
2026年(令和8)1月、丹波市氷上町にオープンした「Switch.(スイッチ)」。以前倉庫として使われていた場所ですが、看板にあるのは店名だけ。道路沿いから窓越しに見える店内に、「カフェかな?」「レストランかな?」と、つい気になってしまいます。扉を開けると、高い天井の開放的な空間にゆったりと配置された席、カウンター奥で存在感を放つピザ窯、ソファ席の横には育成中の多肉植物。それらが自然に馴染んでいる世界観にわくわくしながら席につきました。
料理もお酒も自由に楽しめる店に

店主の髙橋渚さんは、京都のビストロなどで20年以上経験を積んできました。料理の腕を磨き、アルコールの知識を深めるなかで感じていたのが、ヨーロッパの「食事とお酒が自然につながっている文化」でした。料理に合わせてワインやビールを選び、お酒が料理を引き立てる。食べることと飲むことが、日常の大きな楽しみとして根付いていることに魅力を感じていました。そんな店を丹波でも作りたい…と開業に至ります。

髙橋さんが得意とするのは、フランスやイタリアの郷土料理。そう聞くと構えてしまう人がいるかもしれません。「ちゃんとした服で行かないと」「コース料理だろうか」と……。でも高橋さんは、「ヨーロッパの人のように、気軽に料理とお酒を楽しんでほしいんです」と言います。店名に料理のジャンルを入れていないのも、あえて「ピッツァだけの店」「ワインの店」のように限定したくないから。食事をしっかり楽しむ日もあれば、一杯だけ飲みに来る日があってもいい。そんな思いが込められています。
小麦の香りも香ばしいナポリピッツァ

大きなピザ窯に象徴されるように、Switch.のランチの主役はピッツァです。ナポリスタイルらしい薄めの生地ですが、特徴的なのが縁の部分「コルニチョーネ」。一般的に具材に目が向きがちですが、高橋さんが一番おいしいと思っているのは実はこの部分。「もっちりおいしい」を大切に、生地の発酵にこだわり、イタリア産の小麦の味がしっかり感じられるように仕上げています。

ピッツァは、「マルゲリータ」や「マリナーラ」、「クワトロフォルマッジ」といった王道メニューに加えて、季節ごとの限定ピッツァも登場します。春には、朝採れたけのこを使ったジェノベーゼや、ナポリの定番チチニエーリが人気だったそう。チチニエーリとは、トマトソースにシラス、ニンニク、オレガノを合わせた一枚で、シンプルながらシラスの旨みが感じられる一品です。

ランチタイムには、ビッツァにミニサラダとドリンクが付いた「ビッツァランチセット」(990円~)を用意。食後にスイーツを追加することもでき、ピッツァはテイクアウトにも対応しています。
前菜と好みの一杯から始まる、夜の楽しみ方

Switch.の冷蔵庫には、国内外のクラフトビールがずらり。海外はベルギーを中心にスリランカやスコットランド、ハワイなどの個性派が並び、国内は新潟や高知、福知山など各地のブルワリーの銘柄が揃います。

髙橋さん自身、ベルギービール専門店で働いた経験があり、個性豊かな海外ビールに魅了されていました。近年は、国産のクラフトビールの勢いにも注目。各地で新しいブルワリーが誕生し、それぞれの地域性や造り手の思いが反映されたビールが増えていると感じているそうです。福知山のブルワリー「Primary Barrels」との出会いもそのひとつ。おいしさはもちろん、醸造家の熱意にも惹かれ、店に取り入れています。

ワインは赤・白ともに約6種類を用意。フランスワインを中心に、試飲しながら選んだものが並びます。定番に加えて、その時々で入れ替わるものもあり、新しい味との出合いも楽しみです。

アルコールに合わせる料理は、生ハムや鮮魚のカルパッチョ、地元の野菜を使ったものなどが楽しめます。

グラスワイン(600円)と前菜3種盛り(700円)
前菜は3種盛り合わせ、6種盛り合わせがあるので、何を頼むか迷った時には、とりあえず「前菜盛り合わせ」がおすすめです。

まずは前菜と好みのグラスワインやビールを楽しみ、その後にパスタやピッツァ、あるいは「骨付き鶏もも肉のロースト」や「牛ランプ肉のステーキ」へと進むのもOK。コース料理(3000円~)も相談できます。
もちろんランチタイムからアルコールもOK。ドライバー役を決めて、昼からワインを一杯。そんな贅沢な休日の過ごし方もよさそうです。
趣味が高じて生まれた多肉植物コーナー

店の奥で目を引くのが多肉植物のコーナーです。育成用ライトに照らされて個性的な植物がずらり。もともと髙橋さんが趣味で育て始めたものですが、現在は「アガベ」を中心に育成・販売も行っています。植物イベントへの出店も続けており、植物好きのファンの人気を集めているようです。

料理、お酒、植物。一見するとつながりがないようにも思えますが、不思議と店の空間の中では自然に溶け込んでいます。好きなものを詰め込んだ結果として生まれた、この店らしい空気感なのかもしれません。「窯焼きピザの店」や「ビストロ」とひとことで言い切れないのも納得です。
ランチを楽しむ日もあれば、夜に一杯だけ飲みに立ち寄る日があってもいい。植物を眺めながら過ごす日があってもいい。Switch.という店名の通り、その日の気分に合わせて過ごし方を切り替えられる場所なのかもしれません。
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