障がい者が自立できる仕事や生活を支援する

レジリ合同会社

職業訓練校を運営する「レジリ合同会社」は、2021年(令和3)1月に設立。同年12月には障がい者の就労継続支援B型事業所「もくもく農園」とグループホーム「ステップホーム」を立ち上げました。「働きたいのに、働く場所がない、どうすればいいか分からないといった障がい者の方々を支援、応援し、就職や自立に結びつけることが使命」と話す、代表の山本真義(まさよし)さんにお話を伺いました。

職業訓練から就職につながる場所を丹波で起業

山本さんは、もともと大阪市内の職業訓練校に勤務し、就職支援の仕事に携わっていました。中には障がい者手帳を持っていたり、心療内科などの医師に勧められて相談に来る方も多くいたそうです。「長時間労働やセクハラ、パワハラなどで辞めた人の中には、そういったことが原因で心の病になってしまった中途発症の方もいて、障がい認定を受けている方もいました。そういった方々は職業訓練を受けたからといって、すぐに就職できるわけでもないという現実があります。せっかく一生懸命勉強して、知識を身に付けた人を就職につなげるためにはどうしたらいいのか…というモヤモヤがありました」と、山本さん。

あるとき、兵庫県立但馬技術大学校から丹波市での職業訓練をしてほしいという依頼を受けます。大阪と丹波の往復をするうちに、休耕地や空き家が多い丹波の実情を知り、また農業を通じて社会参加を目指す「農福連携」に可能性を感じはじめました。やがて会社を退職し、知人が運営する、就労支援やグループホームなどを手掛けるNPO法人で経験を重ね、準備期間を経て、丹波市でまずはIT技術やウェブデザインなどを学べる職業訓練校をスタートさせました。

「職業訓練で終わるのではなく、就職に結び付け、自立してもらうことが大切だと考えています」と、山本さん。そういった思いを職業訓練の受講者に話したところ、共感してスタッフになる人も出始め、春日町下三井庄の空き屋と出会ったことで、農業とグループホーム構想が進みました。納屋や休耕地も使え、母屋も広かったことが決め手だったと言います。ここは男性専用で、女性専用のグループホームは柏原町柏原にあります。ともに定員は4名。日常生活の支援や就職支援も行います。グループホーム利用者で農業の仕事を希望される方は、就労支援B型としてもくもく農園で従事しています。もくもく農園には丹波市近隣から通う方が多いそうです。

卒業ありきの支援が、真の自立につながる

農園は下三井庄のグループホームのそばにある水田のほか、5分ほど歩いたところにも田畑があります。有機栽培を実践している地元の農家さんが指導にあたり、1年を通して50種類ほどの野菜や米や小麦を育てています。秋には特産の黒枝豆も出荷しています。ECサイトでインターネット販売も行っていますが、「やっと1年経ったところ。まだまだ人員は足りないし、土質改善も必要です。うちの畑でとれた何種類もの野菜が入ったセット販売を収益の柱の一つにそだてます」と、山本さん。

山本さんは、サービス管理責任者や精神保健福祉士、ジョブコーチ資格も取得しています。現在、農業スタッフ2名のほか、7名のスタッフが利用者に寄り添います。そのうち、山本さんを含め3名が福祉関連の国家資格を持っています。「うちは小規模なので、スタッフ同士小まめに連携を取り、それぞれの利用者さんの様子を把握できます。時間はかかってもいいので、利用者さんがチャレンジする気持ちを持って取り組めるよう、スタッフ一同働きかけていくことが大事だと考えています」。

「あくまでもうちは、『卒業』ありきなんです。仕事も家事も、自分の身の回りのこともひと通りできるようになって退所していただく。そして、どんどん外に出て、自分の人生を歩いてもらいたいと思っています。そういう思いをお持ちの方のサポートをどんどんしていきたい。『終の棲家』の方が経営的には儲かるんですけどね」と、山本さんは笑います。

夢を描けるような支援システムを構築していく

もくもく農園では、農薬や化学肥料を使わない農業を進めています。山本さん自身も初めての農業なので、スタッフや利用者の方々と試行錯誤しながら汗を流す日々ですが、「近隣の農家さんもとても良い方ばかりで、アドバイスをくださったり畑の様子を見てくださったり。本当に良い場所に来られました」。

納屋には小麦の製粉機があります。農業指導してくれている農家さんの有機小麦を製粉するためのものです。姫路の製麺メーカーが農家さんに「機械は提供するので有機小麦を自社仕様に製粉してほしい」と依頼があったことがきっかけで、その製粉作業をもくもく農園が担っています。「今後、もくもく農園で育てた小麦を製粉して、自分たちでパンをつくったり、販売したりできたら」と、意気込みます。
また、いつかレストランや宿泊施設を併設し、障がい者の働く場所を増やしていきたいと言います。山本さんは、「目先の作業をこなしていく仕事だけでは、将来が見えにくい。障がい者の方々が、ステップアップしたり、『農業の次はレストランで働くんだ!』などの夢や目標を描けるような構造を築きあげていきたい」と、思いは広がります。

「都会には大きな企業があって特例子会社を設置していたり、障がい者雇用に積極的に取り組んでいる企業もたくさんあります。しかし、都会の空気に馴染めない方、都会的な誘惑に負けてしまいがちな方もいると思うんです。そういった方々の受け皿になれたら…。そして、体調が整い自信もついたら当所を卒業し、慣れ親しんだ地元や就職先の多い都会で活躍してほしい」と、山本さんは願っています。そうした自立のために、全スタッフ一丸となって、職業訓練も含めた支援をしているのです。

長年就職支援などに携わっている山本さんは、中途発症者(後天的発症者)向けの支援が手薄いと感じているそうです。「誰に相談すればいいのか、どういった場所に行ってどんな情報を入手すればいいのか、困っていらっしゃる方もいます。我々の活動も、サポートを必要としている多くの方にどうすれば届くのか…。課題の一つでもあります」。

空が広く、緑の多い丹波で、利用者さんがゆったりとした気持ちを持って日常生活も仕事も楽しみながら自立できるように、山本さんやスタッフの皆さんはずっとそっと、寄り添っていきます。

 

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