有機栽培・天日干しの赤ちゃん番茶に各種丹波茶、その味わいを全国に

有限会社 徳寿園

綺麗な空気と水、昼夜の気温差が大きい丹波の気候は、美味しい茶葉を育てるのに適しています。ここ丹波で、有機栽培でお茶の木を育て、自社工場で製茶し、オリジナルブランドで販売しているのが「徳寿園」です。家族経営だから大量生産はできませんが、関東方面から取り寄せるファンもいる銘茶ぞろい。さらに、国内でも数少ない茶道用の炭のメーカーでもあるのです。

子どもたちのために作った有機栽培の番茶

バラ詰100g、648円(税込)

徳寿園のロングセラーの一つに「有機栽培 天日干し 赤ちゃん番茶」があります。3代目となる社長の細見徳彦さんが、当時赤ちゃんだった自身の子どもに飲ませるお茶を、と考案したものです。完全有機栽培で栽培した茶葉は、夏の日差しをあびてたくさんのミネラルやカテキンを内部に蓄えます。その芽を摘んで天日干しした、自然のめぐみがいっぱいのお茶です。

熱湯でその都度淹れるのもよし、やかんでたっぷり沸かすもよし、「毎朝たっぷりやかんで沸かして、がぶがぶ飲める味」「緑茶だと眠れなくなるけどこれなら安心」「子どもがほしがる」「水出しでも飲める」という声が届いています。実際に飲むと、さらりとした味わいで、エグミはなく、時間をおいても味、香りともに変わりません。夏の熱中症対策、冬の風邪対策で水分補給の大切さが知られる昨今、このお茶なら安心です。

社長の細見徳彦さん

徳寿園は1945年(昭和20)から製茶業と木炭業を手がけています。それ以前、細見さんの祖父がお茶の栽培と当時の燃料だった炭や薪を扱う商売からスタートしました。農業に化学肥料や農薬が導入された時代になっても、農薬や化学肥料を使わずに昔ながらのお茶作りをしてきました。

細見さんは、高級茶葉の産地である京都での修業中、丹波茶の知名度の低さを実感していました。丹波に戻ったとき、「こんなに美味しいお茶を作れるのに…」と大きなジレンマを感じます。

販売している茶器類

昭和から平成にかけて、トラック便の増加など、流通が大きく進歩しました。全国どこでも配達や取り寄せができる反面、丹波の茶園にはデメリットが増えてしまったのです。日本人は新茶が大好き、新茶の便りが届くとこぞって買い求めます。でも、日本列島で新茶が一番にとれるのは九州で、4月初旬に出荷されます。丹波が新茶を出荷できるのは、5月。流通が発達したがゆえに、このズレが大きく響きます。

新茶という絶好のチャンスを生かせないなら、そこで勝負をするより、自分たちの強みを生かそうと発想を転換。当時赤ちゃんだった自身の子どもに飲ませるお茶として赤ちゃん番茶を商品化しました。パッケージはクラフト袋に手書きのロゴと文字、奥さんがお茶づくりへの思いを書きました。そのデザインは30年近く経った今も変わっていません。

農薬や化学肥料を使っていないお茶は、まず関東方面に広まりました。保育園などで子どもに飲ませるために採用するところが出て、いつの間にか煎茶を抜いて番茶がトップの売れ筋になったそうです。

5月の新茶、夏の二番茶、秋の三番茶、自然の味わいを生かして

天日干し生番茶 太陽のお茶 80g、540円(税込)

新茶にこだわらず、その季節の新芽を摘み、様々なお茶に仕上げています。「太陽のお茶」は、赤ちゃん番茶の焙じる前のお茶、つまり天日干しをしただけの番茶です。日の光をあびて乾いていく茶葉を見てひらめいたそうで、飲んでみると、日なたの香りと昆布に似た旨みがありました。

有機栽培丹波在来種 垣根茶180g、1,080円と大路柳180g、1,188円(各税込)

丹波の在来種は樹齢を重ねていることから、地中深くに根を張り、土壌のミネラル分をたくさん蓄えています。「垣根茶」は新芽と粉茶の部分、「大路柳」は葉の大きい部分を用いています。収量が少ないので冬には売り切れてしまいます。

有機栽培薫り熟成煎茶 山裾茶90g、972円(税込)

「山裾茶」は茶畑に積もった落ち葉が堆肥になり、その豊かな土で育ったお茶です。焙じた香ばしさのあとに、煎茶の甘みを感じる独特の美味しさがあるお茶です。

熟練の職人だけが作れる菊炭

細見さんのもう一つの大切な仕事は菊炭(くぬぎ炭)を焼くこと。菊炭は千利休が愛し、今もお茶席で使われるものです、10月から4月頃までは、表千家、裏千家の茶道用道具炭の炭を焼きます。クヌギは切り口が菊花のように放射状の割れ目ができていることから、炭の模様の通りに灰が残り、そこにも侘び寂びを感じるのです。

菊炭

クヌギの原木を切って土窯で約十日間かけて焼く菊炭。ガスの発生が少なく、火持ちがよいことから室内用としても人気で、脱臭・除湿効果もあるため、オブジェ風インテリアとして利用する人もいるようです。炭から出る木酢液は茶畑の土壌改良剤として使うほかに店でも販売。入浴剤として湯船に入れるとカラダが芯から温まります。

有機農産物JAS認証の安心して飲めるお茶、子どものために作ったお茶を、今は細見さんの孫たちが飲んでいます。毎日口に入れるものだからこそ、よいものを選びたい、そんな思いで買う人が多いですが、なんといっても味がいいのが長く愛されている理由なのでしょう。

実は筆者も大阪から丹波に行く度に、赤ちゃん番茶と煎茶を買いに立ち寄っていました。やっぱり美味しいから、というのが一番の理由です。

 

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