「好きなパン、どれでも一個だけえらんでいいよ」。甘く立ち上る焼きたての香りの中でそう言われて、アレもいいな、コレもいいな、どれにしようかなと頭を悩ませる。一番幸せな悩みごとの思い出は、子ども時代のパン屋さんの風景の中にありました。味わい深く、甘く、懐かしい。そんな気持ちを思い出せるパン屋さんをご紹介します。
柏原町・焼き立てパンの香りにつつまれるパン屋さん「パンライフ」
国道176号線沿いにあるパン屋さん、「パンライフ」。赤いルーフにレンガのステップ、グリーンカーテンがレトロ可愛い店舗です。トレイに並べられた菓子パンや惣菜パン、中央にあるプレーン、チョコ、あんこなど多種類の食パン。シーンに合わせていろいろ選べる品揃えです。
誰もに愛される、王道ふんわり菓子パンメニュー
帽子パンはほんのり甘いサクフワのクッキー生地に包まれ、端っこのサクサク感から中身のふんわり感までシンプルながらいろんな食感が楽しめます。ごまの香りが香ばしい小倉あんぱんは牛乳との相性ぴったり、「これぞパン屋さんのあんぱん!」と言いたくなる王道のどっしり感。
しっかりした甘さが満足感をそそるチョコバナナ、柔らかいキャラメル風味が大人にもマッチするキャラメルミルク、他にもクリームチーズやカスタードなど「菓子パン」と一口に言ってもいろんな味が選べます。つややかに焼き上げられた、リッチ感のあるふんわりした生地が、具材の個性を様々な形で引き立ててくれます。
「ハチミツレモン」「チョコマーブル」など食パンをベースにしたスイーツパンは、発売当初から20年以上のロングヒット商品。取材チームが注目した「チョコマーブル」は、どこから食べてもチョコレートに当たる幸せ感。そのままスライスしたらふんわり、少しトーストしたらサクッとした食感に少しチョコがとろける贅沢仕様に。
子ども連れのお客さまに大人気のキャラクターパンは、パンライフの菓子パンの美味しさはそのままに、可愛らしい表情を一つ一つ手書きで仕上げ、愛情と愛嬌たっぷり。三種の味が楽しめる「令和三兄弟」などユーモラスな商品も。
喫茶店のモーニング気分が味わえる食パンは、遠方からの指名買いも
オープンから30年以上、変わらず愛され続けてきた食パン。何年も「ここのしか食べない」と遠方から買い付けに来るお客さまもいる人気ぶり。食品添加物なし、ストレート法というパン生地製法の王道で作られた食パンは、シンプルな中に小麦の風味が生きています。
そのまま食べたらふんわりとした弾力が感じられ、トーストするとザクっとした表面とふわっとした中身が贅沢な歯ざわりを生み出します。喫茶店のモーニングで出てくるような特別感ですが、何もつけずに食べても味わい深く、逆にピザトーストなどの具も引き立てる控えめさは、まさに毎朝のパンにピッタリです。
一本気なパン職人・伊田茂さんとお店の歩み
パンライフの開店は昭和62年。それまでサラリーマン生活を送っていた伊田さんが一念発起、三田市、福知山市などのパン屋さんで修業を積み、故郷の丹波市で独立。粉から生地を作り、焼成まで一つのベーカリーで行う「スクラッチベーカリー」として、丹波では先駆け的存在でした。
「ものすごいこだわりがあるわけではないんです。ただ、添加物を使わないことと、夫婦二人で毎日安定した美味しいパンを作ることだけを考えています。パン生地は基本的な配合のみで、毎日食べても飽きない味を作れたらと思っています」と伊田さん。
現在お店に並ぶメニューには、ロングヒットの定番商品を中心に、「お客さまに選ぶ楽しみを感じてもらいたい」と少しずつ新メニューを取り入れています。長年の技術と経験に裏打ちされた職人が作る真っ直ぐなパンには、「懐かしいあの味」を約束する安定感と信頼感があります。
丹波市にもここ数年でたくさんのパン屋さんが生まれました。新しいお店の個性あふれる味も素敵ですが、地域の方に愛されながら、変わらずに在り続ける美味しさには心落ち着くものが感じられます。幼いころ心ときめかせたパンを、大人になってからも買える場所。丹波市民にとってパンライフは「いつでも行ける懐かしい場所」の一つとして老若男女に親しまれ続けています。
text:済木麻子
<注意事項>
- 2021年から定休日を日曜日と祝祭日に変更する可能性があります。
- 夕方から車による移動販売をするため、16時以降商品数が少ない可能性があります。来店は16時迄をお勧めします。
- 新型コロナウイルス感染症拡大予防のため、店内でのマスク着用、手指の消毒、ソーシャルディスタンス等に配慮しています。ご協力をお願いいたします。
- 掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更、消費税率変更に伴う金額の改定などが発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。