックカーなどの愛好者たちに各地から集ってもらいました。
オリジナルのルートマップ
オリジナルのコマ図と呼ばれるルートマップは、交差点名やランドマークになる建物などが詳細に記されたもので、ガソリンスタンド、トイレの場所、休憩スポットや観光情報まで盛り込まれており、ツーリングを存分に楽しんでもらえるように趣向を凝らしています。
おいしいものマップもある
その他、コマ図のルートマップ以外にもグルメ情報が掲載されたオリジナルの冊子もあり、ドライブ&グルメを満喫できる内容となっています。
「皆様には綺麗な景色を見ながら、信号があまりなく渋滞もない丹波を気持ちよくドライブでき、おいしいものを食べて…と、満足してリピーターになっていただいています」と澤田さん。
全国からプロの整備士が集まる研修会も開催
研修会のようす
澤田さんが丹波に来てやりたかったことがもう一つありました。それは次世代への技術の継承です。
「自動車が好きなんです。新車もいいけれど古い車はもっといい。人の手入れに対して応えてくれるんです。一筋縄には行かないメンテナンスにやりがいを感じますね」と、クラシックカーのメンテナンスの魅力を語ります。
澤田さんは、昨年・2024年(令和6)6月に、自動車のメンテナンス技術を継承する工場が多く点在しているイギリスに視察に行きました。イギリスは自動車に限らず再生するのが1つのスタイルで、100~200年使うのは当たり前。日本は新しいものが一番のような気風があって、再生していく技術が伴っていません。イギリスでは、エンジン、ボディなど、いろいろな部位をメンテナンスする職人がいて、先輩が後輩に指導するトレーニングセンターがたくさんあります。それに引き換え日本では、次代へつなげるシステムがうまく機能していないという背景があると感じ、自ら研修会を開くことにしました。
「丹波ヘリテージトレーニングデイ」と名を打ち、第1回では「SUキャブレーターの理解と実践」のテーマで、昨年12月に研修会を初開催しました。
キャリア1年の新米から、50年を越えるベテランまで、英国車をはじめとする欧州車の整備士30人が西日本全域から集まりました。
講師には、澤田さん本人と20歳の頃から師事していたキャブレーターの職人で、一昨年まで現役で仕事をしていた93歳の師匠を招き、午前中は構造・分解という内容の座学、午後から実車への取り付けや調整といった実践を行い、リアルな現場での体験という機会を作りました。
「研修会を通じて、今後の若い世代のために新旧の職人同士のネットワークの構築に役立て会社内外に関係なく、経験や知識を教えてもらって技術を継承してほしいです。今後は、エンジン、ミッションなどとテーマを変えて、その道のエキスパートを講師にして、3カ月に1回くらいの頻度で開催できたらと考えています」。
代表取締役・澤田拓治さん
「参加していただいたベテラン整備士の方々にもそれぞれの地域で自らも研修会を開いてほしいです。一つの技術継承ブームができあがればいいと思っています」。
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