どんどん増えていく様子にハマる人続出!色カタチ様々な多肉植物を栽培・販売

有限会社カスガ堂

氷上町にある1947年(昭和22)創業の文房具店、「カスガ堂」。中央小学校のすぐ南側に位置し、公的機関やオフィスなどへOA機器や事務用品を販売するとともに、近隣の児童生徒が学用品を買いに訪れます。そんなカスガ堂の奥様・久美子さんの趣味が高じて、多肉植物の栽培と販売をはじめました。今は月2回ほど、週末に店頭で販売会を開催しています(開催時はSNSやチラシなどでお知らせ)。店主である夫の知哉さんも別の種類を育てはじめ、今や夫婦共通の趣味にもなっています。

葉を土の上に置くだけで増えていく手軽さが人気の理由。

久美子さんが育てているのは、「エケベリア」という品種。葉の色が緑や赤、ピンク、オレンジなど色鮮やかな種類に富んでいます。その色合いや見た目の愛らしさのせいか女性ファンが多いとのこと。原産地はアフリカや中南米産がほとんどですが、最近では韓国での栽培が盛んです。「今は気温が上がってきて色が少し落ちかけていますが、秋冬になると紅葉したり、葉がむっちりしてきて、いろんな顔を見せてくれるんです」と、その魅力を話します。

「葉っぱをちぎって土に差しておけば、新しい葉がぽこぽこと出てくるんです」。これを葉挿しと言いますが、その手軽さにハマる人が多いようです。久美子さんもそのひとり。「増やすのが楽しくて、気付いたら自宅のベランダには収まりきらなくなって、ハウスを買うことにしたのが、販売をするようになったきっかけです」。

久美子さんが最初に多肉植物を育てはじめたのは10年以上前のこと。名前も分からないものを何かのイベントで見つけて購入しました。しかし、冬になってダメにしてしまい、悔しくてまた再度トライし…。を繰り返して、今に至ったそう。「多肉植物って、すごい生命力で、腐りかけても、早めに対処すれば自分の力で復活するんです。けなげですよね」。

ルノーディーン(中央の3株)

写真はエケベリア種の「ルノーディーン」という名前の多肉植物。価格的には高めで、葉挿しではなく胴切りという方法で増やしますが、なかなか難しいのです。それでも指名買いする方もいるレアな品種。

桃太郎

多肉植物はユニークな名前を持つものもあり、ジャケ買いならぬ「名前買い」する人もいるようです。一番人気の「桃太郎」のほか、「ぴかちゅう」「ぴぐれっと」なんて名前のものもあるのだとか。

見向きもしなかった旦那さんをも虜にした「ハオルチア」。

一方、知哉さんが育てるのは「ハオルチア」という品種。「シャープでかっこいい感じのものが多いです」という言葉どおり、こちらは比較的男性ファンが多そうです。葉がかたくてシュっと尖っているようなタイプと、水を含んだように葉がぷっくりしているタイプがあります。

基本的に水をあげるだけで育つ手軽さが多肉植物の魅力のひとつですが、水のあげ方次第で、葉の形が変わるようです。ぎりぎりまで乾燥させた状態のところに水をあげて育てると葉が丸くなってきたり、逆にごつごつしてきたり…。単純に見えて変化に富む成長を見せてくれるのも、人を惹きつける理由のひとつかもしれません。

多肉植物は暑い地域原産のものが多いので、高温には強いのですが、それでもハウスの中に放置しておくと直射日光が強すぎて焼けて変色したり焦げたりしてしまいます。そのため、大型扇風機を設置したり、日除けを下げるなど、工夫を凝らします。寒さには弱いため、極寒時には、ハウスの中を断熱材で囲ったり、大きなストーブをつけるなどして寒さから守ります。

最近では値が張るものが多いというアガベが人気で、知哉さんも「これ、かっこいいでしょ」と、お気に入りの様子。今ではハウスの中に扇風機やLEDライトを付けたり棚を組んだり、試行錯誤しながらかいがいしく植物の世話をしている知哉さんですが、久美子さんが自宅で育てているときは全く興味がなかったそうで、「学生時代はサボテンを枯らすタイプだった」と、笑います。久美子さんや高2~小6の3人のお子さんたちも、「お父ちゃんが植物を育てられるなんて思ってなかった」と、その変わりっぷりに驚きます。「多肉植物のイベントや販売店に妻を連れていったりしていると次第に気になってきて…。調べ始めたらおもしろくなって、少しずつ集め始め、どんどん増えていくのですっかりハマってしまいました」。

文房具を買いに、そして多肉植物ファンも集う場所へ。

久美子さんはエケベリア、知哉さんはハオルチアと、それぞれ「守備範囲」が違うので、お互い育て方などにはあまり干渉しないようにしています。久美子さんは、今年は種を採取し、種から育てる実生(みしょう)に挑戦中。種は吹けば飛ぶほどの「黒い点?ごみ?」と思うほど小さいので、大切に慎重に作業します。また、最近では自分で交配させて新品種を生み出す人も多いそうで、久美子さんも「そこまでできたらな」と、目指しています。

平日は文房具店として、知哉さんは外回りの営業やメンテナンスへ出かけ、店舗の切り盛りは久美子さんが担当していますが、週末はハウスで多肉植物のお世話にどっぷり漬かっている時間がとても幸せなんだそう。「植え替えをしたり、一つひとつ様子を見たり、やりたいことがたくさんあるんです」と、生き生きと話します。

現在月に2度ほどの販売会ですが、電話で「次はいつするの?」と問い合わせがあったり、SNSのフォロワーが増えていったりと、回を重ねるごとにお客様が増えている様子。多肉植物を育てている方だけではなく、初めての方もいらっしゃいます。情報交換をしたり、お客様同士「うちの子自慢」をしたり、「うちのはこんな色にならないの、どうしたらいい?」といった相談を受けることも。「こうやって同じ趣味を持つ人が地域にどんどん増えていったらいいなと思います」と、久美子さん。

販売会のときは、知哉さんは「かき氷やさん」に!ふわふわの氷に子どもたちも大勢集まり、毎回大人気で売り切れになることも。暑い時期にぴったりの、一層楽しい販売会になりそうです。ちなみに、ハウスは保管・管理用なので、販売会のときであっても中は非公開です。
店舗前の販売会のほか、丹波界隈のイベントに出店することもあります。夫婦同じ趣味ながらも守備範囲が違うので、適度な距離感を持てているのが「うまくいっている秘訣かも」と、お二人。

知哉さんで三代目になるという本業の文房具店は、三人のお子さんの成長とともに品揃えも増えていきました。「学年が上がるたびに必要になるアイテムや欲しがるキャラクターなどが変わってくるので、その都度仕入れました。それに、子どもたちの情報網は早いですからね(笑)」。大人になってそういった軌跡が記憶に残ってくれていたらいいなと、久美子さんは優しいお母さんの表情で話します。

平日の夕方、急遽必要になったノートを買いに来る中学生、お買い物の練習に来る低学年の小学生…。近隣の児童・生徒にとってなくてはならない存在の「カスガ堂」は、多肉植物を通して新たなコミュニティを生み出す場所になっているようです。

 

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