石臼で自家製粉するなめらかな蕎麦に、オリジナリティを加える

丹波の蕎麦処たかはし

舞鶴若狭自動車道・春日ICから水分かれ街道・国道175号を西へ進み、JR福知山線・黒井駅を過ぎたあたりを南に入った住宅地区の一角に、「丹波の蕎麦処たかはし」はあります。2012年にオープンして以来、多くの蕎麦ファンを魅了する名店を訪ねました。

地元農家の野菜パウダー等を練り込んだ「変わり蕎麦」が名物

蕎麦は、契約農家から玄蕎麦を仕入れ、石臼で自家製粉して「おいしい細目に仕上げています」と、店主の高橋扶美雄さん。十割蕎麦も、のど越しよくいただけます。

人気の「三色そば」1,200円(税込)は、十割蕎麦・変わり蕎麦・二八蕎麦がセットになったもの。変わり蕎麦は、更科蕎麦に柚子や桜、抹茶、しょうが、小松菜、紅芋などが練り込まれています。季節によって、あるいはその日の店主の気分で、何が出てくるかはお楽しみ。

野菜入り変わり蕎麦は丹波の有機農家がつくる野菜パウダーを使って仕上げます。素材の風味が生きていて、香りよく見目麗しい。思っている以上に量もしっかりあって、おなかも満たされます。

細目の麺によく絡む甘めの返しには、古来の方法で製造される、生産量日本一の鹿児島県枕崎産の鰹節を多めに使います。「荒節のまま仕入れて、自分で削ってるよ」というこだわりっぷり。宗田節と半々でつくる温かい「かけそば」のおつゆも、鰹がきいていて、ほっこり癒されます。この鰹出汁でつくる大きな「だし巻きたまご」300円(税込)も人気。

蕎麦打ちだけじゃなく蕎麦栽培も

長野県出身の高橋さんが、黒井城跡を望むこの場所に蕎麦処を構えたのは、2012年。長らく大阪の会社に勤務し、退職後蕎麦打ちをはじめました。長野に帰省のたび、日本三大蕎麦のひとつ、戸隠蕎麦を幾度となく味わってきた蕎麦熱が退職後、「顕在化してきたんです」。蕎麦打ち教室に通い、3カ月後には自ら教室を始め、気づけば毎週開催するほどに。やがて自店を持つことを志します。

大阪、奈良、京都などさまざまな場所を見て回り、蕎麦仲間もいて広さなど条件の合ったここ丹波に決めました。

蕎麦打ちに加え、販売用の玄蕎麦栽培もおこなっています。「蕎麦は、育てる条件が難しい作物です。台風や大雨の影響も受けやすい。地域のなかでも育てる畑が違ったら、味は変わってきます。そういう不安定さもおもしろいなぁと思っています。今年はきれいな蕎麦の花が咲いたので、結構量も採れるんじゃないかな」と、期待を寄せます。

忙しい日々の向こうにある静かな夢

娘さんやアルバイトの方がお手伝いしてくれるとはいえ、1人で粉を引き、蕎麦を打ち、店に立つ日々。理想として「てんぷらとかもやりたいけどねぇ」。14時にお店が終わったあと、山の向こうにある田んぼに向かい、蕎麦の手入れをします。「そしていつか、自分の店でも出せるくらいの量の玄蕎麦を栽培したい」と、静かに熱く語りました。

少し入り組んだ場所にありながら、最近は遠方からわざわざ訪れるお客さんも多いのだとか。「本当にありがたいことです。お客さまの『うまい』のお声がけを糧に日々研鑽の毎日です」と、高橋さんは目を細めます。

週末や連休時には早めに蕎麦がなくなることもあるので、11時のオープン入りを目指したいですね。

 

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