国産備長炭で新鮮な国産鶏をいかに美味しく焼くかに自分流を込める

焼とり 枯たん

2022年(令和4)4月、柏原町にオープンしたばかりの「焼きとり 枯たん」。大阪で12年間腕を磨いた若き大将・常吉志郎さんが満を持して丹波に凱旋、独立開業しました。「せっかく地元に帰ってきたので、ゆっくりやっていければ」という言葉とは裏腹に、満席の日が続くことも少なくありません。大将がハマった焼きとりの魅力とは何か、おうかがいしました。

焼きとり一本を究めるには一生かかる

取材に訪れたのは開業して1カ月ちょっとの6月。お客さんの要望やひらめきでメニューはすでに4回も書き換えました。「自分の店なんで、すぐにそういう対応ができる気楽さがいいですね」と、常吉さん。冷凍ものではない、新鮮な生の国産鶏を仕入れることにこだわりますが、特に銘柄やブランド鶏には縛られません。
「大阪の店ではそういう鶏も使ってましたが、やはり高いですしね」と、あくまでも地元の方が気軽に立ち寄って、「おいしい時間」を楽しんでもらいたいと話します。

焼きとりの世界では、「串打ち3年、焼き5年、炭一生」という言葉があるくらい、経験値がものをいいます。焼きとりは1本で完成品。その1本に対して鶏を順に刺していくその打ち方によって焼き方が変わり、焼き方によって炭の組み方が変わるのだそう。常吉さんは手取り足取り教わったわけではなく、師匠の背中を見て学んだり、自分で試行錯誤、トライアンドエラーを繰り返しながら、「自分流」を身に付けていきました。

自分次第で技も美味しさもどんどん向上する職人仕事に没頭

焼きとり業界に足を踏み入れたのは、大阪にある建築の専門学校生だった頃。アルバイト先が焼きとり店でした。卒業後は建築業界に入り会社員として勤めましたが、働き方に違和感を覚え、2年ほどで退職。相談に向かったのが、アルバイト時代の焼きとり店で、「師匠」と慕っていた6歳上の先輩でした。そして師匠の店で働き始めます。お客さんと直接向き合える飲食店の働き方が自分に合っていると気付き、焼きとりの世界にのめり込んでいきます。

師匠は常吉さんが入社後、早々に独立し、常吉さんが後を継ぐような形で様々な業務を任されました。「師匠は自分で考えながら行動し、より良いものを生み出す人。自由気ままに楽しく生きている姿がめっちゃかっこよかった。ずっと師匠の背中を追いかけてここまで来ているという感じです」と、話します。

 次は焼肉屋がメイン業態の飲食店に転職。大阪府下に100店舗ほどもある大手で、様々な業態があるなか焼きとり店は当時1店舗。店長としてメニューの開発にも積極的にかかわります。「すごく自由にさせてもらいましたね。常にどうしたらもっとおいしくなるか、お客さんに喜んでもらえるかを考え、どんどん提案していました」。

このときに、焼きとりだけではなく様々な飲食業界の人と接したことで、焼きとりの面白さに改めて気付きました。
「焼きとりは、その人が出るんです。いわば、握る人によって味が変わるすし職人と同じです」。焼き加減、塩加減、炭の火加減など、感覚が左右することが多く、簡単に人の真似ができる世界ではありません。まさに、職人技。毎日、自分の「技」を究めるべく、串の打ち方、焼き方、炭の組み方などを研究。自分なりの「焼きとり道」を突き詰め、焼きとり店を5店舗にまで拡大させました。

「秒」単位で見極め、お客さんに出すときがベストの仕上がりに

そうこうしているうちに、コロナ禍が襲います。上のお子さんが小学校に上がるタイミングでもあったため、地元丹波に帰って独立することを考えました。テナントを探していた頃、義母が経営していた串揚げ店「紬」を閉めることになり、その店を引き継ぎました。

「正直、焼きとり店って大変なんです。鶏を仕入れて切って、串に刺して、焼いて…と手間が多いし」と、苦笑。その日の天気や注文内容次第で、焼き方や炭の組み方を変えたり、焼いている間も常に火の状況をチェックしなくてはなりません。お皿に乗せてお客さんが食べるときに「ベストな状態」になるタイミングで火から引き上げます。その頃合いを見極めるため、一瞬の隙も許されない緊張感。「でも、大変だからこそ、面白い。ゴールがないからこそ、続けられるんだと思います」。

店内は「紬」の居ぬきなのでほぼそのままですが、食器にはこだわりました。立杭焼の作家さんのものを使用。焼きとりに彩りを添えてくれる強い味方です。

「本音は、自由気ままにのんびり生きたいんです。月の半分くらい休んで、畑仕事したりとか」。そう考えて行きついた場所が、地元・丹波でした。師匠のような生き方を目指すものの、その思いに反して多忙な日々が続きます。「でもやっぱり、お客さんに“なんか違うな”と褒めてもらえたら嬉しいし、義母の店“紬”時代からのお客さんが寄ってくださるのもありがたい」と目を細めます。今後、仕入先開拓をしながら、常にメニューをブラッシュアップして、ますますお客さんの期待に応えていきます。

 

<注意事項>

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