板金技術を生かし、オリジナル雑貨やアートに挑戦

田村板金有限会社

主に建築関係の板金を生業とする田村板金の社長、田村安通さんは、その技術を生かして鉄やステンレス、銅を使ったアート作品を作っています。硬い素材を自在に操る職人の技が生み出す斬新なデザインは巷で噂になり、オーダーも入るようになりました。丹波発の新しい現代アートが生まれるかも…、そんなわくわくを抱えて田村さんの元を訪れました。

建築分野で力を発揮する地元密着企業

断裁機で鉄を加工

田村板金は安通さんの父が創業し、地元密着の企業として、屋根・壁・トユなどの外回りを中心に建築を手掛けてきました。基礎以外は自社でできることから、鉄骨倉庫などを数多く建て、補修も含めて地元のお客さんと長くお付き合いをしてきました。

2代目となる田村さんは、小学校5年生の頃から父の仕事を間近に見る機会を設けられていました。「跡取りとして育てたい」という父の思いとは裏腹に、本人は「友達と遊びたいのに…」と、嫌々だったそうです。それでも1995年(平成7)の阪神・淡路大震災のときは、高校生ながら父と共に被災地に赴いて復旧作業を手伝い、流れのままに専門の学校に進み、国家資格である二級建築板金技能士も取ります。

実務経験を経てからは一級建築板金技能士も取得。1ミリ単位の精度が求められる課題を自分で図面を書いて手技だけで作り上げる超難関といわれる資格です。実際に現場に出て、知識や技術が身についてくると、嫌々だった板金の仕事が徐々におもしろくなってきます。

関わった建築物は誰かの大切なものとして、ずっと残ります。前を通って目にすると、それが大切に使われていることに喜びを感じるようにもなってきました。

何気なく端材で作った小物が好評に

あるとき、壁を作って余った鉄板の切れ端を見ながら、「もったいない」と思った田村さんは、ちりとりを作って施主にプレゼントします。施主の喜ぶ姿は、思いがけないものでした。それならと、空き時間に鋼板、ステンレス、銅を使った雑貨づくりを始めます。

曲げたり、つないだり、成型するのはお手のもの。思い通りのおしゃれな実用品が生まれました。忙しい本業の合間に作るので数は多くできませんが、できるとすぐに欲しがる人が出てきます。シンプルでセンスのいい雑貨は、オブジェのようでもあり、なによりその空間にすんなりと馴染んだのです。

高度な技を生かし、次々に生まれるアート作品

首が動くギミック作品

修業時代に家具作りを手伝ったこともあり、細かい作業はお手のもの。アイアンの置物がほしいという声に応えて、犬やカエルの置物を作ります。「首が動いたらおもしろいね」という声にもすぐに応えて作成。仲間の結婚式では、銅製の鶴を作り、新郎新婦を喜ばせました。

精巧に作られた鶴は、銅板を実際に折ったかのようです。広島の平和記念公園の折り鶴が焼かれるという事件があったとき、全国の板金屋さんが板金の鶴を折って奉納しました。その事業に田村さんも関わっていました。

小物入れでもオブジェでも使い方は自由に

展示会やイベント会場で販売すると、すぐに売れ先が決まっていく板金アート。「他人がやってないことをやりたい」と、意欲的な田村さんは、今後は異業種やアーティストとのコラボレーションも行って新しい作品を作りたいと考えています。

実務経験年数19年、事業承継をして3年、工務店や他の職人仲間とも助け合い、本業も順調に進んでいます。たくさんの現場で、いろんなタイプの建築物を経験したおかげで、新しい技術を知ったり材料の知識にも幅が広がります。大切な板金の仕事とその端材を利用して作るアート、この両輪を回し続けたいと、夢はさらに広がります。

 

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