国産木材の活用で森林の循環を守る企業の新しい取り組みは「ネコ用グッズ」

株式会社 木栄(もくえい)

株式会社木栄は、1973年(昭和48)に製材所として創業しました。その後、山林事業、建築業、森林整備事業へと事業領域を拡大。現在はグループ会社が連携して、森林を守り育てることからその木を使った建築までを一貫して行っています。近年では森林の大切さを伝える事業も積極的に展開。間伐材を使ったペット用グッズの販売も開始しました。

森林とともにある企業として…

人口の都市集中と農村の過疎化が進み、放置された山林が荒廃していることは大きな社会問題です。森林に関わる企業として、そういった現実を目の当たりにしてきた「木栄」は、大切な里山を守るために様々な事業に取り組んでいます。
製材を事業とする「木栄」を中心に、山の整備や管理、バレルサウナの販売を行う「森のわ」、自然素材の家づくりにこだわった新築やリフォーム、ログハウス販売を行う「栄建」、廃校と木材の利活用施設「FOREST DOOR-旧神楽小学校-」がグループ会社です。

グループ会社のメリットは、木材の生産から加工・販売、さらにはそれを活用する施設まで一貫して行えること。効率的に地域資源の価値を高め、「『循環する里山地域』をデザインできる」と、同社は考えています。植林・伐採・管理を連続して繰り返すことで森が循環し、バランスを保つことができるのです。

スギ花粉症に悩んでいる人は多いですが、戦後植えられたスギが70年を経て大きく育っています。これを伐採して使うことで山には新たな植林が可能になり、次に植えるのは花粉が出にくいスギです。この循環が進めば花粉症対策にもなるでしょう。

 国産及び兵庫県産木材の利用を促進

新築住宅の建設が減少傾向にある中で、幼稚園や高齢者施設などを新築する際に、木を使う施設が増えているそうです。木にこだわる建築士さんは、湿度を整える調湿効果や肌触りの良さを評価されています。

木造住宅で育った子どもの集中力が持続するとか、高齢者の睡眠の質が良くなるとか、科学的にエビデンスが出ているのも、木材利用を後押ししているのかもしれません。ヒノキから出る香り成分にリラクゼーション効果があることが知られるようになって、住宅以外の商品でも目にすることが増えていますね。

災害用ログモジュール

同社で商品化されているものとして、B級品のスギ材で作った「ログモジュール」があります。組み合わせによって形が自由に作れるため、災害の際の避難所の仕切りとしても使われています。壁、ベッド、棚などの形にできるもので、いざという時のために行政などに働きかけています。

国産のヒノキは質が良く、中でも西日本産はより優れた性質を持っているそうです。特に丹波は、冬の厳しい寒さと夏の暑さという寒暖差に加えて、きれいな水に恵まれ、良い土壌があります。同社の足立栄逸社長が「丹波の山は宝の山」と表現するように、有効に活用しないともったいないですね。

製材の状況や木材の在庫を見学して選べる

スギ、ヒノキを中心とする材木に対応している同社。構造材はJAS認定商品を扱っています。対応できる指定地域産材は、兵庫県木材証明制度認定事業体、京都の木認証機関登録事業体、京都市域産材供給協会生産事業体、奈良県産材証明制度認定事業体、びわ湖材認定加工事業体です。

造作材は平均含水率約15%以下に管理しているため、寸法安定性が高いのが特徴です。本実・相じゃくり・目透かし等、施工箇所に対応した加工形状にすることが可能で、住宅会社からも信頼を得ています。

磨き丸太・変木・天井板等、銘木に関しても、豊富な在庫を実際に見て選ぶことができます。社寺建築用材等、特殊なものも用意できるという、専門企業ならではの強みがあります。

 ネコちゃん用ハンモックベッド

同社の新しい取り組みとして、ネコグッズがあります。きっかけは迷いネコを保護した時に、端材を使ってDIYしたことでした。自分たちが毎日仕事をする中で木に癒されているならネコも同じではないかと。そしてできたのがスギとヒノキを使ったハンモックベッドです。固定すればベッドとして使え、上下を逆にするとハンモックのようにゆれる仕様で、ネコの遊び道具にもなります。シンプルなデザインのため、どんな部屋に置いても違和感がありません。

2枚の板は国産のスギ、2本の棒は国産のヒノキを使用しています。棒の部分をヒノキにしたのは、スギよりも丈夫なため安全面を考慮してのことです。調湿、抗菌、消臭効果に加えて、やわらかい木材なので、ケガ防止の役割も。
そして、布もスギやヒノキの間伐材から作った自然の繊維で、毛羽立ちが少なくて敏感肌の人にもよいとされているもの。洗濯も問題ないので清潔も保てて、ネコにとっても安心できる素材です。

はじめてネコたちの前に置いた時、様子見の数分を経てみんなでゴロゴロ、しまいには取り合いをするほどで、想像以上の反応に喜んだそうです。
事前購入型クラウドファンディングで、150人から178万円を集め、2023年の12月に達成。今後もECサイトでの販売に力を入れたいとのこと。担当者は、「次はネコタワーを作りたい」と意欲を燃やしています。自宅にキャットウォークを付けるなど、ネコ用に家をリフォームする人もいるほどですから、きっと喜ばれると思います。

商品を発送する際に、緩衝材として入れているヒノキのかんなくずは、ネットに入れてヒノキ風呂にしたり、下駄箱の消臭剤にしたり、二次利用できます。「ゴミを出さないものづくりをしたい」「不要になった木は回収して自社の山に埋めれば、自然に還ります」と、担当者の言葉のはしばしに、環境に対する思いを感じました。木栄のこれからの活動にも注目ですね。

 

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