丹波市山南町にある「SC LABOA」は、歯の被せ物や入れ歯を手がける歯科技工所。歯科医院から依頼を受け、患者さんの歯にぴたりと合うオーダーメイドの技工物を一つひとつ丁寧に作っています。今回は、普段はあまり知ることのない歯科技工士の世界を少し覗き見してみました。最新技術と手業を組み合わせた、クリエイティブな現場についてお届けします。
2022年に事業継承し「SC LABOA」としてリスタート
1995年（平成7）に創業し、2022年（令和4）に田村奉千さんが事業継承して代表についた「SC LABOA」。社名のSはスマイル、Cはクリエイト、LABOは工房、Aはアートを意味し、“笑顔を創造する工房でありたい”との思いが込められています。
田村さんは「歯科技工士は、患者さんの歯を作り上げる仕事であると同時に、笑顔につながる仕事であるなと思っています。歯を整えることで見た目の美しさが改善するのはもちろん、おいしく食べることもできるなど、いい面がたくさんあります。この工房からたくさんの人の笑顔を生みだしたい、そんな気持ちがあります」と話します。
創業したのはお父様ですが、実はこの業界に入ろうとは当初考えておらず、学校卒業後は自動車のディーラーに就職し営業やエンジニアの仕事に邁進していました。そんな中、あるきっかけによって家業を継ぐことを考え始めます。
「親はずっと『自分の好きにしたらいい』という考えでしたが、結婚して親との同居を考えたときに、父が培ってきた事業を一代で終わらせるのもな……と思うようになって。結局、僕のほうから家業を継ごうか、と提案をしました。とはいえ歯科技工士は国家資格ですので、専門学校に入って勉強をする日々。2年間しっかり学んで無事合格し、2015年（平成27）に合流しました」（田村さん）。
丹波市で唯一入れ歯も被せ物もどちらも手掛けられる技工所
「SC LABOA」のいちばんの強みは、入れ歯から補綴物（ほてつぶつ。いわゆる被せ物）まで、矯正以外のあらゆる歯科技工物が手掛けられることです。どちらもつくれる技工所は実はそれほど多くなく、丹波市内ではなんと1社のみというから驚きです。
というのも歯科技工士は一般的に個人事業主が多く、手広く事業を進めるよりも「入れ歯の専門」や「補綴物の専門」となって業務を請け負う方が効率的だからです。
一方「SC LABOA」は田村さんのほか、前代表のお父様をはじめとした技工士が複数人在籍しているため、会社としてさまざまなケースに対応可能というわけです。
田村さんも「歯科医院さんが入れ歯専門、補綴物専門といった技工士を複数人抱えておく必要がないので、『まずはSC LABOAに聞いてみよう』と思っていただけている場合も多いと思います」と微笑みます。
最新技術をいち早く導入。あらゆる依頼に応えられる
入れ歯や補綴物はすべてオーダーメイドとあって、噛み合わせはもちろん審美的な部分でも一人ひとり異なる歯にきちんと合わせる必要があります。
まさに“職人技術”といえるこの仕事、鍵となるのは粘り強さです。「これでいいかなと思うのではなく、まだ整えることができる、まだ美しさが追求できると妥協せず突き詰めていく姿勢が大切です」（田村さん）。
とはいえ、小指の先より小さい技工物を1日中見つめ続ける作業はなかなか大変そう。「慣れれば問題ないですよ」と笑う田村さんですが、技工物を削る音だけが響く事務所内は独特の雰囲気に満ち、制作物にとことん向き合う真摯な姿勢に感嘆せざるを得ませんでした。
また、ここ最近は技術の発展に伴って、歯型を取らずデータのやり取りのみで作り上げる技工物も増えています。
同社でもそんな最新技術を導入し、あらゆるケースに対応できるよう環境を整備。PC操作をはじめ新たに学ぶことも多いですが、ニーズに応えられるよう努力を惜しまず常に前進を心がけます。
機械で削り出す方式も徐々に増えているそう
歯科技工士による勉強会「技工士会」に積極的に参加したり、納品した入れ歯や補綴物が歯科医院でどんな仕上がりになったかを写真で確認させてもらったりと、日々より良い進化を続ける同社。そのすべては“笑顔を作りたい”という思いがベースとなっています。
「歯が丈夫になることで、話したり食べたりいろんな楽しみが叶うようになります。ひとりでも多くの方の歯を美しくお作りできるように、これからも技術を磨きながら最新技術も導入してあらゆる技工物に対応していきたいです。またSNSなどにも力を入れて発信力もつけ、幅広いニーズにお応えできるようになれればと思っています」（田村さん）。
＜注意事項＞
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