新鮮な野菜がたっぷり、農家が作る「野菜(やさ)しい餃子・助丸」

株式会社日本グロワーズ

山南町の国道175号を車で走っているとひときわ目を引く「生餃子」と書かれた看板。気になって思わず指示器を出した人も多いのではないでしょうか。2022年7月にオープンして約1年、ひっきりなしに車が入ってくる人気店です。「野菜(やさ)しい餃子・助丸」は、つつみたての生餃子を販売する専門店。地元の野菜農家が作る野菜たっぷりの餃子と聞いて、わくわくしながら私もテイクアウトしました。

国産豚肉と野菜の旨みを生かした生餃子

地元の人が日々利用するスーパーマーケットの近くにある、立ち寄りやすい店舗です。「助丸」という店名の由来をのちに確認すると、「栄養満点の餃子で、食べる人の健康と食卓のメニューを助けたい。そして笑顔や家庭円満につなげたい」という思いからだそうです。たしかに肉と野菜が入った餃子は栄養バランスが良い食品ですね。

店内ではスタッフが野菜たっぷりの餡をつつんでいきます。生餃子の賞味期限は2日、売り切れることもあるので電話予約がおすすめです。ふるさと納税の返礼品にも選ばれており、こちらは冷凍での発送となります。

包んだ餃子を箱に入れたら、くっつかないように、きれいに羽根ができるように全体に粉をふります。

素材にこだわった自家製のタレとラー油は別売りです。たっぷり入って100円というのはお得ですね。同封の案内に丁寧に焼き方が書いてあり、そのとおりにフライパンに油をひいてから火をつけてスタート。こんがりきつね色になった焼きたてをいただきます。

弾力のある皮、肉の旨みの中に野菜のシャキッとした食感があり、あっさりした中にも旨みがあふれ出てきます。具材の70%が野菜で塩は控えめ、椎茸や昆布を加えて味に深みを出しているそう。タレに自家製ラー油をたらして食べると、ピリッとした刺激にご飯が進みます。

味わい深くて、あっという間にお皿がからっぽになりました。和風テイストの味付けが食べやすくて、たっぷりの餡は食べ応えもあります。これは幅広い年齢層にウケますね。

農家が作るおいしい野菜がポイント

「助丸」を運営するのは、山南町にある「日本グロワーズ」。関連会社で、野菜を生産する「丹波リーフ株式会社」は、現在140棟のハウスを持ち、露地栽培も含めて野菜部分の売上高は県内屈指の農業法人です。中でもベビーリーフの栽培が知られており、「菜五味(なごみ)」ブランドとして、筆者も取材先のレストランで何度か食べていました。添え物になりがちなベビーリーフが、存在感をもってしっかりおいしい印象でした。

ベビーリーフのほかにも様々な野菜を栽培しており、生餃子に使われているキャベツとニラは冬季を除いて自家栽培。ニンニクと生姜も今年から自家栽培でまかなうようになりました。おいしい野菜を作るには、徹底した土づくりが重要です。同社では、化学肥料は使わず植物系の堆肥を使い、力強い野菜を育てています。

「私たち農家の仕事は野菜が育つ力をサポートをすること。自然の山は100年かけて1cmの土を作ります。様々な種類の木々がしっかり根をはって共生しているんです。人の力ではそこまでできませんが、野菜に合わせた土を作っています」と土に対する思いを語るのは日本グロワーズの社長、堂本幸信さんです。

脱サラから農業法人、そして6次産業化へ

堂本社長がサラリーマンを辞めたのは38歳の時。仕事に追われる日々の中、なにげなく見たサイトで「農業ほど楽しい仕事はない」という文言を見つけます。兼業農家に育ったものの、1町歩ある父の田んぼの作業を手伝ったことはほとんどありませんでした。ただその文言が気になって、休日に農業法人でアルバイトを始めます。それがベビーリーフの栽培でした。季節によっては2週間で収穫できるベビーリーフの力強さを知り、農業は面白い、と思ったそうです。

そして2011年、ベビーリーフの生産を行う丹波リーフ株式会社を兄の憲造氏が創業、2016年に堂本社長が株式会社日本グロワーズを設立します。8棟のハウスからスタートして順調に拡大した農業ですが、需要が落ちて泣く泣く廃棄処分を決断することもあり、加工商品を作る6次産業化に着目します。

餃子なら自社の野菜のおいしさを生かせるのではないかと2年がかりで商品化。時間がかかったのは、味づくりに納得がいかなかったから。「餃子というと男性が好むパンチのきいた味をイメージしますが、私は子どもからお年寄りまで、幅広い年代の人に安心して食べてもらえるやさしい味を目指しました」と堂本社長。

助丸の餃子の味を作ったのは、兄の憲造氏です。上質な生醤油を使ったタレ、手間のかかるラー油も憲造氏のオリジナル。「原価割れです」と笑う堂本社長ですが、自信作である餃子を「より多くの人に食べてほしい、地域の活性化に貢献したい」と、先ごろ、明石魚住店(明石市魚住町錦が丘4丁目11-4)もオープン。

収穫したばかりの新鮮な野菜の甘みと厳選した国産豚肉のあっさりした旨みを閉じ込めた生餃子はおいしさも格別。今回は焼いていただきましたが、水餃子にしても揚げ餃子にしてもおいしそう。「酢コショウでも野菜の美味しさをしっかり味わえます」とアドバイスをもらいました。

 

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