丹波の風土にとけこむ庭をつくる

山本造園

かつて住宅の庭の多くは、塀や生け垣に囲まれた中につくられていました。最近は少しスタイルが変わって、外に見せるオープンな庭を多く見かけるようになりました。散歩をしているとき、ふと足を止めてしまうナチュラルな庭に癒やされることもあります。氷上町の山本造園では昔ながらの和の庭園に加えて、現代のライフスタイルに寄り添った流行を取り入れた庭づくりをしています。3代目、山本裕介さんに、話をうかがいました。

できるだけ自然の素材を生かしたい

山本さんは、丹波で育った後、東京農業大学造園科学科で学び、そのまま東京で4年間の修業を経て丹波に戻りました。Uターンしてから今年で11年めになります。東京では、公園、街路樹、大規模マンションなどの植栽を扱っていたそうです。「関東と関西は気候が違うように土も全く違います。関西の方が土が痩せているので、堆肥などで手を入れないといけません。手はかかります」と、山本さん。とはいえ、「丹波の土地や風景になじむ庭づくりを心がけています」と、できるだけ自然の石や土、木を使って庭をつくっています。丹波の石といえば、昔からお茶室や和風庭園に使われていた、赤褐色の丹波石ですが、現在の庭に合うよう使い方を工夫して施工されています。

現在では様々な新しい植物が多く使われる傾向がありますが、丹波の気候に合わないものも多いのです。花の時季も神戸や阪神間とは違います。都会らしいものを取り入れるのもいいけれど、この丹波の環境や風土、風景に合った庭を作りたいといいます。

外から見て美しく、中も居心地のいい緑豊かな庭

庭はもちろん施主さんの希望を聞いて設計しますが、多くは山本さんが手がけた施工例を見て、テイストを選んで「お任せ」にされるようです。人気があるのは、外から見てもきれいなオープンスタイルの庭。高さのある植木のまわりに、背が低くて可憐な山野草や宿根草を配置して、毎年花を咲かせるように。花壇には1年草を植えて、その時々の美しさを愛でられるように。春から夏にかけては庭のどこかに花があるように、秋には実が成るように、それぞれの場所に合った組み合わせを考えて、植物を植えていきます。

また、庭は家族のコミュニケーションの場でもあります。中から見て美しいのはもちろん、庭で家族や友達と過ごせる場所があるとなおいいですね。芝生の周りにウッドデッキ、テラス、ベンチなど、人の居場所を取り入れ、敷地の日当たりを計算して植栽の計画をしていきます。例えば中庭のテラスの周りに樹木で陰を作ったり、同じ頃に咲く花の組み合わせを考えたり、葉の形の大小や色の変化も楽しめるように多彩な植物を植えます。

雑木や野草を生かして新しい庭を作り続けたい

「昔の庭は松などが定番でしたが、今は季節を感じられるものが好まれます」という山本さん。建物のそばに雑木を植えて夏に涼しくなるような木陰を作り、秋は紅葉を楽しめ、冬は葉が落ちて日が入る雑木の庭は、自宅で自然を感じることができます。そのためには、一本一本その場に合った自然な形状の植木を探すことも欠かせません。

植木はもちろんですが、草花にしても、それなりにメンテナンスが必要で、それをどうコントロールするかで庭が変わります。「自分が作った庭を気にいって喜んでもらえるのが、何よりもうれしい。植物は成長し続けます。形が変わるからこそ、年々良くなるように、先を見越して設計しています」と、山本さん。

「昔からある植物で、いつの間にかすたれたものを、現代のセンスに合わせてよみがえらせたい」と更に意欲を燃やしています。庭づくりや草木のお手入れで、悩んだら相談してみましょう。きっと予想以上に素敵で快適な庭に生まれ変わると思います。

 

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