企業・個人ともにSDGsへの取り組みが必須ともいえる時代、資源のリサイクルは私たちの生活にすっかり溶けこんでいます。産業としても古くからリサイクルが行われているものに鉄や紙があります。鉄は、何度使っても同じ品質の鉄に再生できるという優れた特長をもち、あらゆる産業の生産活動を支え、経済活動に密接に関わっています。今回は、丹波市で長年、鉄のリサイクル事業を行っている伸栄金属を訪ねました。
(写真左/綾菜さん、写真右/映菜さん)
祖父のあとを継いで二代目社長に
同社は代表の増田綾菜さんの祖父が、約50年前に創業しました。綾菜さんの両親は別の仕事に就いているため、綾菜さんは二代目になります。「小さい頃から、工場は遊び場だったので、遊びの延長で自然に祖父の仕事を手伝っていました。といっても簡単な分別くらいですが」と言う綾菜さんですが、どこかに「おじいちゃんを手伝ってあげないと」という思いがあったそうです。
一般企業に就職したのちに、伸栄金属へ入社したのは15年ほど前。その後、27歳で社長として祖父のあとを継ぎました。男性が多い業界にあって「女でもできるんだという意地もあったかもしれません」と、子育てとも両立。2年前から妹の映菜(あきな)さんも仕事を手伝っています。
「私たちが女性なのでなおさら心配だったのか、祖父は引退してからも毎日様子を見にきて、昨年亡くなる直前まで何かとアドバイスをくれました」と綾菜さんは振り返ります。力仕事も多いため、ケガをしないようにと心配されると同時に、期待もされていたのでしょう。ご本人は80歳を過ぎてもマラソン大会に出場するほど元気な人だったそうです。
素材ごとに分類してリサイクルへ
毎日取引先の製鋼所へトラックを走らせるのは綾菜さんです。加工の工程で出る不良品や半端になった鉄を回収してきて、工場で分類・整理。加工業者に送るのが同社の仕事です。この業界は分業で作業が行われており、鉄は溶かされて加工され、再び製品として流通します。
回収された大小様々な鉄は、すべて買い取りのため、買値と売値のレートを計算して、売り先を調整していきます。「祖父の代からお付き合いのある業者さんたちが応援してくれるんです」と綾菜さん。50年の歴史が支えている信頼関係ですね。
この日は、回収してきた線材と呼ばれるワイヤー状の鉄を、妹の映菜さんがきれいにまとめていました。手作業でスピーディに進んでいきます。
まとめられた鉄を大型のフォークリフトで運んで整理していきます。鉄の他に、非鉄といわれるアルミ、ステンレス、銅なども扱っています。
精密機械もここで分解して、できるかぎりリサイクルします。「捨てる方がラクだし、リサイクルするには手間がかかるんですが、こういった機械は、ネジや配線を外して、どこまで分別できるか工夫するのが楽しいし、やりとげた時は達成感があります」と映菜さん。
持ち込まれたものはほぼリサイクルしているため、リサイクル率は95%以上とのこと。その素材が何かを瞬時に判断して分別していくそうです。
地域との関わりも大切に
使えるものはリサイクルする、という考え方が改めて見直されている今、個人からの買い取り依頼も増えているそうです。最近会社の看板を新しく付けたため、事業内容がわかりやすくなり、「リサイクルできるならお願いしたい」と持ち込まれるのです。
「それまでは、弊社の業務はあまり知られていなくて、何をしている会社だろうと思われていたみたいです。近所の人が使用しなくなった農機具などを持って来られるようになって、改めて地域と関われることをうれしく思います」。
先ごろ「ひょうご産業SDGs」認証を「12つくる責任、つかう責任」の分野で取得しました。
伸栄金属は、姉妹と男性スタッフが業務、お母さんが事務を担当しています。綾菜さんの夫も同業なので「いろんな面で助けてもらっています」と、ファミリーを中心に運営中。現在、大型免許を持つ運転手のアルバイト(週3日~)を募集しています。興味がある人は問い合わせてみてください。
「職業柄かもしれませんが、ペットボトルに古着に古紙、普段の生活でも分別とリサイクルは気になるので徹底して行っています」と綾菜さん。青垣の美しい自然の中で取り組むリサイクル事業、やわらかな物腰の姉妹とお話をしていると改めて資源の有効活用やリサイクルの大切さを考えさせられました。
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