大事な日を快適に、キレイな着物姿で過ごせるよう、力を注ぐ着付け師

着付け 結樂

日常的に着物を着る機会はほとんどないという方も、例えば子どもが生まれて、お宮参りや七五三、入学式や卒業式など、セレモニーでは着物を選ぶ方も少なくないのではないでしょうか。自分では着られないし、ましてや着物一式の大荷物と手のかかる幼子を連れて美容院などに行くのもひと苦労…。そんな方におすすめしたいのが、自宅まで来てくれる「出張着付け」です。着付け技技能士1級や福祉車いす着付け師の資格も持ち、丹波市を拠点に活動する「着付け 結樂(ゆうらく)」の片山結子さんにお話をうかがいました。

子育てに忙しいときこそ和装を、出張着付けを

片山さんは、「昨今、和装離れは進んでいますが、お客様にとって大切な日に、大切な着物を着て、安心して過ごしていただきたい。一人ひとりのニーズに合わせた、よりキレイに見える着付けをさせていただきます」と、話します。「着物を着る機会って、私もそうでしたが、子どもが生まれたら急に増えると思うんです。しかも、まだ手のかかる頃。例えば、授乳中だったりすると、赤ちゃんは何時間も耐えられませんし、未就学児の子どもはじっと待っていられません。でも、自分の家で着付けてもらえたら、着物一式抱えての移動は不要ですし、子どももいつもの環境でお仕度ができるので、ぐずったりすることも減ります」と、出張着付けのメリットを話します。

出張先は、基本的に兵庫県内や京都府の一部地域で、丹波市内から車で片道2時間程度の場所であれば、「お客さまご指定の場所まで行きます!」とのこと(交通費・出張費別途)。丹波市内は、青垣町・春日町・市島町以外は出張費無料。
片山さんは、着付けてくれるだけではなく、着物は持っているけれど、どういった小物や道具が必要なのか、また着ていく場所やシチュエーションに自分の着物は適切なのか、といったことにも、事前にLINEなどで相談を受けてくれるので、安心です。

片山さんが着付ける際に心掛けていることは、「お客様のご要望をうかがいながら、その方にとって最適なスタイリングを提案し、すっきりキレイに見せる」こと。
着物は、立体的な洋服と違って平面の布です。それを着る人の体型に合わせて、「着付け」という技術でつくりあげていきます。
「着物が映える着せ方を骨格から読み解き、体型を大きく変えることなく、個性を生かしながらスタイリングするようにしています」と、片山さん。

着物は、着ていく場所やシチュエーションなどによって、着付けるポイントが変わります。例えば、お茶席の場合、着丈は短めで足さばきが良いように。式などに列席する場合は、着崩れしにくく、苦しくならないように。成人式などの前撮りの際には、写真映えすることを重点に置きます。
「着慣れているご婦人から、“脱ぐのがもったいなかったわ”というご感想をいただいたときはとても嬉しかったですね」と、笑みをうかべます。

着付けを教える活動から、「着付ける」仕事に

片山さんが着付けの道に進み始めたのは、こんな経験からでした。「独身時代に友人の結婚式に参列した際や、子どもが小さいときのライフイベントで着物を着付けてもらったのですが、すぐに着崩れてしまったり、納得のいく仕上がりになったことがなくて。もうこれは自分で勉強するしかないなと思いました」。そして、子育てがひと段落してから、丹波篠山や西脇の着付け教室に通い、お免状も取得。やがて、月に1、2回の頻度で、着付けを教える「丹波きもの遊び」という活動をはじめました。

その活動は、「気軽に着付けを学ぼう」というのが主旨で、生徒さんが自分の着物を持ち込んで着付けを学び、レッスンのあとは着物を着てみんなでランチをしながら、着物や着付けに関するお話をする、というもの。また、公民館や自宅で、もっと本格的に学べる教室も開催。同時に、呉服屋や斎場で着付ける仕事もこなしていくなかで、片山さんは、「人に着付けを教えるよりも、着せることの方が好きかも」と感じ始めました。そこで、さらに技術を高めるべく、着付け技能士の資格取得を目指し、着付け師対象の先生のもとに通うなどして、学びを深めました。

2020年に1級合格。それまで勤めていた会社も辞めて「着付け 結樂」を立ち上げ、出張着付けの仕事に専念することにしました。「“丹波きもの遊び”で着物や着付けに興味を持ってくださった方が、本格的に学びに来てくださったり、ご自身で着られるようになった生徒さんを見て、“教える”ことへのやりがいもありましたが、私自身が“着付ける”技術を高めることの奥深さに魅せられていきました」。

さらに、片山さんは「福祉車いす着付け師」の資格も取得しました。通常、お客様は立ったままで着付けていきます。立っている状態を維持できない、車いす利用の方の場合は、座ったまま着付ける必要があります。福祉車いす着付け師は、大事な着物や帯を切ったり縫ったりせず、何か特別な道具を使ったりもせずに、お客様が座ったままでも着付けることができる技術を身につけます。車いす操作や身体のことも学ぶため、「車いす利用者の方になるべく負担なく、安全に、特別な日の着物を諦めることなく楽しんでいただくために役立つ資格です」と、片山さんは話します。
ストレッチャー型の車いすを利用する、重度な障がいをお持ちの方にでも着付けられるそうです。ときに、ご家族や介護士、施設の方などの協力が必要な場合もあります。

着付け師の学びは終わらない。高みを目指して技術研鑽と挑戦を続ける

「着付け」という仕事は、短時間で身に付くものではなく、資格を取ったあとも、経験を積みながら学び続けていく、とても奥深い世界だと片山さんは言います。「着付けの技術が完成することはないと思っています。まさに、生涯勉強。毎回100%の仕上がりを目指して着付けを行いますし、お客様は喜んでくださいますが、私自身が“完璧”とか“満足”と思ったことはありません」。反省点や課題を見出して改善し、次に生かしていく。その繰り返しで、技術が積み上がっていくようです。

3年前からは丹波市の成人式会場で、丹波市協力のもと、着付け講師仲間と「おなおし係」のボランティア活動も行っています。「着崩れている方が結構多くて…。ささっと手直ししたり、お手洗いのときにどうしたらいいのか分からない方にお伝えしたりしています」。
「お手伝い」としてだけではなく、人が着付けたものを直す難しさや、どこが着崩れやすいのかなどの勉強にもなるそうです。
「決して無理やり直したりはせず、まずお声掛けしてからお直しします。今後も続けていきたいので、お困りごとがあったら、会場で「着付けお直しコーナー」を見つけてみてください」。

さらに近い将来、丹波の豊かな自然や寺社仏閣を生かした、結婚式の前撮りのプランニングという活動もしたいと考えています。京都で花嫁の着付けと撮影アテンドをした経験から、それを丹波でも行いたいと思うようになったそうです。
「丹波には美しい神社やお寺がたくさんあるので、それらを生かし、カメラマンさんやヘアメイクさんといったプロと一緒に、お客様の一生の思い出を美しく彩るプランをつくりたい」と、語ります。

「お宮参り、七五三…入学式、成人式、結婚式…など、お客様ご自身やご家族の成長のたびにご用命いただけるような、お客様の人生に寄り添った着付け師でありたい」と、生涯着付け師として生きていく覚悟で、今後も活躍の場を広げていきます。

 

<注意事項>

  • 掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更、消費税率変更に伴う金額の改定などが発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。