十割と二八、2種類のそばを味わえる古民家のそば店

三津屋 妹尾

青垣にある古民家のそば屋「三津屋 妹尾」。山の麓、集落の小道をゆっくりと車を走らせ、突き当りがその場所でした。庭には井戸があり、古い農機具がオブジェのように置かれ、看板がなければお店だとは気付かないほど。十割そばと二八そば、そしてさば寿司が美味しい店なのです。

相乗りセットで2種類のそばを楽しむ

相乗りさば寿司セット1,650円

三津屋 妹尾では、その年の1番おいしい玄そばを取り寄せて、石臼で製粉。翌日、手打ちしてその日に使いきります。粗挽きのそば粉と水だけで打つ十割そばは、しっかりとしたコシと蕎麦の香りが際立っています。二八そばは、つなぎ粉が二割入っているので、つるっとした食感が特徴。挽き方、打ち方で、味や香り、食感が異なるそばを楽しめるように、十割と二八、両方を食べ比べられる相乗りそば(1,100円)が人気です。

つゆのダシは、昆布にカツオの厚削りで関西風に。厳選した醤油をブレンドしてコクのある味に仕上げています。そば湯もわざわざ作っているもので、茹で汁だけではありません。だから最初に来た人も最後に来た人も同じ味を味わえるのです。
さば寿司は、三陸の肉厚のキズシをとりよせ、米は地元青垣産、酢には柑橘の搾り汁を加えて香りよく。テイクアウトもできます。

そばを使った手土産が買える

カリッと香ばしい塩味のそばかりんとう(432円)。手作りのおやつで、ビールのお供としてもおすすめです。

香ばしくてあと味すっきりのそば茶を自宅でも簡単に作れます。大(270g)540円、小(90g)216円。

1995年、転機は突然訪れた

店主の妹尾栄二さんは、実家がピアノの調律業だった縁もあり、イギリス・ロンドンの大学のピアノ調律科に進んだ経歴の持ち主。イギリスにいたのはトータルで10年、そのまま骨を埋める可能性もあったでしょうが、転機は否応無しに訪れます。
1995年(平成7)1月、暮れから日本に一時帰国してイギリスに戻ったときに、「無事にイギリスに着いた」と神戸の実家にかけた電話がつながらなかったのです。阪神淡路大震災でした。荷ほどきもせずにそのまま日本にとんぼ返り、家族は無事に避難していたものの、実家は半壊でした。

そこから妹尾さんは、イギリスに戻ることなく、神戸で父が関係するピアノの後片付けに大忙しでした。ほとんどが調律ではなく、瓦礫の中からピアノを出したり、処分したりが多く大変な作業でした。その後石油関連の企業に就職しますが、「仕事以外に楽しみを」と以前から興味があった陶芸を始めます。それが1995年の11月のこと。ちなみに今店で使っている器は自作のもので、店内には自身の作品のギャラリーショップもあります。

そば打ちと陶芸に打ち込める青垣へ

趣味は陶芸だけでなく、そば打ちの教室にも通い始めます。1年めで初段、2年目で2段をとり、そのまま講師として残って3年半。もう完全に職人の域ですね。
前後して会社を辞めて、かねてから考えていた移住を実行に移します。茅葺きの物件を探して2年間で数十軒以上見てまわりますが、なかなか気に入ったものはありません。親身になってくれたのが丹波市のオフィスキムラさんでした。現在の物件を紹介してもらって、自分で手を入れて家族と共に引っ越してきました。

そして2008年(平成20)5月にそば店をオープン。目立つ場所でもなく、「のんびりとそば打ちと陶芸を楽しみたい」とさほどPRをせずにいましたが、そば打ち仲間2人が丹波で開業したこともあって、「丹波にはおいしいそば屋が3軒ある」とメディアで取り上げられ、たくさんの人がやってくるようになりました。1度目は興味本位で来て、その人がリピーターになってまたやって来るパターンですね。

日当たりのいい縁側の外は緑豊かな庭。祖父の出身地岡山の集落での屋号、「三津屋」を店名に付けて自身のルーツを大切にし、そば・器・内装など手作りを楽しむ妹尾さん。ワークライフバランスのとれた生き方を聞きながら、静かな時間が流れていきました。また週末にそばを食べに行こうと思います。

 

<注意事項>

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