小中学生の子どもたちは、どこで髪を切っていますか？近所の理美容店を利用している方も多いことでしょう。一方で、発達障がいの子どもは初めての店を怖がって、入店も椅子に座ることもできず、あるいは店側から断られるケースもあるため、散髪に苦労していることをご存知でしょうか。サカイヘアーサロンの酒井泰成さんは、そういった子どもが理美容師との対話と練習を繰り返しながら、やがては理美容院店で安心して髪を切ることができる状態にしていく「スマイルカット」という取り組みを行っています。
それぞれの子どもの特性を知って対応する
酒井さんによると、発達障がいの子どものなかには、知らない人が刃物を向けてくることに恐怖を覚えたり、聴覚過敏の場合はドライヤーやバリカン、ハサミの音も大音量に聞こえて不快に感じてパニックを起こしたりするそうです。髪を切ってさっぱりして心地よい空間であるはずの理美容店が、そういった子どもたちにとっては、「怖い場所」になってしまいます。また逆に、店側が対応できないため断られてしまうことも多いのだとか。
結果、親が自宅でヘアカットをせざるを得なくなるわけですが、小学生のうちはかろうじてできても、中学生になると身体も大きく、力も強くなり、親の手には負えなくなるケースもあると言います。
「お母さん方はとてもご苦労されています。もう“助けて”といわんばかりの切羽詰まった状態で問い合わせをしてこられた方もいらっしゃいました」、と酒井さんは親の気持ちに寄り添います。
店に来ることができない子どもの場合は、自宅や通っている学校などに酒井さんが出張してカットをします。来店した場合でも、いきなり散髪台の前に座って切り始めることはありません。発達障がいは、人によって障がいの特性が異なります。事前に好き嫌いや苦手なことなどを知りつつ、子どもと話しをしたり、様子をうかがいながら、時間をかけて心が落ち着くまで待ちます。場合によってはソファの上で、あるいは玄関の外、店の端っこでうずくまりながら切ったこともあるそうです。「その子が“切っていいよ”と言ってくれるタイミングや場所で切っています。なので、初回は切れないことも。回数を重ねてその都度対応を変えてトライします」。
最終的には、店に来てもらって椅子に座ってカットすることを目指します。達成すると、髪を切るとさっぱりして気分が良くなることを知ったり、本人の“できた”という自信につながるのだと酒井さんは言います。「小さい頃から慣れさせておくことも大切だと考えています。中学生になってはじめて連れていこうとしても、なかなか難しい。限界まで我慢する必要はないので、相談してほしい」、と言葉に想いを込めます。一方で、まだこういった対応をしてくれる理美容店は少ないことが大きな課題でもあると、話を続けます。
「切っている最中に思わぬ行動をとる可能性もあるので、一歩間違えると怪我につながります。危険を避けるために受け入れを断る店があるのも理解できます。しかし、困っている親御さんが多いことも事実。一人でも多くの理美容師が発達障がいの理解や知識を深め、対応の仕方を学んで、受け入れが増えていくことが必要なんです」と、理美容業界への働きかけもはじめています。
美容部門はお母さんが担当
サカイヘアーサロンは1960年（昭和35）頃、酒井さんの祖母・はまこさんがはじめ、現在は両親と一緒に店を切り盛りしています。
母・悦子さんは美容も担当します。顔マッサージと顔そりで透明感のある素肌に導く美容法です（1回4,000円）。「月に1度通ってもらったらお肌の再生機能が高まって、健康的な美肌になると思います。おうちでの簡単なお手入れ方法をお伝えしますよ」と、丹波市のメーカーが販売する天然鹿革のピーリングクロスを使ったセルフケアも教えてくれました。
化学薬品を一切使わず、ニホンジカの皮を伝統的な製革技法でつくったクロスを湿らせ、洗顔後に肌をなでるだけで、古い角質や毛穴の汚れを取り除き、新陳代謝を促してくれるそう。酒井さんの左手で試していただくと、肌につるつる感＆透明感が…！週に数回の使用で効果の持続が期待できるそうです。
理美容業界とは無縁だった悦子さんは、嫁いでから勉強し、資格も取得しました。「お父さんやはまこさんに“がんばれ、がんばれ“って背中を押されながらここまでやってこられました。家が仕事場でもあるので、理美容師をしながら家事や育児もできたので、よかったなぁ、って思ってます」、と回顧します。
親子三代で続けてきたヘアーサロンは、小さなお子さんから年配の方まで幅広い対応が可能な、地域のなくてはならない存在です。スマイルカットに対応できる店が少ないこともあって、市外からのお客さんを担当したり出張も多い酒井さんは、「今後も一人ひとりに合わせたサービスを家族で提供していきたい」と、決意を新たに語ってくれました。
※表示価格は全て税込
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