大切な家を雨風からしっかり守り、次世代へと繋ぐ「瓦」

有限会社依藤瓦店

家全体の防水性を高めるのはもちろん、断熱性や通気性にも長けた瓦。「有限会社依藤(よりふじ)瓦店」(以下、依藤瓦店)は、そんな瓦を専門とする工事業者です。瓦専門の職人として長年培ってきた技術を生かし、次世代へと住み継げる家作りを担っています。「丁寧」をモットーに進める瓦工事について、また最近新たにスタートした解体業についても伺いました。

丹波市にて育まれた技術

1995年(平成7)、丹波市にて創業した依藤瓦店。現在技術管理者を務める依藤佑弥さんが3代目となり、お祖父様からお父様へと事業を受け継いで今に至っています。主な事業内容は、新築の屋根工事、瓦の葺き替え、瓦の修繕の3種類で、とくに最近は葺き替えと修繕がメインに。長く住み続けるうちに屋根瓦にズレが生じ雨漏りにつながる例もあるそうで、「瓦は施工後は基本的にはそのままで問題ないのですが、基礎の部分や防水シートの劣化などもあるので、20年に一度程度はメンテナンスするのをおすすめしています」と依藤さんは話します。

3代目の依藤佑弥さん

また、住宅だけでなく歴史的建造物の瓦工事も手がけ、丹波市を中心に京阪神からもさまざまな依頼があります。
「城下町や宿場町などの伝統的建造物群保存地区は、建物の高さや色使いなどに制限が設けられているだけでなく、瓦の形や模様の指定もあるんです。それほど、瓦は建造物の美観を左右するものだということですよね」(依藤さん)。

だからこそ、依藤瓦店が人一倍こだわるのが丁寧な施工です。瓦は整然と揃うことで美しさがより際立つ一方、少しでもずれたり曲がったりしていれば「揃っていないな」とすぐに気づくもの。そのうえ、一度施工すれば数十年そのままで過ごすことになるため、雑な仕上がりだった場合は長年それを目にする羽目に……。

職人の技術力の差が美観に大きく影響を及ぼすこの業界。「とにかく丁寧に。それを第一に考えて施工しています。僕自身、揃っていない屋根瓦を見かけると、そのたびに残念な気持ちになりますので」と依藤さんも気合いを入れます。ミリ単位で1枚1枚繊細に重ね合わせて仕上げる依藤瓦店の屋根瓦は、まさに一直線でぴしりと正確に揃っています。

住宅に瓦を採用するとさまざまなメリットがある

最近は、コスト面から屋根瓦ではなくトタン屋根を選ぶ人が増加しているそう。たしかに瓦と比べてコストは抑えられ、シンプルでモダンな雰囲気も演出できるので魅力ではありますが、それでもやはり屋根瓦のメリットは他とは代え難いのだと依藤さんは話します。

第一のメリットは、通気性と防水性を兼ね備えていること。瓦は複数枚を組み合わせて使うため瓦と瓦の間に小さな隙間ができ、屋根裏の熱や湿気を効率よく放出する仕組みになっています。一方で雨が降ったときには瓦自体が吸水しながら特殊な形状で水はけを促し、雨漏りもありません。

第二のメリットは強度が抜群であること。屋根にたくさん雪が積もっても問題なく、人が登って歩いてもびくともしません。これほど強靭だからなのか、歴史的建造物の部材の中で瓦だけが現存する事例(飛鳥時代に創建された元興寺など)もたびたび見受けられます。

製造から数百年は経っているという瓦。山中で発見

また、トタンは数年でサビたり塗料が剥がれたりする一方、瓦は一度丁寧に葺けば頻繁にメンテナンスしなくてもいいのも大きなメリットといえます。さらに雨が降ったときの雨音も屋根瓦なら抑えられ、心地よい暮らしが育めます。

これらのメリットに依藤瓦店が得意とする丁寧な施工が加われば、住まいの安心感が格段に上がりますね。

4月からは新たに解体業もスタート

2023年4月からは解体業にも進出。依藤さんの作業がない日に「何か別のことができないか」と考え、知り合いに声をかけて解体業の手伝いを始めたのがきっかけです。

繊細な作業が必要となる瓦の施工とはひと味違い、壁をダイナミックに壊したり大量の瓦礫を処理したりする解体業には大胆さが求められます。「どちらも体を使う仕事ですが、作業の考え方が全然違う。それが楽しいなって思っています」と、依藤さんは微笑みます。

現在は不動産業や工務店からの依頼を受け、古くて誰も住んでいない住宅などの解体に赴くほか、一般の方からインスタグラムのDMで依頼されることもあるそう。使っていない住宅をどうしようかと困っている方は、一度見積もりだけでもお願いしてみてはいかがでしょう。

「いつまでも初心を忘れずに仕事に取り組み、依藤瓦店という屋号を次世代へと繋いでいきたい」と奮起する依藤さん。これまで培った瓦の施工技術に、解体業という新たな挑戦が加わり、これからますますパワーアップしていくに違いありません。

 

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