今や兵庫県でただ一軒、全国的にも希少な造花と装飾品の製造を行っている髙見造花店。市島町上牧の工房には、造花やモールなどの装飾資材がところせましと置かれています。どこかのショーウインドウで見かけたことのある、こういった季節のグッズを作っているのが同店なのです。
装飾業界の変遷
その昔、造花は主に冠婚葬祭に使われていました。祝いごとで飾られる大きな花輪、地方によっては葬式にも花輪が使われていました。装飾用の造花が広まったのは高度経済成長時代で、商店街が賑わい、休日にはおしゃれをして家族で百貨店に出かけるのが娯楽の一つでした。華やかなものが多くはなかった時代、こういった装飾は人々の購買意欲を刺激し、明るい気分にさせるものでした。素材は紙からビニールへ、そして現在は不織布やタフタが主力になっています。
社長の髙見知靖さん
髙見造花店の創業は1963年(昭和38)頃のこと。「もともと和傘を作っていた祖父が、この業界にいた親戚に声をかけられて造花作りを始めました」と三代目社長、髙見知靖さん。時代の波にのって、製造量は拡大し、近所の人に内職を依頼するなど、地域産業としても成長しました。しかし、現在はこういった装飾品の生産はほとんどが中国になり、廉価店で売られるようになってしまいました。同業者の廃業は続き、冒頭に記したように、今や国内で製造する企業はわずかです。
髙見造花のオリジナル製品
同社のクライアントの多くは、百貨店や商業施設のディスプレイを担当する企業です。売り場づくりの一環として必要になる季節の装飾が髙見造花の製品なのです。例えば秋の装飾品の定番は紅葉した葉。不織布を型抜きして、染色し、葉脈を型押しして袋詰めしたものが中心です。
色を重ねて秋らしく、かつ華やかにするのが髙見流。圧力釜を使って高温で蒸して染料を不織布に入れるため色落ちしません。ぼかしの技術も使って、美しく色をのせていきます。
染色の技術は、二代目が埼玉県の染工場に足を運んで技術指導を受けたもので、そこからさらに研究を重ねて現在まで受け継がれています。
国内で製造するため海外製より短期間で納品できることや、染色のアレンジがきくことから、得意先には重宝されているようです。
異業種やクリエイターとの協業で幅を広げたい
髙見造花店の強みとして、大型のガーランドや5~10mの高さのクリスマスツリーなど、大きなものもオーダーメイドで作れる点があります。クライアントの意向を受けて製造し、納品した現場では装飾も行います。大阪のなんばパークスやクリスタ長堀など、人気の商業施設にも同社の大きなクリスマスツリーが使われました。
華やかなオーロラフィルムのモール
「装飾はモノを引き立てる応援団」と、様々な色や素材を駆使して製造する髙見社長。ときにはクリエイターから依頼を受けて新しいタイプのものづくりに関わることも。「新分野、異業種とのコラボもどんどん手掛けたい」と意欲を燃やします。
大きな製品だけでなく、リースや小さな装飾品なども豊富にあり、「サークルや学校、個人商店のかたも気軽に声をかけてください」と髙見社長。長年培った技術をさらに活用して、丹波のものづくりを広めてほしいですね。
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