「株式会社 タケウチ未来製工」(以下、タケウチ未来製工)があるのは、JR福知山線・加古川線谷川駅から東へ車で5分ほど。川代恐竜街道(県道77号)と交差する道路の北側に大きな看板を掲げた場所が第2工場、更にその北へ少し上った道路の左側が本社(第1)工場です。ひょうご産業SDGs推進宣言事業として登録した「ecoリサイクル土のう ミライエ」の開発話なども伺いに代表取締役の竹内真泰さんを訪ねました。
家族で丹波に根を張る
出荷直前の有名ブランドの布製レッスンバッグ
竹内さんのお父さんが1970年(昭和45)に創業した「タケウチ縫工」が、「タケウチ未来製工」の原点です。竹内さんのご両親が縫製加工を生業としますが、当時、竹内さん自身は跡を継ぐことは考えておらず丹波市外で就職し、丹波市から通勤していました。ある時、お父さんが病気になり体調を崩したことがきっかけで、「家業を手伝ってもらえないだろうか?」といったご両親の想いを受け止め、2007年(平成19)に家族で家業を継ぐことを決意します。
高所作業用の安全ベルト
創業の翌年から縫製加工を開始し現在も続いている子ども用園児服は、主力商品ではありますが、2016年(平成28)からは、安全ベルト等の厚物縫製加工も始めます。その翌年・2017年(平成29)には「タケウチ縫工」を法人化し、竹内さんが代表を務める「タケウチ未来製工」へと引き継がれました。
「もったいない」が新製品の開発へ
約100枚の布を一度にカットできる自動裁断機
裁断工程で発生するハギレ
多くの布製品を生産する上で、生地を効率よくカットする自動裁断機を導入していますが、どうしてもハギレは出てしまいます。
第2工場の前に置かれたハギレ(紐)
ハギレとはいえ長さがある布は、野菜づくりや新聞、端材などを縛るのに重宝します。誰もがいつでも自由に持ち帰っていただけるよう第2工場の軒下に置いて、ご近所の皆さんに喜んでいただいていますが、日々出るハギレは大量です。どうしても廃棄処分をしなければなりません。
SDGsの観点から何とか再利用できないかと開発したのが布製の土のう「ecoリサイクル土のう ミライエ」(以下、ミライエ)です。
従来の土のうは、たいていは袋と中身(土や砂)を別々に保管しているため、災害時は急いで袋に中身を詰めるという作業の手間がかかりますが、「ミライエ」は従来土のうと比較し約1/4の時間で設置が可能となります。また、従来の土のうの使用後の片付けは、水分を含んだ中身を十分に乾燥しないと非常に重く持ち運びに苦労しますし、屋外でそのままにしておくと袋が破れ中味が散乱してしまいます。
「ミライエ」の袋口をシールするスタッフさん
「ミライエ」は、ポリエチレンの袋にハギレを詰め中心部に砂袋を入れて1袋が約11~12kgになるよう調整しています。袋の中身の構成は、ボクシングなどの練習で使用するサンドバッグをイメージすればわかりやすいかもしれません。
ポリエチレンの袋は防水機能を備えているので、中に水が入らず繰り返し使用できます。耐候性がありますが、保管時に防護カバーで覆うことで長期間の使用に耐えうる設計です。長期保管していても、緊急事態が発生したらすぐに取り出して使うことができるという優れものです。
製造は、地元の就労移行支援機関に依頼しており、ハンディキャップがある方の手で、丁寧に作られています。
製造・使用共にリサイクル土のうの「ミライエ」の取り組みは、ひょうご産業SDGs推進宣言事業として登録されています。
「ミライエ」は、丹波市のふるさと納税の返礼品としても取り扱われています。興味がある方は、サイト内の雑貨・日用品の防災グッズでも検索してみてください。
従業員も幸せに
「タケウチ未来製工」のスタッフは、現在、7名の従業員と竹内さんのご両親、竹内さんご夫妻、息子さんも合わせて12名で構成されています(2024年12月時点)。
ミシンを扱える日本の若者の減少に伴い、7名の従業員は全員が「外国人技能実習生」(以下、実習生)です。現在は、全員がベトナム出身です。実習生を受け入れるのは、日本人を採用するのとは大違い。竹内さんは毎回現地に出向いて、技能状況を見極め面接をします。採用が決まれば、採用対象者のご家族に業務内容などの詳細を説明し同意をいただいた後、採用契約を交わします。その後、採用者は母国で日本語を勉強したり手続きを進めたりと、実習生として来日するのは、採用からなんと約10カ月後というから驚きです。
ほとんどの実習生は、来日したら契約が満了になるまで一度も帰国しないそうです。それだけに、竹内さんは少しでも日本での生活が楽しめるよう、様々な工夫をしています。ご近所とのお付き合いを重視して、カタコトでもいいから日本語を話すように伝え、地域の防災訓練や夏祭りに参加します。ご近所でコミュニケーションがとれると、日々の生活も仕事だけでなく豊かになります。会社の行事でも、忘年会や着物姿で京都観光をしたり、カニを食べに出かけたりと日本らしさを感じてもらえるよう心掛けているそうです。また、1年に2回開催される日本語検定に合格したら手当を出すなど、会社の業務だけでなく実習生の未来も支える工夫も怠りません。
社内に掲げられた「タケウチ未来製工」の経営理念
実習生が、やっと優れた技術を身につけても契約期間が終わると帰国せざるを得ないという現状について伺うと、「決まっていることなので仕方がないと割り切っているつもりです。辛いなと思うところもありますが、彼らが帰国後、会社の技術リーダーや日本語通訳といった職についていたり、習得した日本語を生かして介護や食品加工の実習生として再来日している人がいるのを耳にすると嬉しいです」と返ってきました。
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