楽しみながらの「生活リハビリ」に力を入れる民家活用型デイサービス

シルバーハウスグループ/株式会社ツーリスト開発

2000年(平成12)4月に介護保険制度が始まって20年以上が経ちました。制度開始直後から丹波で介護事業を行っているツーリスト開発は、「シルバーハウスグループ」として、デイサービスの「シルバーハウスいちじま」「シルバーハウスアネックス」、訪問介護の「クローバー介護サービス」を運営しています。

民家でやることに意味がある

ツーリスト開発事務所

長年、旅行会社を経営していた安達眞治社長は、かねてより福祉関係の仕事で社会の役に立ちたいと考えていたそうです。介護保険制度の始まりによって、それまでの医療法人や社会福祉法人だけでなく、民間事業者も介護事業に参入できるようになりました。それを知って開業を決意。デイサービスを始めます。

当時はお年寄りのことは家族が見るのが当たり前、お世話は嫁がするもの、という暗黙のルールがありました。そのために仕事を辞める人も多くいた時代です。デイサービスといってもなかなか受け入れてもらえず、送迎車が来るだけでも世間体を気にする人がいたそうです。それでも利用者のためにと努力を続け、3年ほど経つと人々の意識が大きく変わります。利用者がどんどん増えて、次第に地元の人に「いいことをしている」と認めてもらえるようになったのです。

民家だからこその生活リハビリに力を入れる

シルバーハウスいちじま

デイサービスの「シルバーハウスいちじま」と「シルバーハウスアネックス」は、どちらも民家を利用した施設です。この機会に、実際に「シルバーハウスいちじま」を訪れました。ここは元々社長が住んでいた家を改装した小規模デイサービスで、利用人数は最大15人で、通常10~12人が通っています。最高齢は102才で、介護度は様々で、要支援の軽い人も利用できる施設です。

ここではまず、芝生の庭からポーチに上がる際に1段、ポーチから玄関に上がる際に1段、廊下に上がる際に2段の段差があります。あえて一般的な民家と同じようにして、家に入ること自体をリハビリの一つにしています。もちろん手すりなど、サポートする器具は取り付けられています。

施設にいる間はスタッフが手をひいたり、車椅子を持ってきて移動できますが、自宅だとそうはいきません。家族がいない時でも自分で多少は移動できるように、ここでの生活リハビリはとても重要なのです。当初は行政に受け入れられなかったそうですが、大学などの専門家の研究によって、今ではいかに大切かが知られています。

スタッフが調理するキッチンも自宅にいるような空気感で、利用者が親しみを持ってリラックスできるようになっています。また、室内では運動靴ではなく、自宅と同じようにスリッパを履いてもらって、足元に注意をする習慣を付けています。庭に出たり食堂へ移動したり、あえて動いてもらうことも生活リハビリなのです。

ダイニングのインテリアも特別なものではなく、一般家庭用のもの。庭の洗濯物や木々などが目に入るのも自然な風景として目に映ります。

季節の食材を生かして栄養バランスを考えた、手作りのお昼ごはんは、みんなが楽しみにしています。洋風より、慣れ親しんだ昔ながらの煮物や和え物を好む人が多いので、家庭料理を中心に調理スタッフが腕によりをかけて作っています。

楽しみながら機能訓練につながるレクリエーション

レクリエーションは季節に合わせた工作や手芸、トランプゲーム、脳トレ、体操など、利用者の希望を聞きながらの機能訓練も取り入れています。昔なつかしい「おじゃみ」を投げて点数を数えるようなゲームで、自然に体を動かして楽しい気持ちでいられるような工夫が随所になされています。

漢字の書き取り、間違い探し、塗り絵などは脳トレにも有効。作品はダイニングなどに貼り出して、みんなが見られるようにしています。障子が破れていたら、「張替えなあかんよ」と教えてくれる人もいて、使い慣れたもの見慣れたものは、やっぱり安心されるようです。

季節を感じる小物作りもレクリエーションの一つ。お正月やお盆の飾り物も脳への刺激になって、昔の思い出話に花が咲くこともあります。

利用者は朝から夕方まで滞在して、レクリエーションを楽しんだり、お風呂に入ったり、お昼ごはんやおやつをいただいたりして過ごします。朝夕の車での送迎は介護スタッフみずからが行います。家族と顔を合わせれば日常の変化を聞けるし、体調や精神面も細かく注意してケアマネジャーとも共有。高齢者をとりまく人々との連携をとても大事にしています。

「ここに来たら1回でも多く声を出してもらう、笑ってもらう、ということを心がけています。一人暮らしの人だけでなく、家族と暮らしていても案外会話は少ないんです。親しく接しながらも、人生の先輩への尊敬を忘れず、一人ひとりの尊厳を守りたいと思っています」と吉見由美子所長。

シルバーハウスアネックス

「シルバーハウスアネックス」でも同様のポリシーで介護サービスを行っています。

「シルバーハウスいちじま」「シルバーハウスアネックス」ともに、見学や無料のお試し体験を受け入れているので、まずは電話で問い合わせを。

■シルバーハウスいちじま
・丹波市市島町上牧553
・0795-85-3066

■シルバーハウスアネックス
・丹波市市島町戸坂288
・0795-85-6038

訪問介護の「クローバー介護サービス」

クローバー介護サービスの事務所

「クローバー介護サービス」は、スタッフが利用者の自宅を訪問して、入浴や食事といった身体介護や、料理や洗濯といった生活援助を行います。高齢者本人と家族が選んだ「自宅で暮らす」ために必要なことをサポートするプロフェッショナルです。

「指定訪問介護」は、丹波市市島町・春日町・氷上町・柏原町・福知山市立内中六人部小学校区・細見小学校区(三和町)、「介護予防・日常生活支援総合事業」は、丹波市市島町・春日町・氷上町・柏原町で実施しています。

「クローバー介護サービス」では、初任者研修以上の資格があるスタッフを募集しています。「私たちと一緒にやりがいのある仕事を」と管理者の井上いづみさん。気になる人は直接問い合わせてください。

■クローバー介護サービス
・丹波市市島町上牧528
・0795-80-3800

クローバー介護サービスの目の前にあるビオトープでは、様々な植物と生物が生態系を保っています。

ビオトープ作りに見られるように、自然保護活動にも熱心な安達社長は、「鴨庄オオムラサキ飼育の会」のメンバーでもあります。オオムラサキとは日本の国蝶で、オスが青紫、メスが茶紫の羽を広げると10cm以上の大きさで勇ましく飛びまわります。県内では、淡路島をのぞく全域に広く生息していましたが、森林環境の変化で昭和40年代後半から50年代前半に激減。兵庫県版レッドリストCランクに指定されています。会では、鴨庄川流域でオオムラサキが舞う里の再現をめざして、専用ゲージで飼育して放蝶するなどに取り組んでいます。

高齢化が進む時代、誰もが安心して長生きしたいもの。高齢者本人はもちろん、家族にとっても思いは同じで、誰かが無理をしては介護は続けられません。介護に悩んでいる人や介護のことを知っておきたい人は、相談してみましょう。

 

<注意事項>

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