工業用品を手作業で生み出す製罐（せいかん）業を生業とする「株式会社タケイチ工業」（以下、タケイチ工業）が、一般家庭用に石焼き芋機を開発。堅牢性、携帯性、利便性など隅々までこだわった焼き芋機「石焼き芋っくん」は、誰もがおいしく焼けると話題です。なぜ石焼き芋を？ どんな焼き加減に仕上がるの？ など気になることを直撃してきました。
図面から起こして工業用品を作る金属加工会社
製罐業として40年以上の歴史を誇る、タケイチ工業。関西で創業し、4年前に「より広い場所で作業ができ、搬入搬出も不備なく行えるように」と丹波市へ移転しました。
製作するのは、主に大手機械メーカーの工場などで使用する工業用製品。メーカー側が用意したベースのデザイン画をもとに、どこにどんな長さのものが必要か、素材は何がいいかなどを考えて手作業で図面を起こします。その上で鉄などの金属素材を図面通りに切り出し、一つひとつ繋ぎ合わせて形にしていきます。
ほとんどが大手工場で使用する製品とあって、少しでもミスがあれば大事故につながりかねません。そのため、作業の正確性や確実性、判断力が常に求められるのはもちろん、緻密な作業への集中力も並大抵のものではありません。
「日本では製罐業の職人がどんどん減ってきているのですが、せっかくこれほどの技術があるのですから、できるだけ次世代に繋げていきたい。若い世代の方と一緒に技術を守っていきたいですね」と代表の小堀健一さんは話します。
蜜たっぷりとろっとろに焼ける「石焼き芋っくん」
オプションアタッチメント「釜ピザっくん」を取り付けた「石焼き芋っくん」
そんなタケイチ工業が、工業用品でなく一般家庭用に設計・開発したのが「石焼き芋っくん」です。もともと、災害時に電源がなくても使える丈夫な家庭用コンロを作ろうと思いつき、開発をスタート。試作を続ける中で小堀さんが大好きだった焼き芋作りにもぴったりだと気づき、方向が定まりました。
「石焼き芋っくん」で試し焼き中
ここ最近の焼き芋ブームで、スーパーでも紅はるかやシルクスイート、紫いもなど、さまざまな種類のさつまいもが並ぶようになりましたが、自宅で焼き芋にしようにも温度管理が難しく、お店のような蜜たっぷりに焼き上げるのは至難の業。筆者も蒸し器で蒸したりオーブンで焼いたり、電子レンジで試行錯誤してみたりしたものの、どれも仕上がりはいまいちでした。
一方この「石焼き芋っくん」で焼いた紅はるかは、ただ焼いただけなのにまるでスイートポテトのような濃厚な甘味とねっとりとした食感に！ 下段に薪をくべて加熱し、上段に石を敷いてさつまいもを焼くのですが、ほどよい加熱状態になるよう段の高さを何度も調整して仕上げたそうです。
「構想から4、5年ほどでようやく形になりました。当社で培ってきた技術を全て投入し、丈夫で長持ちする1台を作り上げられたなと思っています」（小堀さん）。
その言葉通り、発売以来さまざまな地域から問い合わせが続々。ネット通販1台42,800円（送料・梱包費込み、タケイチ工業にて直接引き取りなら38,800円 ※鉄板セットもあり）という手に入れやすい価格も好評で、「おいしい焼き芋が食べたいけれど業務用コンロは高くて手が出ない」という方々からも支持されています。
焼き芋だけでなく災害時にも大活躍
堅牢性に特化したのは、もちろん万が一の災害時に備えてのこと。阪神大震災の被災を経て、どれだけ“火”が大切なのかを思い知ったと話します。
「石焼芋っくんは、3mm厚さの鉄板をしっかり溶接して作っているので、大きなものが倒れてきても問題なし。また背が低いので足場の悪いところでも使いやすく、炊き出し用の大きな鍋も安定して置けます。別売りのアタッチメントを変えれば鉄板料理やピザも焼けるので、一家に一台備えて損なしです！」（小堀さん）。
小さくて幅を取らないサイズ感なので、使わないときに邪魔になりにくいのもうれしいポイント。取り出して使用する際も省スペースで、家族やご近所との気軽なバーベキューパーティにも活躍します。
万が一の備えでさらに安心！家を守るアイテム
ほかにも、同社のものづくり技術を生かした災害対策グッズとして、家の柱や家具を支える建築用補強具「ステプロ」も開発。突っ張り式の補強具では対応しきれない大きな地震でも「ステプロ」ならしっかり支えられ、家や家具を倒壊から防ぎます。
例えばこのように柱と梁を繋いで基礎となる部分を強化したり、
古い家屋の角に設置して壁が崩れるのを防いだりと、取り付けられる場所はさまざま。工務店に依頼して取り付け箇所の判断及び施工をしてもらうのもよし、取り付け箇所が決まっているなら市販のビスで自分で取り付けてもよしです。
さらに、2023年9月7日（木）・8日（金）の2日間、神戸国際展示場で行われる産業総合展示会「国際フロンティア産業メッセ2023」にも出展が決定。「石焼き芋っくん」や「ステプロ」を実際に見て触れられるいい機会です。気になる方はぜひ訪れて、使いやすさや丈夫さを実感してみてはいかがでしょう。
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