凸凹感を表現する活版印刷。アナログならではの“味”に注目

きくもとグラフィックス株式会社(廣運舘活版所)

丹波市の印刷会社として長い歴史を誇る「きくもとグラフィックス株式会社」。丹波市の自治体や法人などを顧客に持ち、パンフレットやチラシなど数々の販促物を作成してきました。そんな同社がここ最近力を入れているのが、「活版印刷」という昔ながらの印刷技法です。同社の社長、菊本さんにお話しを伺いました。

地域に愛される印刷会社として

きくもとグラフィックス・菊本裕三社長

きくもとグラフィックスが「菊本印刷」として創業したのは1933年(昭和8)のこと。当時は“市井の記録”として使われる印刷がほとんどで、一般向けにはまだまだ貴重な存在でした。

その後、印刷物も大量生産の時代へと突入。同社も時流をたくみに取り入れ、早くてキレイに印刷できる技術をいち早く導入します。2001年(平成13)の法人化にともない“きくもとグラフィックス”と社名を変更し、トレンドと技術力の高さの両輪を備えてクオリティの高い印刷物を生み出してきました。

今一度アナログの良さを見直す

そんな同社が改めてその魅力を打ち出しているのが、昔ながらの活版印刷という技法です。金属活字や樹脂・金属で作った凸版を用いて印刷するもので、紙に独特の凹凸がつくのが特徴です。手作業の工程が多いため一つひとつ仕上がりが異なり、アナログならではの風合いが楽しめます。

明治時代に刊行された古書「花の栞」

始まりは、菊本さんの父の遺品から見つかった「花の栞」にあります。これは全国各地の印刷所が1ページずつ担当し技術を披露した刷り見本で、現在でも印刷の歴史を物語るものとして珍重されている古書です。ここに曽祖父が勤めていたと推測される丹波市の印刷所「廣運舘活版所(こううんかんかっぱんじょ)」(※現在は廃業)の作品が掲載されていたことが判明。

丹波市でも印刷において長い歴史が紡がれてきたことに感銘を受けた菊本さん。この歴史を次世代につなげたいと、かつての印刷の主流であった活版印刷技術を再始動させ、「廣運舘活版所」と銘打ってブランド化。クリスマスカードやメッセージカード、レターセットなど、味のある商品を企画しています。

こちらは廣運舘活版所でイベントに参加した際に配布した、オリジナルのメッセージカードです。やわらかなイラストと、肩の荷が下りるようなのんびりとしたキャッチコピーに癒やされます。

罫線の種類もさまざまで、二重線や破線、太さも多数の種類をラインナップ。この独特な模様を生かすべく、1本1本異なる罫線を施した便箋も作成。取り扱い店舗などでもアナログでシックなデザインがかわいらしいと好評です。

幕末の英傑たちの家紋をあしらったこちらのしおりは、京都府指定無形文化財・黒谷和紙とのコラボ商品です。凛とした家紋の雰囲気と凸凹のある活版印刷の仕上がりがマッチし、なんとも重厚感があります。NHK大河ドラマの影響もあり、オンラインやお土産店などでの人気はうなぎのぼりに。

かつての技術をよみがえらせ、大切に使っていく

現在商品化されているもの以外にも、さまざまな模様や文字の活版を取り揃える同社。例えばこちら。

なんと魅力的な温泉マークでしょう。カードや名刺のアクセントに使えば、味わい深いデザインになりそうですね。

活版印刷用の機械。組版を手動でセットして手前の白い紙に印刷する

活版印刷ならではの凹凸を演出する、厚みと風合いのある紙もさまざまな種類を用意。インクが絶妙ににじむ紙や、コットン100%の手触りやわらかな紙、コースターなどにも適した吸水性のある紙など、多彩な紙質と文字との組み合わせで出来上がりのイメージが無限に広がります。

「いまはインターネットの普及に伴い、さまざまなモノのデジタル化が進行し、簡単便利な時代になりましたが、人の手を介した活版印刷にはデジタルには表現できない趣や味わいがあります。丹波市の印刷物の歴史を次世代に伝えるべく、愛着を持っていただけるような印刷物“廣運舘活版所”のブランドを続けていきたいと考えています」。

レトロでかわいらしくて、味がある。そんな活版印刷で、名刺やカードなど自分だけの印刷物を作ってみませんか。

 

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