
「養鶏場をやりたい」と脱サラして、神戸から移住してきた長谷川寿也さん、雅絵さんご夫妻。友人らの手を借りながら廃舎をリノベーションし、2026年(令和8)1月に開業しました。年中無休で目をかけ手をかけて育てた鶏が産む卵は「濃厚でおいしい」と評判。少しずつ丹波市内外に浸透しています。
餌やりも集卵もすべてが手作業

リノベーションして使えるようになった鶏舎
「丹波いちじま小さな養鶏場」では、田園風景が広がるのどかなエリア、市島町上竹田にある鶏舎で、1,000羽の鶏を飼育しています。「鶏舎はボロボロだったんですが、サラリーマン時代の仲間や高校時代の友人、職人さんにも力を貸してもらい、使えるように修繕しました」と代表の長谷川寿也さん。

ケージ飼いしている鶏

上下2段で4列1列250羽ずつ1,000羽を飼育
鶏の種類は「ボリスブラウン」。産卵率が高く、卵を産むのに特化した優秀な鶏です。日本で「国産の赤玉卵」として売られているものは、ボリスブラウンが産んだものがほとんど。この養鶏場では、鶏の餌にこだわることで、卵のおいしさを追及しています。

自分たちで作ったお米を飼料に混ぜて使用

養鶏用のカキの殻はおやつで与えることも
基本の餌は、配合飼料ですが、それにいろいろなものを加えたり、おやつを工夫したりすることでバランスをとっています。配合飼料のなかには、パブリカやくず米などのほか、殻を固くするためのカルシウム源としてカキの殻も加えています。おやつには、細かく刻んだ季節の野菜も与えるそう。冬は近隣のニンジン農家「キャロットガレージ」のニンジンやニンジン葉、大根葉なども。「ニンジンの葉は大好物ですよ。黄身の色もオレンジっぽい黄色になります。味の特徴は黄身のコクと白身のぷりぷり感でしょうか」と長谷川さん。

小さな養鶏場の強みは、すべてが手動であるということ。大手の養鶏場は餌やりも集卵もすべてオートメーション化していますが、ここではすべてが手作業。朝から昼までに産む鶏が多いので、夏は5時半から、冬は6時半からの集卵作業と餌やり、昼過ぎからはおやつをあげます。「餌のくいつきが悪く、元気がない鶏がいたら一目瞭然。別のケージに移して様子を見ます。糞が下痢っぽいときに、ヨーグルトを上げたら症状が解消したこともあります。一羽一羽見てあげられるのが、小さな養鶏場の良さですね」と話します。
鶏糞は、発酵させて近隣の農家に使ってもらうので、市島町内でうまく循環しています。


大きさや重さで卵を仕分け
集卵後は、選卵の機械で、大きさを分けてパッケージに入れます。青垣町の「道の駅あおがき」、氷上町の「JA丹波ひかみ とれたて野菜直売所」、西脇市の「北はりま旬菜館」、須磨区の「ナナ・ファーム」など、丹波市内外4カ所の直売所に配達します。
養鶏場を探して丹波に移住

長谷川さんは、神戸市内にある大企業に勤務していましたが、いずれは脱サラして就農したいと考えていました。闘牛の牛主も視野に入れ、沖縄や徳之島、宇和島にも足しげく通ったそう。いろいろ調べるうちに養鶏にたどり着きました。「牛は無理でも鶏なら飼育できるかも」と、養鶏ができる場所を探していました。神戸市内には養鶏場はなく、新規就農のために淡路島などにも土地を探しに行きましたが、新たに作るのは難しい。ちょうどその頃、丹波市に廃業する養鶏場があることを知り、そこをリノベーションすることになったとか。
養鶏はまったくの素人。独立するために、サラリーマン時代から、週末ごとに丹波市内にある養鶏場に通い修業をしました。2025年(令和7)5月から、鶏舎を修繕、同年6月末で退職、8月には開業のめどが立ち、9月には転居。翌年1月に開業しました。
周りの人にも助けられて、滑り出しは順調でしたが、販路には困ったそう。「1,000羽の鶏が一日に産むのは約900個。それを当日売り切りたいのですが、規格外のものが大量に余ったことがあって。そのときも全部買い取ってくれる事業所に助けてもらい命拾いしました」と寿也さん。
夫婦の名前をとって商品名に

「丹波赤玉【寿(ことぶき)】」など、主な商品ラインナップ

「丹波赤玉【雅】」(12~13個入り)
商品は、大玉の「丹波赤玉【寿(ことぶき)】」、「丹波赤玉【雅(みやび)】」。縁起の良い商品名は、寿也さん、雅絵さんのご夫妻の名前から。「”おいしい”といわれるのがやはりうれしいですね。”お菓子作りに最高”と使ってくれる常連の方もいます」と寿也さん。

私も早速自宅でいただいてみました。黄身は弾力があってプリプリ。白身にも力があります。見るからにおいしそう。卵好きなので、まずは卵かけごはんでいただきました。最初は普通に全卵を混ぜ合わせて、ごはんにかけて食べました。黄身が濃厚でおいしい。おすすめのしょうゆもちょっぴり甘くて好みの味。次に、寿也さんが大好きな食べ方にならっていただきました。まずは黄身と白身を分けます。白身としょうゆを混ぜたものを、ご飯に入れて、混ぜ合わせます。その上に黄身を乗せ、さらにしょうゆを加えます。黄身は混ぜ合わせずにすこしずつ崩して食べます。こちらもなかなかいけます。新鮮だからこそ楽しめる食べ方ですよね。
自動販売機での販売に力を入れたい

鶏舎近くにある新鮮卵の自動販売機
「動物相手の仕事なので、休みがないのは覚悟の上、苦がなく楽しいことばかり」と笑う寿也さん。もっと地域の人に、この養鶏場のことを浸透させたいという思いがあります。平日・週末によって、販売数にムラがあるので、販売数を安定させるためにも、今後はもっと近隣の市民に知ってもらって、いつでも買うことができる、鶏舎近くの市道八日市今中線沿いにある自動販売機での販売に力を入れていきます。
<注意事項>
- 掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更、消費税率変更に伴う金額の改定などが発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。
