丹波の奥様方御用達の洋品店でそろえる“アシケンルック”

レディースファッション アシケン

戦後から三代続く洋品店「レディースファッション アシケン」は、元は紳士服がメインのお店でした。丹波エリアの奥様方が夫の衣服を見立てに訪れ、やがてご婦人たちの要望に応えて婦人服も扱うように。その後、三代目の蘆田亜津子さんが後を継いで婦人服専門店へ。現在は、お母さまのまり子さんと二人で店を切り盛りしています。亜津子さんは、大阪の量販店で衣料品売り場やマーケティング理論を学び、バイヤーも経験しました。それらの知見を生かし、女性の体形や着こなしなどの悩みを解決するコーディネイト提案を得意としています。

視覚効果でスタイルよく見せる似合わせを提案

少なくとも月2回、そしてシーズンごとの展示会で、さまざまなアイテムを仕入れてきます。年配のお客さんが多いので、洋服は明るい色目で、着ていて気分が上向きになるような、上品なものを選ぶように心がけているそう。また、デザインだけではなく、着心地や着たときのシルエットも重視するのもポイント。

こちらのコーディネイト、一見ふつうのトップスとロングスカートに見えますが、スタイルよく見える工夫が随所に施されています。トップスは白一色ではなく、センターに向かってラインが入っていることで、視線が中央に集まります。

プリーツのロングスカートは、サイドに切り返しが入っていて、デザインも正面部分と少し違っていることで、細く見える効果があるのだそう。

「同じ商品を大量に仕入れるのではなく、小さいメーカーでも気に入ったものを1点ずつ仕入れています。お客さんの“こういうのが欲しい”というご要望に合ったものを探したり、“あの方に似合いそうだな”とお顔を思い浮かべながら仕入れています」、と話します。

左側のAラインのワンピースは、身幅は広くゆったりしていてとても着やすいだけでなく、ウエストと裾は絞り気味のデザインなので、スッキリと着こなせます。

右側のチュニックは印象的な切り返しのデザインが、胸元をほっそりと見せてくれます。「視覚効果の高いデザインを選ぶことで、若々しさをまとうことができます」と、おすすめポイントを教えてくれました。

ボトムスは試着を重視。身体のラインが目立ちにくい、こういったワイドスリムパンツがおすすめなのだとか。「歳を重ねると、足が極端に細くなりすぎたりしますが、ヒップラインは下がって幅が出てきます。このタイプのパンツだと、そういった気になる部分が目立ちにくくなるんです」。大阪の百貨店に勤務していた頃、レディースのインナーウエア販売も経験しているので、女性の体形の変化も熟知し、ボディラインを整えるところから提案できるのが亜津子さんの強みです。

シチュエーションをイメージして組み合わせる

亜津子さんは、お客さんの洋服を着ていく場所や目的も考慮し、コーディネイトを提案しています。例えばこちらは、「息子の彼女や奥さんと食事に行くとき用を想定してみました。華やかなデザインのトップスが素敵ですよね」。

綿100%で着心地よく、袖付けはゆったりしつつ肘まわりに絞りがついているので腕が細く見える効果も。「イベントやハレの日に着ていくお洋服が自分のなかでしっくりこないと、その日一日すっきりしませんよね。お客様が気に入った洋服にたどりついていただけると、私たちもとっても嬉しいんです」。

こちらは、自宅にお友達などお客さんを迎えるときを想定。シルク混のブラウス型ワンピースでゆったり楽に着こなせますが、丁寧に仕立てられた襟元やサイドなどがキチンとした印象を与えます。

「お客様が着たいシチュエーションや目的をうかがいながら、喜んでいただけるコーディネイトを提案したいと思っています。今まで着たことがなかったラインのものを試着して、“うわぁ”っと新しい自分に出会えたような笑顔を見られたときは、すごくやりがいを感じます」と、亜津子さん。

ゆったり過ごせる店内で、ゆっくり洋服選びを楽しんで

押し車や車いすなども通れるほど広々とした店内には、日常着からハレの日の洋服、かばんやスカーフなどの小物をはじめ、いろいろなアイテムがそろっています。「地元のお客様が多いからこそ、なるべく同じものを置かないようにしているんです」と、品ぞろえのこだわりを話す亜津子さん。

リピーターさんが多く、通りがかりに入店され「お話ししに来たわ」なんていう方も多いのだとか。お話しだけなんて…と気を遣う方は、いくつあっても困らないハンカチや靴下などもそろえているので、気兼ねなく利用できそう。

こちらはご高齢の方コーナーの一角にあるリラックススペース。「休憩したり、お話ししたりしながら、ゆったりした時間を過ごしていただきたいと思って、設けました」。天気のいい日には、大きな窓から差し込む光も心地いいですね。

店内には、まり子さんの趣味である習字や苔玉も展示しています。「どこで習っているの?などと聞かれたりして、会話も弾みます」と、まり子さん。

地域になくてはならない存在に

店の前は通学路。毎朝子どもたちの姿が見えるレディースファッション アシケンでは、地元の小中学校の制服なども扱っています。「毎年春になると新しい子たちが来てくれます。“入学しました、これからよろしくお願いします”なんてご挨拶くださる親御さんもいらして。子育ての悩みなんかをこぼして帰られるんです。そういう日常の何気ないやりとりができる場所として存在し続けられたらいいなと思っています」と、亜津子さんは目を細めます。

まり子さんが絵手紙を習い始めたこともあって、10年ほど前から続けている手書きのダイレクトメール。それまではパソコンで文字を打って作っていたそうですが、お客さんから好評で、「ずっととっておいているのよ」なんていう声もあり、「やめられなくなりました」と笑うまり子さん。文章は亜津子さんが書き、季節のイラストはまり子さんが描き、合作で仕上げています。

亜津子さんは、地域の情報や介護情報、他にも電子マネーのアプリの入れ方などもおさえるようにしているのだとか。「お客様に聞かれたときに答えられるようにね。おせっかい精神です」と笑います。

購入した洋服だけではなく、手持ちの洋服のお直しの紹介や、自前の服を持ち込んだコーディネイトの相談にも応じてくれるそう。

「長いことこの場所で商売をやらせてもらっているので、これからも地域の方々のお助け場みたいな存在になれたら」と、ふたりは、柔らかい雰囲気で今日もお客さんを迎えています。

 

<注意事項>

  • 新型コロナウイルス感染症拡大予防のため、店内でのマスク着用、手指の消毒、ソーシャルディスタンス等に配慮しています。ご協力をお願いいたします。
  • 掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更、消費税率変更に伴う金額の改定などが発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。