丹波のお店とお客さんをつなぐ架け橋 にじいろタブレット

多彩なアルコール類と手作りの料理でくつろぐ市島の夜

Food&Drink-10-

静かな市島の夜、JR市島駅前のロータリーを北に進むと、老舗料理屋の一角にほんわかと明るい灯がともっています。ここが2023年(令和5)7月にオープンした「Food&Drink-10-」です。
オープンからまる1年が過ぎて、常連さんがくつろぐ場所として定着してきた夏のある日、取材に訪れました。

幼い頃から料理好きな店主が切り盛り

店があるのは、江戸時代に創業した歴史ある料理屋「福田屋」の一角です。迎えてくれたのは店主の吉良天花さんとお母さん。この店をオープンした時、天花さんはまだ18歳だったそう。「この辺りには遅くまで開いている店がないので、ちょっとお酒を飲んでひと息つける場所があればと思いました」と、当然お酒は飲めないので、そこはお母さんがサポート。それにしてもその若さでずいぶん思い切った決断です。

「福田屋は父の実家なんです。もともと叔父がバーをやっていたスペースが空いていたので活用しようと思って…」と天花さん。幼い頃から調理場をのぞいては、祖父や叔父に料理のことを聞いていたそう。「なかなか子どもがそんなことを聞かないですよね、おもしろそうに見えたのでしょうか」とお母さんは振り返ります。

福田屋は正統派の日本料理店なので、旬の野菜、新鮮な魚、そしてきちんととっただしが常にある状態です。天花さんは、小さい頃から自然に舌が肥えていったのだろうと想像できますね。成長するにつれて料理への関心は高まり、高校進学時には迷うことなく調理師免許がとれる高校に進みました。その頃から自然に福田屋の調理場を手伝うようになり、高校を卒業した今は平日は福田屋を手伝い、週末の夜だけ自分の店を開けています。

家庭料理のエッセンスたっぷりのやさしい味

「だし巻き卵」400円

和食が専門ですが、高校時代に洋食も中華も、そして製菓もマスターした天花さん。常連さんが多いので、「今日は何がある?」「おなかがすいているから、おなかにたまるものを」「食べてきたから軽いアテを」というようにオーダーが入るそう。季節を問わず人気なのが、おダシたっぷりの「だし巻き卵」。福田屋で毎日ひいているダシは、すべての料理のベースになる本物の味。このダシを使ってしっとりと焼き上げた「だし巻き卵」は格別です。甘めが好きな人は、リクエストに応じてもらえます。

おでん3品 400円

11月から3月くらいの寒い時期にはおでんが定番メニュー。2日前から仕込んで、じっくりダシの旨みを含ませます。箸ですっときれる大根ややわらかいスジは絶品。持ち帰りもOKです。

「10PIZZA」900円

ピザは、外はカリッと中はモチモチの生地に、自家製トマトソースか照り焼きソースをたっぷりと。具材は日によって変わります。

「砂ずり」420円

焼き物はフライパンで蒸し焼きにして、外はこんがり中はしっとり。塩レモンでいただく「砂ずり」は絶品です。

席につくと出される突き出しは、野菜の和え物やつくねなど、家庭料理のようなやさしい味で隠れた人気メニューだとか。
製菓も学んだ天花さんは、和菓子と洋菓子作りも得意です。お客さんの誕生日にケーキを差し入れたり、依頼があればお祝いのデコレーションケーキも作ります。

豊富なドリンクメニューがうれしい

お母さんがセレクトするドリンクメニューは秀逸。「ちょっと目線を変えてめずらしいお酒を用意しています」と、飲んだことがない味を試したくなるお酒好きの心理をわかっておられます。果実たっぷりサワーは、果物を凍らせて氷代わりにしたもので、パイナップル、レモン、ブドウ、イチゴ、キウィ、桃など、主に季節の果物が登場。サワーを飲みながら解けた果実を食べていきます。甘酸っぱくてさっぱりした口あたりは女性にも人気で、たしかに満足感いっぱいになります。ノンアルコールでもOKです。

店主と同じ名前の「天花」という秋田の日本酒は、やさしい味わいで飲みやすいのです。

「紅乙女STANDARD」。イラストレーター江口寿史ラベルに惹かれて注文する人多数。胡麻風味の焼酎はロックで風味を味わうのがおすすめ。
「電気ブラン」は、ちょっとクセのある味が特徴のリキュール。ウイスキーみたいな風味がおもしろいと、ツウに人気です。

「丹波 シェリーカスク」。丹波市春日町の醸造所、四季酒造のもので、シェリー樽で熟成させたウイスキーです。メープルシロップを思わせるやわらかな甘味が特徴。

バー時代の名残で店内にはウイスキーのミニボトルがずらり、山崎や白州のように今はなかなか手に入らない高級ウイスキーもあって、ウイスキー談義がはずみます。お客さんはほとんどが近所に住む常連さん。知り合い同士がここで再会したり、お父さんの友達が来て盛り上がることも。「近所の人が仕事を終えたあと、夜に気軽に集まれたり、一人でちょっと気分転換したいときに立ち寄れたりできたらと思います。楽しくしゃべって飲んで、くつろいでもらえるのが一番。お客さんから教えてもらうことも多くて、私もとても楽しいです」と天花さん。

カウンターだけの小さな店だからこそ、天花さん親子や常連さんたちと気軽におしゃべりして飲める店。地元のくつろぎの場、社交場としても注目です。

ドリンクメニュー
・生ビール 500円
・ウイスキー 450円~
・果実たっぷりサワー 480円

 

<注意事項>

  • 掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更、消費税率変更に伴う金額の改定などが発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。