人と人を繋いで新たな可能性を生み出していくグラフィックデザイナー

Plantarium

 

 

チラシやカタログ、ショップカードなど主に印刷物のグラフィックデザインを手掛けるPlantarium(プランタリウム)の安田真理さんは、6年ほど前に美容師からデザイナーになった異色の経歴をお持ちです。しかし、職種が変わっても、仕事をする上で大切にしていることは変わらず一貫していて、順調に顧客のリピート率を上げています。

クライアントやその商品、サービスを知り尽くしてデザインする

顧客は市内や近隣市の飲食店やサロン、自治体など多種多様ですが、安田さんは依頼を受けるとまず、どういう思いで事業をしているのか、今回売り出したいモノはどういうコンセプトなのか、今後どのように事業展開したいのかなど、詳細に話を聞くそうです。「必要に応じてオリジナルのヒアリングシートを使って、ご本人が気づいていない本当の目的や思いなどを引き出していきます」と、コンサルティング要素も含めたヒアリングを大切にしています。

クライアントに気に入ってもらえるよう単にデザインをするだけではなく、クライアントの先にいるターゲット層やエンドユーザーにどう見えるのかといったことも重視します。時には、可能な限りそのターゲット層に近い友人知人にクライアントの商品の感想を聞き、デザインに取り入れることも。「私個人の考えや感覚ではなく、お客様が目指しているターゲットに近い人たちの意見を取り入れることで、商品の訴求ポイントがぐっと見えてくることもあるんです」と、安田さん。

また、安田さんはチラシなどを作って終わりではなく、事業者と事業者を繋げる役目もしたいと、クライアント同志を引き合わせたり、紹介するなどして積極的に働きかけます。
「何のためにチラシを作るかといったら、やっぱり集客や売上アップですよね。だったら私も、そこに繋がるような仕事の進め方をしたいんです」。
安田さんは、デザインに取り掛かる前には、事業者の商品やサービスを徹底的に調べるので、「たぶん私、その会社の営業や広報もできると思います」と言うほどです。

でも、単に商品やサービスを売りたいだけではありません。「クライアントが自分たちの商品やサービスを通して世の中に伝えたい思いや考え方そのものに共感し、チラシという手法でサポートをしたい」のだそうです。

例えば、某ネイルサロンのリーフレットでは、子育て世代のお母さんに子どもの足爪の切り方から教えてあげたい、巻き爪に苦しむ人を救いたいという店主の思いに共感したり、某整骨院のチラシでは、子ども足の発育の大切さを伝えたいという院長の力になろうという気持ちで制作したと言います。

美容師からデザイナーへの転身

安田さんは中学生の頃から美容師になることが夢でした。高校卒業後は通信制の美容専門学校で資格を取得し、丹波市内の美容院に勤務。しかし、ひどいアレルギー症状に悩むようになりました。結婚をきっかけに、使用していたステロイド剤の投与をやめることにしたのと同時に、美容師の仕事も辞めることに。そんなとき、アレルギー用の漢方薬を処方してもらっていた漢方薬局から、美容部員として働かないかという誘いを受け、パートとして働き始めました。

そこが一つの転機となります。販売する商品を売り出すためのキャンペーンのDMを担当することになりました。しかし当時、安田さんはデザインおろか、「パソコンをまともに使ったこともなければ、ワードやエクセルも使えなかったんです。本を見ながら独学で、なんとか仕上げました」。このとき大事にしたことは、「お客様にいかに納得して商品を購入していただけるか、どういった情報を提供すれば、喜んでもらえるのか」、という点だったと振り返ります。

そうこうしているうちに子どもが2歳半くらいになった頃、自分のキャリアについて悩み始めます。いつか美容師として自分の店を持つことが目標でしたが、小さな子どももいるなかで難しくなった今、自分には何ができるのだろうかと模索しました。
そこで思いついたのが、スクラップブッキング。写真好きな祖父が安田さんの結婚式のときに、自分が撮りためた写真にメッセージをつけてプレゼントしてくれたのを思い出し、スクラップブッキングに興味を持ちました。そしてインストラクターの資格を取得し、学校や自治会、親子活動、子育て学習センター、サークル、商業施設などでのイベントで活動し始めました。そして、集客するためにチラシや名刺が必要だと気付きます。

このときはパソコン教室に少し通い、Wordで作成しようと考えましたが、ある方から「イラストレーターというソフトを使ったほうがいい」と教えてもらい、学校に通う時間もなかったので、基礎を少し習い独学でイラストレーターを使えるようになり、自分のスクラップブッキングレッスンのチラシなどを作成しました。「やり始めたら面白くてハマってしまったんです」。その後、様々なご縁があり、チラシのデザイン制作の依頼が少しずつ入るようになりました。「はじめは、大した技術もないのに、どうしよう…という状況だったのですが、人と話すことが好きで、お願いされたことに応えたいという思いが先立つんです。この商品やサービスの良さは何だろうとか、クライアントが一番打ち出したいことは何だろうかといったことを念頭にデザインするのですが、よくよく考えると、美容師の仕事でも、お客様がどうなりたいのか、どう見せたいのかといったことをよくヒアリングし、それを叶えることを大切にしていました」と、自分の思考の原点は同じだったことに気付きました。

PTA役員などの地域活動も仕事に反映させる

人の期待に応えたいという思いは、仕事以外でも発揮されます。息子さんが保育園に通っている頃から、PTA役員やクラブ活動の会長、市民プラザ立ち上げ時の委員などを依頼されることが多く、「頼まれたら嫌と言えないんです」と、安田さん。様々な地域活動の経験をもとに、「学校や自治体が、市内の事業者のことを知る機会をもっと作りたいんです。子どもは、学校や家庭だけではなく、地域全体で育てていく必要があると思います。そのためには、地域の事業者や年配の方々の人脈やご協力が必要。私がそういったところを少しでも繋ぐお手伝いができたら、と思っています」。

人と接することが好きで、自分が提案したことでお客様に喜んでもらえることが一番うれしいと話す安田さん。美容師、化粧品販売員、デザイナー、PTA役員など、様々な経験を得ていますが、安田さんは常に、人の悩みや希望を聞いて、何をどうすればもっと良くなるのか…といったことを考えて仕事をしたり、周りの人と関わったりしています。
仕事も地域活動も、物事を点で考えるのではなく、どことどこをどう繋げばもっとうまくいくのかという視点を持って、よりよい結果に導いています。

 

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