目の肥えた食器好きがこぞって選ぶ、美しく、機能的な木工小物

TANBANANBA 木のしごと

あたたかな風合いの無垢の木に、エッジの効いたシャープさを加え、洗練された木工作品を生み出す作家が丹波市にいます。「TANBANANBA 木のしごと」を屋号に活動する難波行秀さん。東京や大阪などの都市圏にあるセレクトショップや、店主の審美眼で品ぞろえする雑貨店・食器店などで販売されています。各地のクラフトフェアや百貨店での催事でも人気の高い難波さんの作品は、どんな場所で創作されているのでしょう。生まれ育った実家近くに構えた工房を訪ねました。

最良を追い求めて行きついた、用の美

一度使うとほかのものでは満足できなくなる人も多いカトラリー各種は、小さい子どもから年配の方まで、幅広い層に愛用されています。カレー用、スープ用など用途に合わせて大きさも形もさまざま。レンゲは、「麻婆豆腐を食べやすいスプーンが欲しい」というお客さんからの要望で生まれたもの。共通するのは、どれもとっても軽くて持ち手が三角形で、細くて持ちやすい!「昔は太めだったんですけど、使いやすさを究めていったらだんだん細くなっていきました」と、1mm単位で改良を重ねたというだけあって、まるで紙のような薄さです。

さらに秀逸なのが、フォーク。食材がからみやすくなるように、先端をより薄く、鋭く削ってあってパスタも食べやすそう。「機能的にはステンレス製をイメージして作っています。でも、圧倒的に木製のほうが軽い」と、いいとこどりを実現させた難波さんのフォークは、まさに機能美。

難波さんは、高校卒業後に専門校で木工の基礎を学び、木工所などで修業。2007年(平成19)に独立して丹波の地で工房を構えました。当初は椅子やテーブルなどの無垢の家具を手掛けていましたが、やがて木製小物のニーズが高まり、現在の主力商品に。「木製品は、一般的にはベニヤを使ったものが多くなっていますが、やはり切り出した無垢の木を使ったものを作りたかったんです」、と力を込めます。

効率性も叶えつつ、独自色を出していく

ご自身もお気に入りのお皿は、ふちのデザインを少し変えて異なった趣に仕上げました。彫刻刀を使って溝を一つずつ彫っていくうちに、オリジナルの文様が完成します。

これらの皿類もとっても軽く、日常づかいしやすそう。

こちらも人気のあるバターケース。大と小があります。ふたがカチッと密閉される感覚が心地よく、バターが酸化しにくくなるのもうれしいポイント。さらに、ふたの裏側に磁石がついていて、付属のバターナイフが収まります。

新作は、コーヒーの豆を計る「コーヒーメジャー」。2021年(令和3)4月に大阪のセレクトショップで行われたコーヒー道具展に出展依頼があり、それに向けて制作したものです。コーヒータイムがより楽しく、心地よくなりそう。

難波さんの工房には、最近新しい機器が導入されました。丸い皿やコーヒーメジャーなど、円形をより効率的に作るために役立つ木工専用のろくろ。作業効率が一気にあがるので、数をこなせるようになるのだとか。「そのうえで、どうオリジナリティを出していくかが大切だなと思っています。自由な発想でこれからも自分の色を出していきたい」、と難波さんは意気込みます。

ケアをすれば長く使えるのも、木工の良さ

今は小物制作が中心ですが、リクエストがあれば家具も手掛けます。そのための型が工房内にはたくさん。「無垢の木でできた家具は、ベニヤ製のものとは違うよさがあります。使い込むほどに味が出て、ケアをすれば次の世代にも繋いでいけると思います」。

家具だけではなく、小物類も状態によってはアフターケアをしてくれるそう。カトラリー類を気に入って使っているお客さまも多く、「小さなお子さんが強く噛んで割れてしまったスプーンも、修理させていただきました」。

食器類は、使っていくうちに白っぽくなってきたら、オリーブオイルや米油など植物100%のものでオイルケアをしましょう。より長く使い続けることができますし、自分でケアをするほど愛着も増します。

幼少期から図工好きだった少年は、モノづくりを生業とすることを目指し、紆余曲折ありながら、唯一無二の木工作家になりました。「木工食器は難波さんのものが好き…」というファンもいるほどに。「今後も、自由な発想でいろいろなものをつくっていきたい」、と話す難波さんの作品は、自身のHPでも購入できるので、チェックしてみてください。

 

<注意事項>

  • 新型コロナウイルス感染症拡大予防のため、店内でのマスク着用、手指の消毒、ソーシャルディスタンス等に配慮しています。ご協力をお願いいたします。
  • 掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更、消費税率変更に伴う金額の改定などが発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。